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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 金融危機からの回復と金融新規制 (財務戦略/村藤 功)

金融危機からの回復と金融新規制 (財務戦略/村藤 功)

10/04/09

アメリカでは金融危機後、金融だけではなく経済にもその影響が出ました。
これを建て直すということを、アメリカ国民はオバマ政権に対して期待しています。
とはいうものの、国民の税金を山のように注ぎ込んで経済と金融を建て直そうとしている中で、
ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーのような大手投資銀行の役員が、
高給を取っていることに対して、「あのお金は自分たちの税金ではないのか」
「ウォール街の高給取りの連中は許さん」というような批判の声が相次ぎました。
これを受けて、オバマ大統領は支持率を下げないためにも、
ウォール街にメスを入れるべく金融規制案を打ち出しました。

今日は、この新規制案についてお話しします。


■新規制案とは
この新規制案は元FRB議長のボルカー氏の「金融機関が巨大化し過ぎたために、
今回の金融危機が起きた」というアドバイスがもとになっています。
この金融規制案では、預金を取り扱う銀行業務と、
ヘッジファンドのようなリスク投資業務は分離されます。
その結果、アメリカの金融業界は大騒ぎになっているという状況です。

アメリカでは銀行は業務内容によって、コマーシャルバンク(商業銀行)と、
インベストメントバンク(投資銀行)に分けられます。
コマーシャルバンクが低金利の預金で調達した資金をリスクの高い投資に回すと、
リスクのミスマッチが起こります。

そういう意味では、ハイリスクはハイリスク、
ローリスクはローリスクで運用しなければいけないということで、
コマーシャルバンクの業務とインベストメントバンクの業務のうち、
どちらか一方を選択しなければいけないのではないか、というのが1つの考え方です。


■新規制案の影響
今回の金融危機では、バンカメはリーマンを買収するといいながら、
最後の瞬間でメリルリンチを買収しました。
しかし、バンカメはコマーシャルバンクで、メリルリンチはインベストメントバンクです。
そのため、今回の規制が実現すると、せっかく買ったメリルリンチを、
また分離しなければいけないのではないか、という疑いが出てきました。

現状では、大きなコマーシャルバンクのほとんどがインベストメントバンクとくっついています。
それをまた切り離すという、昔に戻っていくようなことをしなければいけないのではないかということで、
大騒ぎになり、コマーシャルバンクもインベストメントバンクも株価が大幅に下落してしまいました。

大きくなり過ぎた銀行をまた小さくするという話は、実に微妙な問題です。
アメリカには、預金のシェアが10%を越えるような銀行の合併は、
認めないという規制が今でも存在しています。
しかし、銀行の業務はアメリカ国内だけではなく世界中で行われているものです。

そのため、アメリカ国内だけで規模を規制するということに意味があるのかという反論が、
コマーシャルバンクやインベストメントバンク側から出ています。
アメリカの政府がヨーロッパや日本のことに茶々入れるわけにはいきませんが、
アメリカの中でどうするのかという話ができないということでもありません。
そういう意味では、国を越えてグローバルに色々起こっていることに対して、
規制は国の中でやらなければいけないということで、そもそもそこにミスマッチがあるといえます。


■金融機関の動き
現在、世界の金融機関では資産を縮小する動きが相次いでいます。
この資産縮小には、金融危機で痛んでしまった資産を処理すると、
自己資本比率が維持できそうにないということが影響しています。
ロイヤルバンク・オブ・スコットランドやバークレイズ、ドイツ銀行、
スイスのUBSのような欧州の主要銀行は、約2割の資産縮小を行っています。

一方で、アメリカの投資銀行の業績は回復してきています。
ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーは、金融危機で一時的に損失を被りましたが、
もともとは一番賢い金儲けが得意な人達が集まっているところです。
特にゴールドマン・サックスは2009年第4四半期の純利益が49億ドルの黒字をあげ、
多額のボーナスを給付していますが、そこに批判が集まるということが再び繰り返されています。


■金融危機からの回復
アメリカでは、2009年の夏位から景気は下げ止まってきたのではないかと、主張している人もいます。
FRBはアメリカ政府の国債やモーゲージ・バックド・セキュリティ
(Mortgage-Backed Security: 住宅ローン証券)の買い取りのような、
緊急対策を縮小してきています。

これらの対策を通じて、負債としてはドルを発行しながら、
誰も買わないものを買い取るということを行っていましたが、
いつまでもやっていては仕方がありません。

国債の買い取りは、2009年10月末で終わりましたし、
MBSの買い取りも2010年3月末に終了しました。

世界的に経済自体は回復基調にありますが、
GDPのような指標の回復よりも遅れてくるのが失業率です。
実のところ、アメリカでは10%、ヨーロッパでも9%と、失業率はまだ高止まりの水準にあります。
一方の日本の失業率も高い状況です。
GDPも日本は2009年の10-12月期で、実質4.6%成長でしたが、
失業率が高いためそれほど実感はありません。
2009年暦年のGDP成長率はマイナス5%でしたので、基本的に2009年の経済はマイナス成長でした。

加えて、GDPデフレーターが前年比で3%低下しています。
いつの間にか、スーパーマーケットの商品の値段がどんどん下がるという、
かつてないほどのデフレが日本で起こっているという状況です。
商品の価格自体は下がっていますが、全体でみると必ずしもいいとはいえません。

経済自体は回復基調にはありますが、もうちょっと実感できる回復であればいいと思います。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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