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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 高速無料化 (財務戦略/村藤 功)

高速無料化 (財務戦略/村藤 功)

10/03/19

今日は、2009年夏の衆院選マニフェストで民主党が唱えていた、
高速道路の無料化についてお話しします。


■無料化対象の路線
蓋を開けてみると、高速道路の無料化についての、
社会実験の対象となった区間はかなり限られていました。
財源が不足しているために、マニフェストで提言した政策であっても、
縮小せざるを得ないということでしょう。

2009年夏のマニフェストでは、無料化によって混雑が予想される、
首都高速や阪神高速を除いた路線を無料化すると言っていました。
そして、もともと渋滞への影響、温暖化ガスの削減、
公共交通機関への影響等を考えたうえで、
区間を選定することになっていました。

しかし、実験のための予算が十分にとれなければ、限定的にしか無料化は実行できません。
2010年度は6月頃から来年3月末まで、全国37路線、
50区間、1626キロを対象として無料にする方針です。
これは無料化を検討した東日本、中日本、西日本高速全体の2割にあたります。
国民としては、主要な路線の選定を期待していましたが、
選ばれた路線をみると、通行量の少ない路線を無料化したという印象を受けます。

九州では、全体で6路線、13区間が無料化の対象となりました。
福岡県の八木山バイパスの穂波東~篠栗、東九州自動車道の6区間、
大分自動車道の2区間、西九州自動車道の武雄~佐世保中央、
長崎バイパスの古賀市布~川平、そして南九州西回り自動車道の2区間です。
全区間が開通していない東九州自動車道のような路線も含まれているため、
使い勝手はあまり良くないという感じがします。


■高速道路無料化の影響
無料化によって、観光客の増加や、地方の一般道路の渋滞緩和のように、
ある程度は喜ばしい効果が生じるかもしれません。
その一方で、鉄道の利用率減少や渋滞による高速バスの遅延のように、
無料化については否定的な声も出ています。

現在、大手の運送会社は資金に余裕があるため高速道路を利用していますが、
中小の運送会社はお金が無いため一般道を走って輸送を行っています。
ところが、高速道路が無料になると一般道を走っていた車が高速道路を利用するようになるため、
大手の運送会社は困惑して「やめてくれ」ということを言っています。

その意味では、高速道路の無料化は色々な人たちに影響を及ぼすため、
単純に決めることが出来る問題ではありません。
公共交通を運営している鉄道事業者、バス、フェリーは、
2009年3月から自民党のもとで実施された土日祝日に上限を1000円とする制度で、
かなり厳しい状況に追い込まれています。

例えば西鉄は、2010年3月末で福岡~松山、北九州~長崎、
北九州~松本、北九州空港~黒崎・折尾の高速バス4路線から撤退することを発表しています。
鉄道やフェリーといった他の業種でも、売上減少といったマイナスの影響が出始めています。

地方に住む人たちの中には、高速道路の無料化を喜んでいる人もいます。
また、高速道路が無料になって観光客が増えるのではないかとみている自治体もいます。
一方で、無料にするよりも新しい高速道路を作って欲しいという要望を出している自治体もあります。
人によって言っていることは様々ですが、だからこそ、
社会実験を通してバランスをとっていかなければなりません。
地方の実情にあわせて個別に考え、色々な利害調整をおこない、
合理的に判断しなければいけないということでしょう。


■高速道路に関わる費用
個別の道路毎に有料道路を作り、そこで徴収するお金で道路を作るお金を返済し、
完済すればその高速道路は無料にするというのが、建設当初の話でした。
ところがその後、高速道路は全国を一体とみなし、
全ての収支を合算する「全国プール制」が導入されました。

これにより、ある高速道路が借りたお金を完済しても無料とはならずに、
余るお金を新しい高速道路の建設にあてるということが、これまで行われてきました。
全国の高速道路のネットワークが不足しておりどんどん建設しなければならないという時代には、
全国プール制は適しているかもしれません。

しかし、重要な路線はほとんどが完成してしまえば、
今度は鹿しか通らないような高速道路を作っていくという事になってしまいます。
また、道路にも約60年という耐用年数があります。
土地の取得費は一度限りの支出ですが、古くなった既存の設備を壊して、
もう1回作るとなると結構費用がかかります。
そういう意味では、今まで作った重要な路線の維持管理や、
そのコストについて考えおかなければなりません。


■誰が費用を負担するのか
そもそも高速道路を作る際にかかる費用を誰が負担するのかという問題があります。
高速料金で徴収すれば「高速道路を利用する人」がお金払う事になります。
これをガソリン税で徴収するとなると「車に乗っている人」がお金を払う事になります。
しかし「車に乗っている人」と「高速道路を利用する人」は必ずしも同じではありません。
また、高速道路の建設費を税金から支払うとなれば、国民全体が負担することになります。
負担をするのが国民なのか、それとも自動車に乗っている人なのか、
それともその高速道路に乗る人なのか、という話です。

高速道路を利用する人は、自分で乗って自分でそのメリットを受けていますから、
メリットを受ける人が払うというようなのが当たり前の気がします。
今回の高速道路の通行料を無料にすることで、これまで高速道路を使う人が払っていた費用を、
国民全体が支払うことになってしまいました。
ほんとにそれでいいのか、という疑問を感じます。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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