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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > ボルカルール2 (ファイナンシャルマネジメント/平松拓)

ボルカルール2 (ファイナンシャルマネジメント/平松拓)

10/04/14

前回も触れましたが、大恐慌後にアメリカでは金融の規制強化が行われました。
その中でも重要なのが、1933年に成立したグラス・スティーガル法です。
これは、大恐慌の際に、銀行による証券業務が投機や不公正取引につながり、
それが証券価格の暴騰と暴落を招き、結果として大恐慌に至ったという観点から、
商業銀行が国債以外の有価証券の引き受け業務を行うことや
証券会社が預金の取り扱いを行うことを禁じた法律です。
有名なJPモルガンとモルガン・スタンレーが
分離したのもこの法律によるものです。

さらに、この法律には預金にその上限金利の制約を設けるという
内容も入っており、当座預金に利息を付けることも禁止されました。
それは1920年代に銀行が過当競争をして、その結果資産内容が
悪化していたことも恐慌の原因と考えられたからです。

グラス・スティーガル法による業務に関する規制以外にも、
当時は場所についても厳しく制限がありました。
1927年にできたマクファーデン法という法律があります。
少しややこしいのですが、この法律はそもそもは、
それまで支店の設置を認められていなかった銀行にも、
本店の所在地、例えばニューヨークならニューヨーク市での
支店の設置を認めるというものでした。
これがグラス・スティーガル法でさらに同じ州内であれば
支店の設置ができるという形に拡大されたのですが、
逆にその後長く、本店の存在する州以外の州では支店の設置が
認められないという形で残る結果となりました。

つまりグラス・スティーガル法後のアメリカでは、
銀行は証券業務を行うことが出来ない、本店のある州以外には支店も
持てないという形で厳しく制約されていました。
しかし、今のアメリカの銀行は規制緩和の結果、
銀行持ち株会社の下に銀行・証券会社ばかりか
保険会社やヘッジファンドまで持てるようになり、
また、合併を繰り返して全国レベルの支店網を
持つところも少なくなく、まさに隔世の感があります。

日本でも戦後は銀行と証券業務が厳格に分離され、
金利については臨時金利規正法、支店の設置についても
大蔵省(現財務省)の店舗行政により非常に制限的に
運用されてきたとそういう形があり、
アメリカと極めて近い形となっていました。

しかし、1970年頃よりアメリカでは、先ず、
金利規制に対する見方が変わってきました。
これは1つには大恐慌を引き起こした原因についての解釈が
変わってきたということもありますが、
同時に70年代はインフレーションが深刻化したため、
金利規制の存在が金利体系を歪める結果となったことがあります。

即ち、インフレにより市場金利が上昇する中では、金利が規制された
銀行の預金では証券会社の貯蓄性商品と競合できず、
銀行から資金が証券会社に流れる傾向がありました。
つまり、金融の公平性が維持できない状態になっていました。
また、国内での競合ばかりではなく、預金が金利規制のない
海外に流れてしまう問題も生じていました。

同時に海外との間では、金利ばかりでなく業務の規制にも違いがありました。
ヨーロッパ、特に、ドイツ・フランスなどでは、
大恐慌の後でもユニバーサル・バンキングと称して、
銀行本体で金融業・証券業務を含む幅広い
金融業務を行うことができました。
そのため金融の国際化が進展するとともに、
海外の金融機関との競合の面でもアメリカの銀行が
不利になると考えられたわけです。

こうしたことから金融制度の見直しの議論が高まって、
顧客への利便性、アメリカの金融機関の競争力強化を
名目に規制の緩和が段階的に進められる展開となりました。
1998年にはシティコープと証券会社を傘下に持つ
保険会社トラベラーズの合併が認められ、
翌1999年に成立したグラム・リーチ・ブライリー法により、
金融持ち株会社方式で銀行・証券・保険の
相互参入が可能となりました。

こうした規制緩和の展開は日本もほぼ同様で、
現在3つのメガバンクや野村などが子会社参入方式で、
銀行・証券等を兼営するという形になっています。

このように、大恐慌後の厳しい規制から70年弱かかって
規制緩和が進められた訳ですが、規制緩和によって利便性、
効率性の改善には繋がったものと考えられます。
しかし、一方で、今回の金融・経済危機の発生・展開を考えると、
規制緩和が「金融機関が錬金術のように利益を上げることで、
経済を牽引することが可能である」という、アメリカ経済が
陥った錯覚の構造的な背景になった面は否定できないと思います。

そうした観点から、前回触れたとおり、現在アメリカ議会では、
行き過ぎた規制緩和を修正する形で銀行をはじめとする
金融機関の業務や規模を規制する、所謂ボルカー・ルールの
考え方を含むと言われる金融規制法案を審議中です。

しかし、国内外のバランスに配慮する形で進んできた規制緩和の流れを考えると
金融機関の業務規制などを一国単独で行うことには限界があり、
一方でG20ベースの国際的な規制の枠組として採り上げるについても
国による制度的背景や意見の相違は大きく、ハードルは高いと思われます。

米国国内の金融規制改革や最終的に国際的な議論を経てまとめられるであろう
グローバルな金融規制の枠組みの中で、これまでの規制緩和路線が
どの程度修正されるのか、注意して見ていくべきだと思います。

分野: 平松拓教授 |スピーカー:

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