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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 規模の経済と経験曲線 (イノベーションマネジメント/朱 穎)

規模の経済と経験曲線 (イノベーションマネジメント/朱 穎)

10/05/10

今日は規模の経済と経験曲線という、理論的なテーマについてお話しします。


■相対的マーケットシェアと利益の関係
まず相対的マーケットシェアと利益との関係について考えてみましょう。
経営学の古典的教科書の中では、利益は相対的マーケットシェアの関数としてとらえられており、
この相対的マーケットシェアが大きければ利益も大きくなるという基本的に考えられています。

これは、最も基本的な経営戦略上のお手本とされていますが、
この考え方は1960年代に発見され、1970年代には完全に定着しました。
経験則からある種の法則が打ち出されたのがこの時期で、
1980年代にはGEのジャック・ウェルチ(Jack Welch)の実践により、
相対的マーケットシェアの重要性は実践の場において絶頂期を迎えました。


■規模の経済
今日のテーマにもある「規模の経済」とは、専門化・分業することで、
生産量の増加にともない平均費用が減少し利益が高まるという傾向のことです。
通常、生産の現場では、この規模の経済が追求することの重要性がよく言われていますが、
生産の現場だけではなく、例えば購買・仕入においても規模の経済がみられます。
要するに、市場マーケットシェアにおいて最も力のある企業は、
最も低い価格で材料を購入できるというメリットを持っています。

更に研究開発においても、規模の経済がみられます。
例えば、GE、IBM、GMのような大企業では、
ユニット当たりの研究開発費は非常に低くおさえられています。
加えて、優秀なエンジニアほど市場をリードする実験設備と、
最高の予算を持つ企業で働きたいと考えるため、
これらの企業は業界の一流の技術者を呼び寄せる力も持っています。

昔はこのように、成功が次の成功を呼ぶという、上昇スパイラルの効果が期待されていました。
しかし最近では、マーケットシェアよりも株価の潜在的成長力が大きい企業に、
人材が流れていくという傾向があるのではないかと思います。

このように、マーケットにおける優位性は単純にコスト削減という効果をもたらすだけではありません。
しかし、マーケットの傾向は変化するものです。
持続可能な競争優位は新しいものを継続的に生み出していく能力とも関わっていると思います。


■経験曲線
もう一つのテーマでもある「経験曲線」は、
一見すると規模の経済とも似ているようですが、実は異なる概念です。

経験曲線の考え方では、学習効果に基づいて、
コスト削減が実現されるということが大前提となっています。
これを定義すると「累積生産量が倍になる毎に、
生産1単位当たりの費用が一定の比率で低下する現象」となります。
先日、「今のアメリカのビジネススクールでは、
経験曲線を教えるカリキュラムは全体の1%に過ぎない」という内容の面白い本を読みました。

経験曲線の法則は古い考えになってしまったという感じがしますが、
70年代にはビジネス戦略の60%にこの考えが適用されていました。
経験曲線効果では、現場の熟練と学習効果が強調されていますが、
学習効果に基づくとなると一定の学習期間が必要となってきます。

こうなると、あるコストの削減の要素に集中して、長期にわたってユニット当たりのコストを記録し、
その経験の累積との相関に関心が集まるのではないかと思います。
企業がこういう細かい部分に非常に力を注ぐということは良いことではありますが、
反面自分だけの考え方、自分だけのシステムにしばられてしまうという可能性があります。
コスト削減だけでは、周辺が全く見えなくなってしまうという恐れがあります。
特に、マーケットである成果を収めている企業ほど、
現行のシステムに集中し一生懸命コスト削減を目指すという傾向があります。


■ビジネスモデルの変化
問題は、このビジネスモデルが誰かの手によって、
時代遅れにされてしまうという可能性が十分あるということです。
この「誰か」というのは、新規参入企業や競合相手のような様々なプレーヤーをさします。
例えばソフトドリンクの缶は、昔スチール製でした。
これがスチール缶からアルミに変わり、今ではアルミからプラスチックに変わりつつあります。

このように、既存のビジネスモデルと全く異なるようなパラダイム・シフトがみられたことで、
例えばスチール缶を製造していた企業は、言うまでもなく大打撃を受けることになりました。
この例のように、そこまで深刻でなくとも、競合他社が全く新しい利益モデルを持って登場し、
同じものを従来の20%、あるいは30%も安い価格で提供することも十分ありえます。

自動車で例えるとインドの自動車メーカーのタタ・モーターズは、
価格が20万円、30万円台の自動車を発売しています。
既存の伝統的自動車メーカーにとって、タタは全く新しいビジネスモデルとなります。
好みやマーケットにおけるシフトにみられるように、顧客は変化します。
これに応じてビジネスモデルと利益モデルも変わっていきますが、
その結果として、ビジネスデザインも変化しなければいけません。

実は、古いビジネスモデルから新しいモデルへの価値のシフトは最も難しいものです。
口で言うことは非常に簡単ですが、過去の成功したモデルに固執すればするほど、
新しいモデルをイメージできなくなってしまうという、ある種のジレンマがあります。

ある意味で、世の中の全体の流れを予測するような能力を、
これから身に付けなければいけないということかもしれません。

分野: 朱穎准教授 |スピーカー:

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