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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > CFOについて1 (ファイナンシャルマネジメント/平松拓)

CFOについて1 (ファイナンシャルマネジメント/平松拓)

10/05/12

財務関連の話で、CFOについての話をします。
日本の企業の財務部門の場合、通常トップは財務部長、
あるいは経理部長という肩書きを持っている人が多いと思います。
その会社の規模にもよりますが、時には
その両方を備えている会社もあります。
一般に財務というと、資金繰りとか借り入れ、
あるいは外国為替取引などを担当しています。
一方経理の方は、企業の経済活動の記帳業務及び
会計報告書の作成を担当する形になっています。

これに比べ、アメリカの企業の場合、財務部門のヘッドとしては、
CFO、Chief Financial Officerを置いているところが多くなっています。
アメリカの企業にもトレジャラーとかコントローラーとか、
それぞれ日本の企業の財務部長、経理部長に近い役職の人も
存在しますが、CFOは通常その上の位置付けになっています。
CFOの機能は文字通りその財務部門のヘッドとして、
トレジャラー(treasurer)やコントローラー(controller)を
管理、監督することがありますが、それだけではなく、
経営幹部の一員として、CEO(Chief Executive Officer:
最高経営責任者)を補佐して、戦略的な意思決定に
参画します。特に設備投資案件や増資、社債発行、
配当のような財務に関わる戦略的な意思決定においては、
中心的な役割を果たす重要な役職ということになっています。

なぜアメリカ企業には通常CFOがいて、日本の企業には
それに当たるようなタイトルが設けられているケースが少ないのでしょうか。
この問題を考えるためには、アメリカの企業とそれから
日本の企業の財務面でおかれてきた環境の違いを理解することが必要です。
日本ではメインバンク制度が広く定着してきており、
企業は資金調達に当たっては、まずメインバンク、
それからそれ以外の銀行という形で銀行から
借り入れをするのが普通です。
社債の発行も徐々には裾野が広がってきましたが、
少し前までは一部の大企業に限られたため、
社債市場の発展という意味でも遅れていました。
アメリカの場合、メインバンクといったシステムはなく、
また、逆に銀行の規模が嘗てはそれほど大きくなかったこともあって、
企業は資金調達にあたって、当初は銀行借り入れが中心ですが
その後は社債発行がより広く用いられてきたことがあります。
そのため、アメリカ企業の場合は、株式市場ばかりでなく、
債権市場においても自社を投資家にアピールする必要があり、
いわば、資本市場全体を重視せざるを得ない背景があったわけです。

銀行の借り入れと社債での調達、その2つを比較すると、
銀行借り入れの場合、ある意味銀行は取引先企業についての専門家ですから、
専門的知識を持った担当者がその企業の信用力あるいは、
企業の価値などを独自に判断してくれます。
これに対し、市場で調達する場合、相手は多くの投資家になります。
そこで幅広い投資家を掴むためには、あらゆる経営情報を駆使して、
自らの会社の信用力及び価値を売り込まなくてなりません。
同時に市場で評価される会社となるように、
戦略的な意思決定を行って事業を遂行して行かなければなりません。
そのためには、財務部門は単に財務機能や経理機能を果たすだけではなくて、
更に経営戦略の面においても、影響力を持つ必要性があったわけです。

アメリカの企業がCFOを置くようになったのは、
1970年代位からといわれています。
この時期、市場の自由化や、日本企業をはじめとする
海外企業との国際的な競争が激しくなったことで、
アメリカ企業にとっては市場との緊張感が高まった時期でもあります。
そこで企業は市場に対して、従来以上に企業の信用力、
そして価値をきっちり説明することが必要になった訳です。
こうした中で生まれてきたのが、CFOということです。
従って、CFOという職種は、金融資本市場重視の
姿勢の反映ともいうことができます。

一方日本の企業のメインバンク制度というのは、
その原型は戦前の統制経済にまで行き着くといわれています。
戦後も長い間、政府に「護送船団方式」と表現されるような形で
指導されてきた銀行が、相互に株式を持ち合う企業集団の中核として、
位置づけられ、安定的にその企業集団のメンバー企業に融資する
という形が続いてきました。
ところが1980年代以降、日本企業も自由化、国際化の中に巻き込まれ、
銀行と企業との関係にも変化が訪れています。
また、社債市場も成長しつつあり、また海外の株主の
活動などもあって、日本企業の株主に対する姿勢にも
変化がみられるようになっています。その点では、
財務部門のあり方も金融機関重視から、より市場との対話を
重視した布陣へとシフトすることが必要になっています。

しかし、依然として企業の資金調達では、アメリカに比べて
銀行融資への依存度はるかに高く、また、株主重視といっても、
アメリカ企業との間にはまだ差があります。
このことは、CFOのような役職を設けている
日本企業が少ない原因であり、また、結果ともいえるかもしれません。

CFOという役職そのものが問題なのではなくて、
重要なのはそういった機能を財務部門として持つか否かですが、
CFOという役職を置くこと自体が、
財務部門に市場との対話という戦略的な機能を担わせようとする
企業の積極姿勢の表現にはなるのではないでしょうか。

分野: 平松拓教授 |スピーカー:

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