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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > APECについて(2)(ファイナンシャルマネジメント/平松拓)

APECについて(2)(ファイナンシャルマネジメント/平松拓)

10/07/27

昨日に引き続き、APECの話ですが、今年11月に横浜で首脳会合が行われます。
それに先立って、関連の会議が日本国内各地で行われていますが、
6月には札幌で、貿易担当大臣会合がありました。
今日はここで話し合われたことを4つほどご紹介したいと思います。

第1が、貿易投資の自由化・円滑化についてで、これはAPECのそもそもの目的です。
この中で、1994年インドネシアの会議で合意されたボゴール目標、
即ち「自由で開かれた貿易及び投資を先進国は2010年まで、途上国は
2020年までに達成する」ということの評価の問題があることは、
昨日お伝えした通りです。

同時に、ドーハ開発アジェンダの推進及び保護主義の抑止について、
この貿易担当大臣会合で閣僚声明を出しております。
ドーハ開発アジェンダというのは、いわゆるラウンド交渉ですが、
WTOで行われる貿易障壁を取り除くための多角的交渉のことです。
WTOの前身であるGATTの時代を含め過去8回行われていますが
これまでに世界各国の関税をはじめとする貿易障壁の削減・撤廃に
非常に効果を上げてきた交渉です。しかしながら、先進国や工業製品に係る
関税率が下がってきていることから、更なる貿易障壁の削減は難しい分野に
切り込まなくてはいけないという問題があり、9回目に当たる今回の交渉は、
2001年開始以来既に9年経過しているわけですが、数年前から中断の状態にあります。
今回の声明は、この推進にAPEC諸国として新たな決意を表明したものといえます。

保護主義の抑止についても声明を出していますが、これは
リーマン・ショック後の経済危機に際して、個々の国が保護主義的な政策を採ると、
それが連鎖的に保護主義的な政策を呼び、その結果、世界経済の危機を
より一層深刻にしかねないということで、2008年にAPEC首脳が
2年間保護主義的な政策を新たに採用しないことを宣言しました。
現状、世界経済は回復に向かっていますが、失業率の高まりなど、依然として
保護主義的な措置を求める圧力が強まる要素が存在することから、
今回、これを更に1年延長することをコミットしたわけです。
リーマン・ショック以降の経済不況の中で、保護主義的政策への誘惑は強いままであり、
こした姿勢を示すことが引き続き重要という認識に基づくものです。

第2のポイントは、地域経済統合の進化についてです。
これは逆説的ではありますが、ドーハ開発アジェンダの進展を促す意味でも、
APEC地域全体による自由貿易圏構想を進めようという話です。
しかし、これについては総論では合意しているものの、
APEC地域の中でもベースとなりそうな広域の自由貿易圏についての構想が
いくつも存在していて、思惑が交錯しているといったところです。
その中で、TPP(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership)という
構想があります。これは元はシンガポール、ニュージーランド、
チリ、ブルネイという比較的モノ・インダストリー的な諸国で締結された
自由貿易協定ですが、これにアメリカ、オーストラリア、ベトナム、ペルーが
参加を表明して、にわかに有力視されています。ただ、ASEANを核とした
FTAを拡大しようという動きもあって、まだ方向性は見えていないところです。

3つ目が成長戦略ですが、均衡がとれ、あまねく広がりを持ち、
持続可能で革新的で安全な経済成長の達成を目指すことが唱われています。
これはこれまで個々のテーマとして、このAPECで取り扱われてきた
不均衡の是正、中小企業支援、社会的セーフティネット整備、
温暖化問題を含むエネルギー環境政策、知的財産権保護、ITの活用などを、
包括的に採り上げ、産学官協働で進めようという内容ですが、「産」という意味では
産業界からの諮問機関であるABACの機能に対する期待も大きいと思います。

4つ目が人間の安全保障ですが、防災・テロ対策、腐敗対策、保健及び食料安全保障など、
これまで多くは個別にAPECで採り上げられてきたテーマですが、
これらは商業及び貿易に対する潜在的な脅威となるものであり、
それらに備えることで、安全で回復力のある経済・社会環境を達成しようということです。
APECでは、2003年SARS(サーズ)というインフルエンザの一種が蔓延した時にも、
保健大臣会合を開くなどして、各国で連係して対応しています。

この一貫として食料の安全保障がありますが、10月に日本の米どころ新潟で、
農業担当大臣の会合が食料安全保障担当大臣会合という名称で行われることになっています。
これはAPECとしては初の農業担当大臣会合ですが、一般に農業というと
保護貿易的傾向が強くて、貿易の自由化・円滑化をミッションとするAPECの
枠組みとは必ずしも融合してこなかった分野です。これが初めて我が国で開催される
APECで採り上げられ、しかも、食料安全保障をテーマとして議論されるのは、
非常に画期的なことだと思います。この食料安全保障担当大臣会合では
農業分野の貿易についての議論がこれまでより一段も二段も深まることが期待されます。

こうした広範なテーマについて、多くの国で、しかもハイレベルなところで
話しができるのも、APECのユニークな性格の故だということができます。
8月には大分で「成長戦略ハイレベル会合」も行われます。各国・地域による議論が、
日本の議長としての采配により最終的にどこまで踏み込んだ成果としてまとまるのか、
11月の首脳声明に注目したいと思っています。

分野: 平松拓教授 |スピーカー:

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