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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 病院サービス業の価値創造 (経営学/久原 正治)

病院サービス業の価値創造 (経営学/久原 正治)

10/05/17

先日、病院に入院した際に、病院の経営とは何かということについて考えてみました。


■福岡県の医療の特徴
病院は色々な課題を抱えていますが、経営改善の目的が、
患者さんの価値を追求するよりもコストを下げることになって、
組織が疲弊していき、結果的に経営が悪循環に陥るということで、
病院経営は厳しい状況にあるといわれています。

福岡県の人口は全国で9位ですが、病院数では全国4位ということで、
全国比福岡県の医療機関の数は多めだといえます。
また、人口10万人当たりの常勤の医師数では全国2位ということで、
福岡県の医療の資源は他の都道府県に対して優位性を持っています。

つまり、福岡県は病院にかかるにはいい環境が整っているのです。


■顧客としての患者
価値の創造という面でみると、
これまで病院は厚生労働省が制定した診療報酬の体系の下で、
どのようにコストをカットするか、どうすれば患者から最大の利益が受領できるか、
ということに重点を置いて経営をしていました。

しかし、それは経営ではなかったのではないか、ということがまず指摘できます。
そもそも病院というのは非常に公共的な性格を持っています。
しかし、他方では、例えば世の中のサービス業とか他の企業と同じように、
病院も利益を出していかなければ潰れてしまいます。
また、世の中のサービス業では、お客さんを上に置いて物事を考えますが、
病院の場合はお客さんではなく病院の自分の都合が優先されています。
そこに問題の出発点があるといえます。

これからは、診療報酬に基づいてコストをカットし、結果として、
患者さんにこんな医療をやるんだ、ということではなく、
患者さんの病気がそれぞれ一番良くなる方法はどういうことかというのを現場で、
体系化していくことが重要ではないかと考えます。
そして、それぞれの病態に一番良い治療方法があり、
それで患者さんの病状が良くなれば、患者さんは満足するわけですから、
そういう考え方から出発しなければいけません。

つまり現場から出発ということで、従来の中央からから患者の方へ、
という下に降りる感じではなく、患者さんが顧客だという発想が非常に重要になります。

これは、経営の理論そのものですが、病院にはそういう発想は全くありませんでした。
実のところ、学生も顧客ですから、大学についても同じ事がいえます。


■病院の競争優位
しかし、顧客つまり患者さん、そして看護師や医師といった働く人たちの、
満足度のバランスには、なかなか難しいものがあります。
患者さんばかりを満足させても意味がありませんし、従業員の満足ばかりでも意味がありません。
他の産業についても全く同じことがいえますが、患者さんと従業員の両者が満足できれば、
病院という組織は非常に競争優位な組織になります。

とはいうものの、病院の仕事内容は激務です。
これは、個別の患者さんをなるべく数多くさばくということ、
つまり、診察や手術、来院、入院をどれだけ処理したかという、
件数自体が目標とになってしまっている事に起因しています。
そのために、お医者さんや看護師さんといった現場が疲弊してしまっているのが現状です。

私自身は、入院した際には処理の対象として無茶苦茶に扱われたわけではありませんので、
患者としてかなりの満足度を感じることが出来ました。
しかし、先程からいっているように、患者さんがどうすれば良くなるか、
という観点から病院経営をやらないと、病院としては患者さんが適当に治って、
また来てくれた方が儲かるという変な考えになってしまいかねない、
というのが現場でみてきた感想です。


■病院に必要な組織とリーダーシップ
これからは、患者さんの立場から感じたことを論理的に考えて、
それをデータに落とし込み、こうすれば患者さんが一番治るということを病気毎に理解していく、
という人材が求められるのではないかと思います。
頭を使い、結果として、それが全体のコストの削減につながるということを考えなければなりません。
多くの病院では単に患者を「患者様」といって、
それで患者の価値を満足させていると考えるのでは、
全くもって的を外してしまっているといえます。

しかし、病院の組織の中には複雑なものや入れ替わりの激しいものもあります。
その意味では、病院は組織について、考えなければいけない場面に来ています。
実のところ、病院はこれまで組織についてきちんと考えていませんでしたし、
組織がどういう価値を生むかということも考えてきませんでした。  

価値という点でみると、病院という組織は、組織に親しみを持つ患者さん、
それから組織に貢献する看護師さんやお医者さんから構成されます。
その中で、特にお医者さんは、プロフェッショナルという自負があるために、
組織に対する貢献度合いは非常に低いものです。
これについて、お医者さんがチームワークをとり、
皆が組織のために働くようにするにはどうすればよいのか、という問題があります。
お医者さんをまとめるリーダーの存在がこの解決策として考えられます。

これまで病院では、お医者さんの中で、
その病院に長年所属している人が院長となり、リーダーを勤めてきました。
しかし、実際には各組織の現場単位にそれぞれリーダーがいて、
今いったような問題意識を皆が共有しています。
そして、各段階のリーダーが最終的に病院のトップ病院、つまり全体のリーダーになります。

この、病院のトップのリーダーというのは、おそらくお医者さんの経験をした中で、
組織に対する貢献や組織全体のみえる人が選ばれています。
そのお医者さんと看護師さんと職員の人がきちんと協調できる、
チームワークができる、このようなリーダーシップこそが、
本当の病院のリーダーシップになってくるのではないかと思います。

分野: 久原正治教授 |スピーカー:

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