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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > MITレポートVol.21 (産学連携/高田仁)

MITレポートVol.21 (産学連携/高田仁)

10/04/26

米国滞在もあと10日ほどを残すのみとなりました。
来週は引っ越し等で慌ただしくなるので、このMIT Reportも
今週で最終回とさせて頂きたいと思います。まだまだやり残していることも多く、
ここを去ることに心残りは多いのですが、滞在中に得た知見を
4月からの活動に活かすことを考えると、帰国は楽しみでもあります。
今回の貴重な機会をご提供頂いたロバート・ファンさんをはじめ、
私を快く送り出して頂いたQBSの先生や学生の皆さん、
その他関係者の皆さんに心から深く感謝したいです。

さて、今週Sloanで行われたHBSのクリステンセン教授の
特別講義(4回シリーズの3回目)は、大きく心に響くものでした。
冒頭に配布された資料のタイトルが、
”The Application of Theories of Innovation to Management
and to our Personal Lives” というもので、“Personal Lives”という言葉が
なぜ出てくるのか気になっていたのですが、120分間の講義の後半に
それがよくわかりました。どうしても学生に言っておきたいことがあったのです。
現在、クリステンセン教授はガンの治療中で、そのためか頭髪がなく、
書籍やウェブの写真で見る姿とは全く異なっています。
来期はもうHBSの教壇に立たないとの噂も耳にします。
前半は、自ら構築中のイノベーションの理論を様々な事例を
踏まえながら解説するという通常のスタイルでしたが、
後半は3つの問いを投げかけ、それに自ら答える
という形式で進みました。以下、その概要を報告したいと思います。
(1)“I am happy & successful in my career?”
「ボストン・コンサルティングの後、MITのセラミック材料を
事業化するベンチャーの経営に携わって、
マネジャーや経営の仕事は、単に人に指示して仕事をやり遂げるだけではなく、
人を育てる(Building Others)ことだということが良くわかりました。
当時、自分の部下にある女性社員がいて、彼女は仕事を指示しても
なかなか満足いく結果を出さないし、仕事をしている様子は
全く楽しそうではありませんでした。あるとき、社員全員とその家族で
郊外にピクニックに行きました。そこで家族と楽しげに過ごす彼女の姿は、
会社で見る姿とは全く異なり生き生きとしていました。
なぜこれほど違うのか自分でもよく考えてみて、自分は、
彼女がどう考えどう行動したいかに十分な注意を払うことが
できなかったのではないかと気づきました。その後、
彼女に対する接し方を変えてみたところ、彼女は見事に生き生きと
仕事をするようになりました。
(※高田注;どう接し方を変えたか、英語が良く聞き取れませんでした)
結局、自分のキャリアが幸福で成功に満ちたものとなるかどうかは、
自分自身のことではなくて、一緒に仕事をする仲間が
成長するかどうかが重要なのです。その考え方に立って以来、
仕事に以前より大きな幸せを感じるようになりました。
マネジメントの仕事は素晴らしい仕事です。」
(2)”I stay out of jail?”
「残念なことですが、HBSで共に学んだ同級生のうち、
今、3人が牢屋に入っています(うち一人はエンロン事件で有罪)。
優れたエリートが、なぜそんなことになってしまうのでしょうか?
これも自分の経験ですが、オックスフォード時代に自分が
所属していたバスケットボール部がチャンピオン大会まで進んだ時、
大事な試合が日曜日に開催されることになってしまいました。
でも、自分は宗教の関係もあって16歳の時に日曜日は
安息日だと心に固く誓っていたので、チームのコーチや仲間に
日曜日は出場出来ないことを伝えました。仲間は、
「1度くらい良いじゃないか。このチャンピオンシップの試合は二度とない。
翌週に教会に行って、神父様に罪を告白して懺悔すれば、
神様も1度くらい許してくれるよ(笑)。」と言います。
直前の金曜日の試合でレギュラーメンバーの一人がけがをして、
どうしても自分が出場せざるを得ない状況になり、
誓いを破って出場してしまいました。でも、やはりずいぶん後悔しました。
その後、ボストン・コンサルティングに入社して懸命に働いていたあるとき、
上司から「来週月曜日に大事なクライアントへのプレゼンがあるので、
日曜日に出社して欲しい」と頼まれました。大学時代の苦い思い出が蘇り、
一瞬迷ったがきっぱり断りました。そのことがあって以来、
周囲は自分に週末の仕事を依頼しなくなりましたが、
それで不都合なことは特にありません。結局のところ、
「1度だけ・・・」という気持ちで一線を越えてしまうと、
次に同じようなことが起きたときについ判断が甘くなって、
2度目、3度目・・・と、なし崩し的に自らの誓いを破り、
大切なものを失ってしまうことになります。そんな具合に、
つい一線を越えてしまう気持ちが、結果的に
自分を牢屋にまで追い込んでしまうのではないでしょうか。」
(3)”My family becomes a wellspring of happiness to me?”
「HBSの同窓会は5年に1度開かれるのですが、
そのときに同級生の離婚話をよく耳にします。
よく考えてみると、仕事では短い周期で目標を達成し、
次も頑張ろう!という気になります。顧客への提案、
新しいプロジェクト、昇進、・・・いろんなことがあって、
ついついOver Invest(のめり込む?)状態になるのは自然なことです。
一方、家族との生活は、それほど頻繁に目標や達成感を味わうようなことはありません。
家族が一緒に過ごすことの価値は長い時間が経たないとわからないので、
ついUnder Invest(ないがしろ?)状態になります。
企業の経営でも同じようなことが起きます。
自分は「こうすべき」と思って経営に携わっていても、
破壊的なイノベーションの芽は予想もしないところで小さく生まれます。
そのときに、「やり慣れたプロセスをそのまま前に進めるべきか?
それとも、この小さな出来事に価値があるかどうかを、
立ち止まって確かめてみる必要があるか?」という判断に迫られます。
時間や人材や資金は限られており、いざ従来とは異なるやり方を
試してみようとすると、マネジメント上の”資源配分“の問題が生じるので、
ことはそう簡単ではありません。しかし重要なことは、
様々な制約があったとしても、そこでちょっと立ち止まり、
自分の信念に照らして、どこに大切な価値があるかを
見逃さないようにすることです。自分の経験から言えることは、
家族が自分を幸せにしてくれるのではなく、逆に、自分を犠牲にしてでも
家族を大切にすると、家族はそれに応えてくれて、
結果的に自分自身も幸せになれます。家族との生活は、
仕事のように頻繁に達成感をもたらすものではなく、
Under Investになりがちかもしれませんが、
間違いなく大切な価値をもたらしてくれます。」
 
