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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 年金問題 (財務戦略/村藤 功)

年金問題 (財務戦略/村藤 功)

10/05/21

年金問題については、これまでに何度もお話ししておりますが、今日は民主党へ政権が移行し、
ミスター年金こと長妻氏が大臣に就任してからの動きについてお話しします。


■民主党政権と年金問題
民主党が政権を取り、長妻氏が厚生労働大臣に就任して、
年金問題にどう取り組むのか、国民の注目は大きかったと思います。
長妻大臣は年金記録回復委員会を立ち上げ、2010年度中には年金通帳を交付する予定です。
また、社会保険庁は2010年の1月1日から日本年金機構に改組されました。
組織の移行については、取りやめの話もありましたが、
とりあえずは予定通りにいったというところです。

もともと、民主党は政権獲得後、3、4年かけて、
年金制度の抜本的な制度設計や関連法案を成立させようと考えていました。
年金記録がデタラメなので、まずは年金記録を整えようと最初は考えていたようですが、
鳩山内閣の支持率がここのところ落ちてきています。

年金改革をすれば少しは支持率が回復するのではないかということで、
年金改革を前倒しして、「新年金制度に関する検討会」を今年の3月に設置しました。
また、5月には新しい年金制度設計の前提となる基本原則を発表しようと計画しており、
支持率を何とかして上げようとする企画が進んでいる状況です。


■年金改革の争点
昨年おこなわれた衆議院選挙前の民主党年金に対する考え方には2つの柱があります。
1つ目は、消費税の約5%の値上げを原資として月7万円の最低保障年金を支払うというものです。
2つ目が、支払った保険料に応じて受給額の増える所得比例年金の導入です。

国民の最低限の生活は国の義務だということで、
最低保障年金の導入が検討されていますが、
これまで国民年金や厚生年金で給付するとしていたものを、
最低保障年金を導入することで消費税値上げを財源として払おうというのです。

現在、一般消費税1%あたり2.3兆円の税収がありますが、
毎月7万円を給付する場合、1年に約12兆円必要です。
そのため、消費税率を5%くらい上げなければ、財源を賄うことができません。
また、以前は家計の所得のうち、総額4、50兆が毎年貯蓄されていましたが、
最近では6、7兆円くらいにまで減ってきています。

この状態で、消費財が5%上がってしまうと、
家計の貯蓄が消費税の値上げで持って行かれてマイナスになってしまいます。
世界の先進国で、家計の貯蓄をマイナスにして楽しく過ごしている国はありません。

このようにそもそも、消費税を上げるということ自体が現状では無理な話だといえます。
実のところ、消費税を5%上げて、家計から毎年、12、3兆円を徴収するという話は、
政府債務約2、300兆円の政府から家計に対する移転です。

政府は300兆円くらい楽になり、家計が新たに300兆円くらいを負担するという話ですから、
私にいわせると非常にふざけた企画です。
しかも、鳩山政権は消費税を引き上げないと言っています。
この話とどう折り合いを付けるのか、きいてみたいものです。


■年金と少子高齢化
日本の人口はこれから半分に減少していきますが、
少子高齢化が進むとより少ない現役世代が、
自分たちよりも多くいる高齢者の年金を払うことになってしまいます。
そのため、賦課主義から積立主義へ移行しなければ、
これから先、年金制度が行き詰まってしまうだろうという話が出ています。

賦課方式では、現役世代から徴収した保険料を、
政府が高齢者へ年金として給付しますが、
積立方式では、自分で自分の年金を貯めていくため、
人口の内訳が変わっても影響をあまり受けません。

しかし、積立主義に移行した場合、今まで保険料を支払ってきて、
あとはお金をもらうだけになっている人たちの分を一体どうするのか、という問題が出てきます。
若者にとっては、年金が給付されるものと思っている高齢者と自分の分を合計すると、
二重に保険料を支払わなければならないという、理不尽な時代が何十年も続くかもしれません。

政府の賦課主義では、保険料をとる時はとる一方で、年金給付については法的な義務はありません。
そのため、国民経済計算では受け取った積立金の、
資産計上はしていますが、負債計上はしていません。

積み立てた人は積み立てた以上にもらえる、という制度を作らなければならないと思います。


■年金財務
現在、政府は数百兆円の債務超過です。
これを回避するために、1つ目に、政府は消費税を徴収することで、
基礎年金部分の債務300兆円くらいを家計に移転しようとしています。

また、2つ目の方法として、所得比例年金を民営化しようという話が進んでいます。
民営化するということは、今まで負担だと考えられていた部分を、
政府から民間に押し付けるという話です。

結局のところ、政府の債務超過のうち、大部分にあたる数百兆円分を国民に押し付けて、
しかも国民は押し付けられそうなことに気が付いていないという、大変困った状況にあると思います。

年金制度を変えなければ破綻してしまうため、
これについては何かしなければいけませんが、
政府から家計への数百兆円の債務移転が、
国民がその本質を理解しない形で実行されつつあるということは、許せない気がします。

また、ここ数年、公的年金積立金150兆円のうちの約92兆円を運用する、
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用実績が芳しくありません。
普通、運用とはタンス預金にするよりもお金を増やすという話です。

しかし、GPIFは我々のために、運用して儲けるということが求められているにも関わらず、
毎年兆単位で我々の年金を減らしています。

例えば、2007年には6兆円の、2008年にはハイリスクハイリターンの新興国株に投資し、
金融危機でやられたことも影響して10兆円の損失を出しています。

このGPIFをこのまま許すことはできませんが、今回の事業仕訳の対象にもされませんでした。
これからもハイリスクの金融商品に投資していくというGPIFの方針は変わらないと思います。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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