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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 企業の海外利益 (財務戦略/村藤 功)

企業の海外利益 (財務戦略/村藤 功)

10/06/25

■税制と海外進出
かつて、多くの日本企業は、アメリカ企業のように国内に製造の中心を置いていました。
しかし、1986年のプラザ合意以降、急激に円高が進み国内で製造して輸出していたのでは、
採算が取れなくなったために、日本企業の海外進出は激増していきました。

また、つい最近まで、日本の税制では、日本企業の国内の課税所得だけではなく、
企業が海外現地法人から受け取る配当収入にもグローバル・インカムとして、
実効税率40%の法人税が課せられ、海外で取られた税額については、
二重課税を回避するため税額控除の対象にしていました。

日本の法人税率は40%と海外と比べると高い水準にあります。
海外の利益を配当として日本に戻すと40%の税金を取られてしまうということで、
企業にとっては国内に戻さずに海外に置いたままにしておくということが当たり前になっていました。


■配当の非課税化
しかし、海外で稼いだ利益が日本に戻らなければ国内で技術革新や設備投資が停滞して、
日本の競争力が弱まってしまうと経済産業省が危惧したため、
利益の国内への環流を促進するべく、2009年度から税制を変更しました。

この変更で、海外から日本の親会社への配当は非課税になりました。
そもそも、二重課税を回避するために国内の子会社から親会社に支払われる配当も非課税ですから、
この変更自体理に適ったものだといえます。

日本の40%の税率の適用が無くなり、海外の税率分の支払いだけでよくなったため、
日本企業は積極的に海外の利益を日本に配当し始めました。
もちろん、海外でも色々と事業を成長させるために、
BRICsのように伸びている国に投資をするといことで、
海外での利益の全額を配当として国内に戻しているわけではありませんが、
一度日本に戻した後で海外に資金を出すという、戦略的なお金の運用もできるようになりました。


■移転価格税制とタックスヘイブン税制
当然ながら、この税制変更を悪用する会社が出てくるのではないかという話も出てきています。

その一例が、移転価格税制です。
例えば、本社と海外法人の間で、
普通ならば100万円で日本から海外に売るものを、わざと50万円で安く販売したとします。
これを海外で150万円の値段をつけて販売したとすると、
100万円で仕入れた場合には50万円しか利益が出ませんが、
50万円で仕入れた場合には100万円の利益が出ます。
この場合、本来日本に来るはずだった50万円の利益が、
不当に海外に移転されたことになります。

こういうことをした企業は、発覚すれば日本の税務署から、
移転価格税制に違反したということで、高率の追徴課税を受けます。
新税制のように海外では海外の税率だけで済み、
配当として国内に持ってきても非課税という事になると、
わざと日本から海外に安い値段で販売して海外に利益を貯めて、
それを配当として日本に戻すということが起きる可能性が出てきます。
これを回避するために、移転価格税制を厳格に適用していくことになりました。

また、タックスヘイブン税制も適用が強化されました。
よく「タックスヘブン」と誤解されますが、
天国の「ヘブン(heaven)」ではなく、港の「ヘイブン(haven)」です。
日本語にすると、税金天国ではなく、安い税金の港といったところです。
日本の税制では、25%以下の法人税を持つ国をタックスヘイブンとして、
ここで事業を行っている場合には、利益だけではなくリテインドアーニングス(retained earnings)、
つまり内部留保にも課税することになっています。
しかし、そうなると税率の安い国に行く意味が全くなくなってしまいます。
以前は、シンガポールの法人税率が26%だったため、
日本企業はここにアジアの拠点を構えていました。
しかし、シンガポールでも法人税率が25%以下に引き下げられたため、
タックスヘイブンとなってしまいました。

また、他の国もどんどん法人税率を下げているため、
日本の税制におけるタックスヘイブンの基準の法人税率25%が、
そもそも高過ぎるのではないかという状況になっています。


■為替への影響
今までは、海外現地法人は利益を配当せずに内部留保にまわしていました。
日本に戻されずに貯まっていくだけだった海外現地法人の内部留保は、
十数兆円から20兆円に上りますが、海外現地法人からの配当を非課税にしたことで、
日本に帰ってくるようになり、海外からの配当は2割程度増加しています。

その結果、親会社の自由になる現金も増加し、日本の株主への配当や、
借入金の返済に充てる余裕が生まれ、日本企業にとっては良い結果をもたらしました。
そのため、海外ですぐに使わない資金は日本に1回戻すという流れができつつあります。

しかし、円にして国内に送金するということは、
現地の通貨を売却して円を買うことになるため、円高が進行することになります。
世界経済全体では、リーマンショックやギリシャ危機にように、
円高方向に向かう要因がたくさんあるため、
どの要因がどの程度円高に影響与えているのか、よく分からないところがあります。
そのため、新税制が為替に及ぼしている影響がどの程度かは今のところよく分かっていませんが、
円高圧力の1つになっているのではないかと考えられています。

そもそも、日本の法人税率が高すぎるために、利益の海外滞留が起こり、
税制を変えて海外現地法人からの配当を国内並みの非課税にしなければならなくなりました。
日本の企業の国際競争力を海外の企業と等しくするためには、法人税を下げなければなりません。
その一方で、政府はお金がないため、消費税を上げて法人税を下げるということを言っています。
私が以前から申し上げているように、消費税を上げなくても、資産売却をしたり、
公営事業や公的金融機関を民営化したりすれば、何百兆円もの資金が出てきます。

消費税を上げる必要性は別問題ですが、
日本企業の国際競争力を欧米企業と横並びにするために、法人税を下げるべきだと思います。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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