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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 農業改革 (財務戦略/村藤 功)

農業改革 (財務戦略/村藤 功)

10/04/23

日本国内の様々な課題を考える中で、農業の問題は、
食べ物に直接結びついているだけに避けては通れない問題です。


■農業の現状
農業の生産金額は2007年で8兆4400億円に上っています。
この金額から、生産に使っている飼料や原油等の財やサービスを控除した、
農業によって生じる付加価値、すなわち農業の国内総生産は4兆7000億円になります。
日本のGDPが500兆円位だとすると、農業の割合は1%位ということで、非常に小さい値になります。

現在、日本の農業就労人口は約300万人です。
農業の国内総生産4兆7000億円を一人あたりにすると年間約150万円にしかなりません。
食べ物があるから何とかなるという説もありますが、150万円は、
生きていくのに十分な額ではないのではないかということが問題になります。

また、本当に300万人の農業就労者がいるのかというのも疑問です。
お米の場合、稲作農家は200万戸以上あるという統計がありますが、
その一方で、本当に稲作だけで生きている農家は8万戸程度だと言われています。
残りの圧倒的多数は、稲作をやっているふりをしながら、
その土地を売却し利益を上げるという農外転用で、
「濡れ手で粟収入」を狙う偽装農家だという説があります。
ある日、誰かがやって来て「土地を売って下さい」と「嫌だ」を繰り返していると、
結果としてものすごい値段で土地が売れる、ということが起こるかもしれません。

実のところ、農作物を栽培するよりも土地を高値で売った方が儲かるので、
そういうおいしい話が転がってこないかと待っている人たちが、山のようにいる状況です。


■食糧自給率
日本の米は、海外の米が日本に入ってこないように、米の輸入関税を高くすることで守られています。
その米の自給率は96%ですが、農作物全体でみると自給率は40%程度です。
他の穀物では、大豆が24%、小麦が14%となっていますが、
足りなくなった時に本当に海外から輸入できるのかという懸念はあります。

しかし、自給率は地域によって大きく異なります。
東京では1%、大阪では2%と、都市部では、
どこかから食糧を買って来ないと食べるものが無いという状況です。
ところが地方での自給率は北海道が198%、秋田県が177%、
山形県は133%と100%を超える所もあります。
100%ということは、自分で食べるよりもたくさんの食糧を栽培しているということです。

日本国内には食糧の足りない所と余っている所の両方があるため、
食糧自給率について日本全体という話をしても、実のところあまり意味がありません。


■減反政策
また、農地については放棄地という問題もあります。
これには政府の減反政策が大きく関係しています。

減反政策とは、米をつくりすぎてしまうと値段が下がってしまうので、
田んぼを耕作せずに米をつくらないでもらう、というものです。
これに反発して政府の言うことを聞かない人たちも約3割います。

放っておけばもっと生産量が増えるものを減反政策で供給を少なくしているという状況ですから、
もしこの政策をやめれば、米の供給量は増加します。
こうなると、現在の米価である60キロ当たり1万4000円は9500円へと、
3割から4割下がると言われています。

そういう意味では、減反政策は政府が農家を守ろうとしてやっている政策ですが、
本当に必要かという疑問も生じてきます。


■拡がる流通網
今の農業の問題点の一つは、農家が大変な思いをしてつくった作物を出荷してからの、
農協や卸といった流通段階で起こっているといえます。
農協は農家から商品を買い取るわけではありません。
農協の役割というのは、農家からの委託販売を受けて標準品を卸に卸すというものです。
ここで求められている商品は標準品ですから、農協と卸を通すと、
たとえ特別にいい物をつくったとしても、同じ値段しか付けてくれません。

そのため、いい農作物を作る人たちの中には、
農協と卸を通さないようにしようという人も出てきています。
例えば、自分でインターネットを通じて販売を行う、
バリュー・チェーンの後半部分は自分で管理する、という具合です。

また、これまでお客さんに野菜を販売していた小売や、
あるいは野菜を調理して出していた外食でも、
農業生産法人の設立や農地を借りて栽培するということで、
バリュー・チェーンを遡る会社が増えてきています。
例えば、セブン&アイは千葉県で農業生産法人を立ち上げましたし、
イオンは茨城県で農地を借りて農業生産に参入しました。
千葉県や茨城県は東京に近く、そういう意味では、
東京に住んでいる人たちの為に野菜を作っているともいえます。


■九州の農業
九州の経済規模は「一割経済」と言われるように、全国の約1割を占めていますが、
農業産出額はその2倍にあたる2割に上ります。

とはいうものの、農業就業人口は1990年の約79万人から、2005年には52万人へと減少しています。
また、勤労者一人当たりの総所得は約330万円ですが、農家の所得は約200万円程度です。
農業所得に限ってみても、2005年に172万円だったものが、
3年後の2008年には131万円にまで下がっており、結構厳しい状況だといえます。
所得の低いままでは、若い人がやる気になれず、
農家は高齢者ばかりだということになってしまいます。

これを打開する案としては、先ほど申し上げた、
バリュー・チェーンの後半部分の農協と卸を迂回して販売するということが考えられます。

特別なものをつくって他の作物と差別化すれば、高い値段でもいいもの、
おいしい野菜だということで消費者も手に取ってくれます。
最近はそういった成功例も少しずつですが増えてきています。

とはいうものの農作物流通の大半は農協や卸が仕切っています。
大きな流れになるにはもう少し時間がかかりそうな気配です。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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