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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > シンガポールの人材誘致戦略 (イノベーションマネジメント/朱頴)

シンガポールの人材誘致戦略 (イノベーションマネジメント/朱頴)

10/06/23

今年3月に行ってきたシンガポールの人材誘致戦略についてお話します。
人材誘致戦略は、大学関係の人に限ったわけではありません。
基本的にシンガポール政府は移民政策をとっています。
シンガポールには、499万人の住民がいますが、
シンガポール国籍と永住権取得者の合計は373万人だけで、
残り4分の1近い126万人は、移民です。
シンガポール政府は、ある意味「選択的」移民政策をとっています。
先端技術研究者を迎え入れているのも特徴ですが、
2003年に始まったバイオメディカルの研究拠点、バイオポリスの計画では、
クローン研究で世界権威のイギリスの研究者、
遺伝子研究で著名な日本の学者など、ノーベル級の世界的頭脳を
次から次へと招聘しているということです。
更に、バイオテクノロジーの企業、研究所などを誘致して、
世界からトップレベルの頭脳を集めているという動きもあります。
優秀な人材を誘致するために、当然何かモチベーションが必要ですが、
財力を背景にして高額の報酬、世界トップレベルの実験施設・機材、
そして住居環境、企業に対しては税制優遇など魅力的な国策が盛り込まれています。

基本的に、シンガポールは国が小さく自然資源はないので、
知識をベースにしなければ、持続可能な発展は難しいでしょう。
「選択的」移民政策としての、技術者や高い能力を持っている方の話ですが、
一方、普通のインフラ設備あるいは建築現場で働く人々も、
移民として、隣国マレーシアあるいはインドなどから
働きに来ているという話も聞いております。
華僑だけではなく、インド人やマレー人などの多民族国家なのです。

都市の繁栄とは何か
アメリカの社会学者リチャード・フロリダ(Richard L.Florida)は、
国と都市の反映要因について、クリエイティブクラスの
国や都市による囲い込み競争として分析しました。
ここでいうクリエイティブクラスというのは、新しいアイデア、
技術、コンテンツの創造により経済を成長させる機能を担う人材であり、
彼らは独自の判断に基づいて複雑な問題解決に取り組む能力があるだけではなく、
グローバルな価値観で物事を判断する能力も持っています。
つまり、その知識集約度の高い産業を担い、新しい価値観で
新しい産業を起こす人材をどれくらい自分の国あるいは都市に
抱え込むことができるのかによって、その国あるいは都市の発展が
決定されるというのが、リチャード氏の分析です。

日本も資源がない国ですから、環境としては似ているし、
高齢少子化という問題が避けられないという現状で、
優秀な人材をいかに世界各国から誘致するのかというのが、
これからの課題ではないかと思います。
トヨタ生産方式に代表されるように、製造業において、
日本は優秀な労働力の供給拠点として魅力がありましたが、
最近アジアの都市の中で、日本に先行してクリエイティブ人材の
囲い込み競争に取り組んでいる国々には、香港とシンガポールがあります。
この2つの地域に共通しているのは、「金融立国」政策ですが、
金融関連の専門人材のみならず、幅広く戦略的移民政策を
とっているのも特徴です。教育システムに関しても、
大学あるいは大学院への集中投資を通じて、将来の
クリエイティブクラスの育成を掲げているようです。
イギリスのタイムズ誌が発表した世界大学ランキングによれば、
香港、シンガポール、中国本土の大学は上位に
ランクインされることが目立っているようです。

更にシンガポールの場合では、英語圏という強みがあり、
言語の障壁がないので、奨学金を提供して世界各国から
優秀な学生を誘致するのみならず、教員も世界から
集めるようになりました。

グローバリゼーションの進み具合によって、先端科学技術開発に
おける人材を獲得できるかどうかが、国の発展にとって
非常に重要なポイントになってきます。
シンガポールでは、アメリカのMITとシンガポールの国立大学と提携し、
大学院プログラムを作りましたが、このプログラムに対して、
シンガポール政府は100%出資し、授業料が無料というだけでなく、
奨学金と生活費も支給されるそうです。
2007年のデータでは、定員40名に対しインド一国だけでも
700人の応募者がありました。奨学生は、卒業後3年間
シンガポールで働くというのが義務付けられていますが、
その7割はそのまま残留して勤務し続けるので、
シンガポールの発展にも、彼らが貢献しているわけです。

日本の今後の課題としては、グローバル30というのがあり、
九州大学も今それに取り組んでおりますが、大学だけでは
限界があり、大きな制度設計が必要だと思います。
大学のみならず、企業及び財政界と連携し、一貫して
国際的な観点から人材の育成と確保を図り、グローバル人材の
活躍できる場所を提供するというのは、今後の課題でしょう。

分野: 朱穎准教授 |スピーカー:

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