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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 欧州共通通貨ユーロ(ファイナンシャルマネジメント/平松拓)

欧州共通通貨ユーロ(ファイナンシャルマネジメント/平松拓)

10/06/21

ここのところギリシャ問題で揺れるユーロ圏が、
世界の金融市場の変動の震源地になっています。
そこで、これから2回、ユーロやその母体である
EUについて話をしたいと思います。
まず、今日は、現在、欧州連合(EU)に加盟する
27カ国の内、16カ国で法定通貨として用いられている
共通通貨、「ユーロ」についてお話します。
 

■ユーロとは
 
ユーロとは御存知の通り、ユーロ圏といわれる
欧州諸国で昔のドイツ・マルクやフランス・フラン、
イタリア・リラなどに代わって使われている共通通貨ですが、
1999年1月に、欧州連合(EU)の当時の加盟国15ヵ国の内、
11カ国で導入されました。
問題のギリシャでの導入は、やや遅れて2001年1月です。
それまでは加盟国それぞれの通貨が使われていたのですが、
ユーロの導入により加盟国は自国通貨を放棄しました。
自国通貨に思い入れがあるドイツを含め、
それだけの多くの国が共通通貨を導入した
ということで、大きな出来事でした。
具体的には、最初は非現金取引に導入され、
紙幣やコインの流通は3年後の2002年です。
この間3年は、通貨はユーロに切り替わっているのですが、
実際の現金の支払いは、それぞれ一定のユーロ・ベースの
価値を持つ、マルクやフランなどの紙幣やコインで
行われていたわけです。
 
しかし、当時もEU加盟国全てで導入されたわけでなく、
また、現在のEU加盟国の中でも、イギリスなど 11カ国は
未だユーロを導入していません。
実はEU加盟国には原則ユーロ導入の義務があるのですが、
それらの国がユーロを導入していない背景には、
以下のように2通り、或いは3通りの違いがあります。
 
第一のグループがイギリスとデンマークです。
両国はEUによる共通通貨導入を決めた
マーストリヒト条約批准に際して、
オプト・アウトと称して加盟しないことを選択し、
それが例外として認められています。
イギリスは過去の欧州経済統合の流れの中で
独仏とはやや距離を置いてきた経緯があり、
また、過去にEMSという欧州の通貨制度に加盟していた時に
投機資金の標的になり、離脱をやむなくされた経緯があり、
そうしたことも背景になっています。
 
第二、第三のグループはそれ以外のEU加盟国で、
ユーロ導入の義務がある国々です。
その中で、スウェーデンは議会での議決や
国民投票の結果導入についての国内の支持が得られておらず、
これまで参加を見送る形となっています。
残る多くの国は、ユーロが導入されてから
EUに加盟した国々です。
これらはユーロを導入する義務があり、また、導入を
希望していながら、未だ導入するために満たさなければ
ならない収斂条件という、為替相場やインフレ率、
財政赤字や政府債務残高などに関する経済的な条件が
クリアできていないために、導入に至っていません。
 

■ユーロ導入による変化
 
ユーロが導入されたお陰で、導入国の間では為替相場を
気にする必要がなくなるわけで、その点では大変に便利です。
例えば私たちも海外のホテルの予約を取ったりする場合、
外貨建ての価格を一応日本円に引き直して、予算内か
それともグレード・ダウンせねばならないか、などと考えるでしょう。
しかし、いざ泊ってみると、その時の為替相場次第で
結局予算を超過しているといったこともあり得ます。
でも、共通通貨になればそのようなことを
気にする必要もないわけです。
消費者にとって便利なばかりでなく、
欧州をまたにかけて事業をするような会社にとっても、
大いにリスクの削減とコストの逓減につながっています。
 
でも、変わるのはそれだけではありません。
それまでそれぞれの国にあった中央銀行の機能が
欧州中央銀行(ECB: European Central Bank)に
とって代わられ、各国の中銀は、日銀の支店のような
位置づけになってしまいます。
通貨が一つになると、金融政策も一つになるので、
中央銀行も一つで良い訳です。
また、同時に金融取引にも国境の垣根がなくなり、
利用者が預金や借入をする場合、金利の水準を
従来以上に比較して銀行を選ぶことができるようになります。
逆に言えば、同じような経済状態の場所であれば、
国が違うといって各国で違った金利、手数料なども
取りにくくなり、金利や手数料も競争的になることが
期待されます。
 
このように、取引がしやすくなったり、
価格が競争的になることを通じて、
共通通貨採用は経済には良い影響を
もたらすことが期待されます。

 
■問題点
 
しかし、物事は中々良いことばかりというわけには行きません。
共通通貨を採用する故の代償も小さくはありません。
例えば、ある国の景気が低迷している時には、
普通であれば、財政政策と並んで金融政策を
用いることにより景気の刺激が可能です。
また、為替相場を通じて経済に影響を与えることも可能です。
しかし、共通通貨を採用している国々では、
独自の金融政策や為替相場政策を
通じた景気刺激策は採れません。
本来はそうした国では構造改革を進め、
他の国より経済上不利となっている原因を
取り除くことが期待されますが、構造改革には
痛みが伴うため簡単には進みません。
そのために負担は専ら財政政策に集中しがちとなり、
政府債務の増加に繋がり易いという問題があります。
今回のギリシャの問題の背景にも、
そうした一面があります。
 
 
 このように、ユーロ導入国にはユーロによる恩恵は
あるにしても、個々の国の経済政策運営手段が
大きく制約されることから、財政政策を各国の
勝手に任せていたのではそれぞれの財政赤字が拡大して、
その結果、ユーロ導入国全体の信頼が損なわれる
という懸念が当初よりありました。
そのため、ユーロ導入国は安定成長協定によって
財政規律を維持すべきことが義務付けられ、
財政赤字の限度、政府債務残高の限度を
超過し続けた場合の罰則も定められました。
ところがこのルールは、提唱者である
独仏自身による違反などもあって、必ずしも
厳格に運用されてこなかった面があります。
また、今回のギリシャのように、財政赤字が
金融取引の利用により不明朗な形で隠蔽される
などということがあると、手の打ちようがない
という面もあります。
 

■結語
 
金融危機以降、ギリシャの財政赤字隠し問題が
発端となって、ユーロの持つ脆弱性が
これまで以上にクローズアップされていますが、
確かに財政赤字の規模からみても、
ユーロにとって導入後の11年間で
最大の試練に晒されているのかもしれません。
しかし、これでユーロが大きく行き詰る
と考えるのは当たっていないと思われます。
次回は、こうしたユーロの抱える問題を
「欧州の統合」という文脈の中で
どのように考えるべきか、その点に焦点を
当てて述べたいと思います。

分野: 平松拓教授 |スピーカー:

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