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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 移行経済とニューベンチャー (イノベーションマネジメント/朱 穎)

移行経済とニューベンチャー (イノベーションマネジメント/朱 穎)

10/05/11

中国経済は、新興国マーケット(エマージングマーケット)と、
移行経済マーケットという2つの特徴を持っています。
移行経済とは社会主義体制から市場主義体制に、移行しつつある国のことで、中国もその1つです。
ロシアや東欧諸国もこれに含まれますが、
そうした国々との間に移行経済という点で共通性を持っているといえます。

このように、新興国マーケットと移行経済マーケットは似ているようで、少し異なります。
今日は、こういう大きな前提の中で、ベンチャー企業はどのように成長・価値創造していくのか、
ということについてお話ししたいと思います。


■ニューベンチャーの役割
移行経済と新興国経済の中で非常に重要な役割を果たすことが、
ニューベンチャーに期待されています。
多くの移行経済は、国営企業の改革によって、
一定の失業が避けられないという状況で、雇用の面で転換点を迎えています。

こうした中で、新しいビジネスであるニューベンチャーの創出は、
国営セクターとの間に相互補完的な役割を果たす、具体的には、
雇用の創出と経済成長を刺激する起爆剤になるのではないかということがいわれています。

更に、新興国マーケットは「国民1人当たりの所得はまだ低いが、
全体の経済成長率は著しく伸びている」と定義されています。
こうした発展性を考えると、このマーケットにはニューベンチャー、
新規ビジネスとしてのあらゆる技術とマーケットの機会が潜んでいます。

そのため、新興国経済と移行国経済との間にあるニューベンチャーは、
非常に面白い分野ではないかと思います。


■組織学習と受容能力
このニューベンチャーを、移行国経済という、
新しい前提でみる時の1つの視点として、組織学習があげられます。
非常に技術的不確実性の高い環境で、
いかに情報を察知し自らの成長に必要かつ有用なビジネスモデルへと情報を解釈していくのか、
ということは重要な作業となってきます。
これは通常でも非常に難しいことですが、移行経済という異なる環境では、
更にその難しさは増しています。

移行経済では、経済のマーケットの予測はほとんど出来ず、
また既存の経営資源の蓄積も不十分です。
例えば、ハイテクベンチャーでは、人や物、情報、更に資金が必要となってきます。
アメリカのように発達しているマーケットならば、情報マーケットや労働市場、
あるいは金融マーケットから人材と資金を調達することは可能かもしれません。

しかしエマージングマーケット、更に移行経済においては、
こうした市場がそれほど流動的ではないため、資源の調達は非常に難しいというのが現状です。
資金や人材は、初期の段階では自国ではあまり育っていないため、
外から連れて来るなど、あらゆる方面で模索しなければいけません。

それを考える際には、新しい技術を受容できるかどうか、既存の蓄積、
すなわち技術・ノウハウの蓄積があるかどうかという、受容能力という概念が必要となってきます。
受容能力が不足している、あるいは産業クラスターの整備がまだ整っていない、
製造と流通のネットワークも十分整備されていない、ということは、
移行経済とエマージングマーケットに共通して指摘される問題です。
特に、知的財産権は問題視されています。


■ニューベンチャーが生き残るには
こうした中で、ニューベンチャーは最初の7、8年をいかに生き延びていくか、
という非常に難しい問題に直面しているといえますが、
個人的には非常に面白い問題設定だと思います。

技術が非常に不確実な状況に直面している中で、
企業はどのように知識を創造していくのか、どうやって学習していくのか、
いかにしてマーケットを創造していくのか、これは非常に汎用性の高い経営学のテーマだといえます。

実践の場においてはかなり難しい問題だと思いますが、
それまでの蓄積がそれほどないということは、逆からみると、
既存の組織慣行からの影響も薄く、個々人も企業家精神が非常に旺盛だといえます。
更に、既存のマーケットではなく、ニッチ分野への参入も十分可能かもしれないというメリットもあります。

そのため、不確実性の高い環境において、いかに組織学習していくのか、
という問題は、移行経済やエマージングマーケットに身を置くニューベンチャーにとっては、
最も大きな課題だといえます。

同時に、ベンチャーを起こすには、それに関連する制度上の様々な手助けが必要となります。
そのため、政府や自治体の支援という意味で、制度的要因も非常に重要な役割を果たします。
例えば、移行国経済では、ハイテクゾーンの建設や社会設備、
社会資本などインフラ関係の整備が手厚く行われています。
当然ながら、これはニューベンチャーの最初の生存期にとっては、
非常に重要な要素ではないかと思います。


■ニューベンチャーとアントレプレナー
また、ネットワーク、特にソーシャルネットワークの重要性は無視できないという状況になっています。
中国を例にあげると、最近「頭脳開放」という言葉がアメリカで大変話題になっています。
2009年に出版されたジョン・ネスビッツ氏の”China's Megatrends”(『中国のメガトレンド』)によると、
この30年間に中国は世界100ヵ国に100万人の留学生を送り出し、
その内の30万人が帰国し活躍しています。

こうした頭脳開放は、今後更に加速する勢いをみせているということ言うまでもありません。
ここで重要な事は、世界の頭脳と頭脳を結ぶネットワークの構築です。
ニューベンチャーの創出という1つの大きなテーマを突き詰めて考えると、
新しいアイデアと機会を探し、ビジネスパートナーを見付け、リスクテイキングしなければいけません。

この一連の流れは、シュンペーターの定義するところの、
「アントレプレナー」の本質そのものであるといえます。
そのため、移行経済とニューベンチャーは現代版シュンペーターのアントレプレナーを反映する、
格好の材料ではないかと私は考えています。

分野: 朱穎准教授 |スピーカー:

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