QT PRO モーニングビジネススクール

QT PRO
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QT PRO モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録 電子書籍で記事を読もう! EPUB

過去の記事詳細

QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > ビジネスをデザインする (イノベーションマネジメント/朱頴)

ビジネスをデザインする (イノベーションマネジメント/朱頴)

10/06/28

今日はビジネスをいかにデザインしていくかという
テーマについてお話します。
デザインという言葉は、日本ではアートなイメージが強いのですが、
最近ビジネスをいかに展開していくか、その構想力あるいは展開力、
いわゆるデザインをしないといけない時代になってきたと思います。
その主な理由として、技術革新のスピードが早まっており、
生産性が向上しました。企業はかつてないほど多様な製品とサービスを
送るようになったのが今の世の中です。
1950年代から60年代という戦後のビジネス環境の中で、
顧客の需要が常に生産能力を上回っており、
大企業にとっては売り手市場でした。
しかし現在は、顧客の選択は多岐にわたっており、
情報も豊富になっていますから、供給者から顧客へと
主導権はシフトしているというのが現実です。
ちなみに激しい市場競争及び、この情報の構図によって、
顧客がビジネスの中心になっているという現状について
認識すべきですが、この新しい環境の中で、成功を収めるには、
顧客の優先事項を明らかにして、更に産業の本質をいち早く理解し、
それに合わせてビジネスデザインを構築することが重要だと思います。
この顧客の優先事項は、時代によって変わってきているという背景があります。

1900年から1920年にかけて、自動車ビジネスにおける
顧客の最優先事項は、信頼のおける基本的な輸送でした。
当時の顧客のニーズは、問題なく動く自動車を支払い可能な価格で買うことでした。
こうした顧客のニーズを、T型を設計したヘンリー・フォード
(Henry Ford)は素早く察知し、「私には人々の声がはっきり聞こえた」
ということを言っていますが、その時代の顧客の優先事項について、
彼がいち早く察知したということです。
より重要なのは、フォードが高度に垂直統合されたビジネスデザインを構築し、
高い信頼性と低コストでT型を大量生産したことです。
顧客はこれを支持し、1920年までに約2,200万台売れた、
1つの非常に輝かしい時代でした。

フォードの市場シェアは、ゼロから55%へと跳ね上がり、
アメリカの自動車産業において誰もが認めるリーダーとなりました。
しかし1920年代に入り顧客は次第に変化してきました。
彼らは以前より豊かになり、新車購入の優先事項は、
もはや基本的な輸送、信頼、安価ではなくなりました。
むしろ高くてもいいから、色やスタイルに選択肢が欲しいと言いだしました。
アメリカの場合、自動車ローンがあるので、ローンを組んでも構わないから、
自分の好みに合った色やデザインを買いたいということです。
残念ながら、ヘンリー・フォードにはこの顧客の声は聞こえませんでしたが、
GMのアルフレッド・スローン(アルフレッド・プリチャード・スローン・ジュニア
(英:Alfred Pritchard Sloan, Jr))にはちゃんと聞こえました。
スローンは、価格製品のピラミッドを発明し、様々な車種を
効率よく生産・販売できる事業部制組織を構築しました。
1920年から数年経ないうちに、フォードの市場シェアは55%から12%へと下落し、
その後半世紀以上にわたり、アメリカの自動車産業での
リーダーシップを失う結果となりました。
したがって顧客の声というのは非常に大事であり、
顧客の優先事項の変化及びその変化のプロセスにおいて、
企業の損益のシフトが発生するということです。
こうして顧客の優先事項を理解しないものから理解するものへと、
更に新しいビジネスデザインを構築しないものから
構築する能力を持っているものへと市場の主導権が移動する
流れになっていると思います。

つまり、顧客の方を向いてないと駄目というのは簡単ですが、
問題はどのように実行してくかということです。
伝統的な考え方として、企業が持っているコア能力は
何かということからスタートし、そのコア能力を最大限に
実現するようなプロダクトを顧客に提供すべきという考え方がありました。
これは、売り手市場の時代ではうまく機能したかもしれませんが、
技術革新の加速化と経済のグローバリゼーションによって、
企業側が提供するプロダクトは、大量製品から差別化のできる
プロダクトへと変わり、さらに企業活動の目標は何でもできることから、
顧客にとって重要なことをすることへと変わっていくべきです。
ここで重要なのは、企業が何らかの能力を持っているだけではなく、
それが顧客にとって本当に重要であるかどうかということです。
売り手市場が前提であれば、目先の顧客に焦点を当てれば、
それでも十分かも知れませんが、今のビジネスではそれでだけでは不十分で、
顧客に対する視野をもっと広げないといけないということです。
今はよくても、その先がどう変わるかまで見る必要があります。

例えば、ビジネス書の出版社は、通常個別の読者を意識して
出版するでしょうが、顧客に対する視野を広げるとなると、
まず書店を理解し、ビジネス書を購入する企業を理解し、
更に個別の読者を理解するとことではないかと思います。
視野を広げることにより、顧客選択における新たな
可能性を満たすことができるのです。繰り返しですが、
企業が持っている能力は依然として非常に重要なのです。
顧客にとって重要で、しかも現在提供されていないのであれば、
企業はそれを提供するためにあらゆる手段を尽くすべきでしょう。
それにはビジネスをデザインする能力、ビジネスを展開していく
構想力と展開力が問われる時代になってきていると思います。

分野: 朱穎准教授 |スピーカー:

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