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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > ギリシャの財政再建 (財務戦略/村藤 功)

ギリシャの財政再建 (財務戦略/村藤 功)

10/06/11

■PIIGS
ギリシャの財政危機の後、世界中で株安が進行し、
日本でも日経平均株価が一時1万円を切りました。
財政危機が発覚した当初は「ギリシャだけならば大した問題ではない」
「ユーロ圏で問題は収束するだろう」という声が出ていました。

しかし、アメリカや日本の株式市場に波及し、問題はグローバルな金融危機へと発展したことで、
オバマ大統領はメルケルドイツ首相やサルコジフランス大統領に、
プレッシャーをかけて問題解決を迫りました。

そして今年の5月には、EUとIMFを合計すると日本の単年度の予算に匹敵する、
7500億ユーロ(89兆円)を上限とするユーロ加盟国を対象とした緊急融資枠が設定されました。

この7500億ユーロのうち、3分の2をユーロ加盟国が、
そして残りの3分の1をIMFが負担することになります。
ユーロに加盟している国のうち財政問題を抱えているポルトガル(Portugal)、
イタリア(Italy)、アイルランド(Ireland)、ギリシャ(Greece)、スペイン(Spain)は、
頭文字を取って”PIIGS”と呼ばれています。
実は今回のギリシャ危機は他のPIIGSにも、
この問題が波及してしまうのではないかと考えられたことで、
結果的に世界中に広まってしまいました。


■財政問題の原因
北海道夕張市のように、日本でも自治体が嘘をついて粉飾がばれたという話があります。
端的に言えば今回のギリシャ問題の始まりもこれと同じで、
ギリシャが大きな財政赤字なのにもかかわらず、
嘘をついてその規模を隠していたというところにあります。

ギリシャでは2009年10月に政権交代が起こり、パパンドレウ新政権が発足しました。
新政権下で帳簿をあらためてみると従来よりも巨額の赤字が発覚し、
財政赤字額を大幅修正したことで騒ぎになりました。

EUは1999年の通貨統合で通貨はユーロ、
金融政策の立案・実施は欧州中央銀行(ECB)に統一されました。
しかし、国債の発行や公共投資に関係する財政政策は国単位で行われています。

特にPIIGSでは、赤字国債を発行してでも、
国民の生活を豊かにするという「大きな政府」で財政政策を運営しています。
財政再策を各国の自由に任せたことが今回の問題の原因となったということで、
今回の危機をきっかけに財政政策を含む政治統合を進めることができるのか、
という問題も出てきますが、簡単には解決しそうにありません。

また、次に危ない国はポルトガル、スペインだということで、
PIIGSのポルトガルやスペインの国債も市場で売られています。
これを受けて、ポルトガルもスペインも自分の国の財政赤字は何とか縮小させるということで、
公務員の削減、公営事業の民営化、増税といった改善策を打ち出しています。
中でもスペインは出産奨励金の廃止や年金改革による年金支払の減額を発表したことで、
ユーロのために国民の生活を蔑ろにするのかと国民の反感を買ってしまいました。


■国債への影響
ユーロを導入する以前のギリシャの通貨はドラクマでしたが、
自国通貨で国債を発行するよりもユーロで発行した方が安い金利で発行できるということで、
各国はユーロに加盟してユーロ国債を発行しています。

ギリシャのユーロ国債とドイツのユーロ国債と比べると、
問題発覚の2009年10月まではギリシャ国債の金利はドイツ国債の金利を1%上回る程度でした。
しかし、2010年1月末には4%、4月末には約10%、
5月の初めには13%近くまで差が開いてしまいました。

このままでは、償還分を支払えないということで、
EUとIMFから200億ユーロ(約2兆3千億円)の融資を受け、
5月19日の国債償還をとりあえずは乗り切りました。

EUやIMFの支援が明らかになったということと、
欧州の債券市場の動揺を抑えるため各国の中央銀行が国債の買い入れを始めたことで、
金利差は少し落ち着き、ギリシャ国債のドイツ国債への上乗せ幅は約6%まで下がっています。


■財政政策とユーロ
EU内では金融政策は統一されていますが、財政政策は国によって異なります。
EU内部にも、財政政策も統一してもいいのではないかという声があります。
しかし、財政政策は社会保障制度に大きく関係しています。
自国で国債を発行して社会福祉政策を行い、国民を満足させたいという気持ちは各国にあるため、
なかなか強制的に財政政策を統合しようという話について簡単に合意できる見込みは薄く、
まだ話し合いをしているという状況です。

今回の危機に際して、7500億ユーロの融資枠のうち、3分の2はEU、
3分の1はIMFがお金出すということで、IMFはどちらかというと好意的に対応しています。
今のところ、ヨーロッパの言うことにはとりあえず協力しておくという立場です。

一時期のギリシャ国債の金利はドイツ国債に13%プラスだったものが、
6%に落ち着いたと言うことで、財政問題の影響は一頃に比べると、少し収まってきています。
しかし、依然として問題発覚前の1%水準には戻っていません。

ユーロの財政政策と金融政策のギャップという構造的な問題を解消できない限り、
簡単には解決できないということで、長期化する可能性も出てきています。
この問題については、推移を見続ける必要があります。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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