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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 病院サービス業の競争戦略 (経営学/久原 正治)

病院サービス業の競争戦略 (経営学/久原 正治)

10/05/18

前回(2010年5月17日放送分)は、サービス業としての病院の経営戦略についてお話しましたが、
今日は、競争戦略の中で、診療科別にどのように機能を分担させていくか、
ということについて考えてみたいと思います。


■病院の競争環境分析
通常、経営分析では、外部の環境の分析と内部の資源の分析をおこないます。
病院の場合の外部の環境としては、ある地域でとある病院が、
どういう位置付けにありどこで勝負するか、ということが考えられます。
また、その病院のどういう分野に、これまで非常に優れたお医者さんや看護師さんがいて、
高い治療の成果を達成してきたかということが、内部の資源になります。

この外部と内部を照らし合わせて、自分の病院はどこに集中するか、
ということを考えなければなりません。
さらには自分たちの病院のある場所、
地域における医療のシェアといったことも考慮しなければなりません。
よほど専門的な病気ならば別ですが、あまり遠い病院へ出かける人はいません。
普通は自分の車で2、30分のところまでが限度です。
その中で自分の病院はこういう分野で高い市場シェアを持っているとか、
レベルの高い医療を提供できるだとか、こういうことを念頭に置いて病院経営をおこないます。

特に、医療のレベルとマーケットのシェアとが両方高い部門は、
非常に競争優位が高い分野ですから、そこに投資をするということになります。
やはり病院も企業ですから、結局は病院経営も他の企業と同じことがいえると思います。


■病院の競争戦略
他のサービス業と全く同じことが病院にもいえますが、
その競争の戦略としては、第1に、差別化するということがあげられます。
差別化することで、得意分野に絞り込んで、地域でナンバーワンというものを出していくことができます。

第2に、足りない部分を他と協調して補うという相互補完が考えられます。
つまり、ライバル病院は別の分野で強みがあるわけですから地域の中で協調していく、
あるいは大きな病院と小さな診療所も協調していくことによって、相互に補完ができます。
これまでも他の病院を紹介する、といったことはなされてきました。
しかし、今やITも発達していますから、
「この患者さんは、あそこの病院に行ってこういうふうにしたら治った」、
という形で色々な情報も共有することは可能です。

この病院とこの病院が協調すればうまく病気が治る、
というものをデータとして皆が共有していけば、非常に効果の高い医療が達成できます。
そうすることで、治療の効率性だけではなく医療費も、
今のように国全体で医療保険が赤字になるということも、少なくなっていくのではないかと思います。

またコストの削減も病院の競争戦略にとっては非常に大きなポイントです。
従来は、保険の点数という形で、外生的に、
各医療毎にお医者さんや病院がもらえる収入は決まっていました。
各病院は、その点数に対してなるべく看護師さん減らしたり、
医療材料費や仕入れの値段を減らしたりするということで、
コストの低減ということしか考えてきませんでした。

ところが、よく考えれば、患者さんの病気が早くしかも上手に治れば、
それが全体として低コストにつながります。
つまり良質の医療こそ低コストだという新しい発想へと変わらなければなりません。
従来の考え方でコストカットをやっていると、必ずミスが起きてしまいます。
そのミスが、例えば感染症に発展してしまうと、コストカットしたにもかかわらず、
収益が悪化して評判も悪化して、病院が逆に大きなダメージを受けてしまい、
結局潰れてしまうということもあります。
コスト単位当たりで患者さんがどれだけ治るか、
という観点で病院がおこなうべきコストカットをみていかなければなりません。


■ブランド化とイノベーション
病院は、医療だけでなくそれ以外の福祉とか健康とも関係しており、
自分の病院が何に強いかということが患者さんわかりづらいところがあります。
そのため、病院にとってブランド化をするということは必要なことだといえます。
そういう意味で、九州は、例えば、温泉と医療と組み合わせる、
福祉と医療と組み合わせるという形で、
全体として地場ブランド化していくのに、非常に向いています。
そうすれば、福岡県に全国で2位のお医者さんがいるということも、
うまく活用できるということになってきます。

また、一見すると、イノベーションを医療機関には考え方として持ち込むのは難しいように思われます。
しかし、単位コスト当たりで患者さんの回復を一番早くするということは、
まさにトヨタがこれまでやってきた改善活動そのものです。
改善活動を通じて、医療が本当に患者さんのものになっていくようなイノベーションもありますし、
組織として、お医者さんと看護師さんと職員がうまく協調していくことで、
組織のイノベーションが起きてくるということも考えられます。

医療技術はどんどんイノベーションが起きていますが、
技術だけでイノベーションが起きても、医療全体としてのイノベーションにはなりません。
技術と組織と、それから運営と全体で経営のイノベーションを図っていくということが重要です。
全体でのイノベーションをやる病院が、これからの医療のリーダーになっていくといえます。


■病院とグローバル化
経営が悪化している病院は、ほとんどが多角化で、
自分が得意でない分野に過剰に投資をしてしまい、
例えば銀行から借り入れた設備資金のような、
その投資資金の返済できなくなっています。
そのため、自分が他より優れたところに資源を集中していくことというのは、
間違いなく重要になってきます。

また、医療に関わる人たち、看護師さんやお医者さんの数が足りないといった、
人材についても考え直さければいけない部分があります。
これは他の産業と同じく、医療に従事する人について、
グローバルにその人材を考えていく必要があります。

今や日本の大企業は日本国内の需要は将来の伸びが見込めないということで、
世界を視野に入れて留学生を採用し戦力にしています。
これからは病院も、海外の患者さんをターゲットにしていかなければなりません。
その点で、日本の医療レベルは国際的にかなり高いものです。
グロバリゼーションについても、病院は間違いなく、
これからの経営の視野に入れる必要があるといえます。

分野: 久原正治教授 |スピーカー:

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