自分の英語力不足もあり、上記の表現は正確性を欠いているかもしれません。
でも、レクチャーの最後の10分ほど、家族の大切さに関するくだりでは、
クリステンセン教授は時折涙で言葉を詰まらせながら話し、
聞いているこちらも胸がつまりました。このような表現は慎むべきことを承知で
敢えて言うなら、自分自身がもう長くないことを悟った親が、
子供たちをそばに呼んで大切なメッセージを伝えようとしているような、
そんな印象でした。レクチャーが終わると、会場(400名程度)の
学生全員が立ち上がり、しばらくの間拍手を送り続けていました。
こちらに来て以来、いろんな人の講義やスピーチを聴きましたが、
その中に、(表現がなかなか難しいのだが、)ある種の“人間くささ”を
感じることがしばしばあったことを憶い出しました。
今回のクリステンセン教授の話は特別かもしれません。
でも、イノベーションもアントレプレナーシップも戦略も
マーケティングも何もかも、そして、企業経営も学校教育も、
それらは間違いなく人間の営みそのものです。
様々なケースや理論は無機質に頭に詰め込むものではなく、
人間の営みである以上、自分だったらどう考え、どう判断し、
どう行動するか、自分自身の目線に引き戻して考えなければなりません。
そして、自分の判断の究極の拠り所は、自分自身が何を
最も大切にしているかということです。日々の生活を慌ただしく送っていると、
大切なことをつい見失いがちになりますが、決してそれを忘れてはいけません。
クリステンセン教授は、そのことを伝えたかったのではないでしょうか。

分野: 高田仁准教授 |スピーカー:

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