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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > キャッシュと会社の成長の限界について (ファイナンシャルマネジメント/平松 拓)

キャッシュと会社の成長の限界について (ファイナンシャルマネジメント/平松 拓)

10/03/08

今日は、キャッシュと会社の成長の限界についてのお話です。


■企業の経営戦略
「自分が立ち上げた会社の製品が、段々と市場に認知され始めてきた、
さらには、第二、第三の商品の構想もあり、それぞれ市場に受け入れられる自信が強まった」、
という場合を考えてみましょう。

このような状況にあったとすると、経営者は自分の会社をどのように持っていこうと考えるでしょうか。
恐らく、売れる商品のある間、続く間にできるだけ売り上げを伸ばして会社を成長させ、
同時に利益を蓄積して安定化させようと考えるでしょう。
商品には旬というものがありますし、コンペティター(競争者)もいます。

タイミングを逃さずに販売を伸ばすことは重要でしょう。
また、売上に対し一定の利益が得られるのであれば、
経営の安定化のためにも売上を増やそうとするのは自然なことです。


■成長の条件
今、前提とした、売上げとその利益の間に成立する一定の比率を売上高利益率といいます。
しかし、闇雲に売上げを増やせばいいかというと、そうとも言い切れない面があります。

ここで、企業が売り上げを増やし成長するためにはどのようなことが必要か、
逆に無理せずに達成できる成長とはどの程度かといったことを考えてみたいと思います。

まず売上高を増やすためには相応の資産の増加が必要です。
つまり生産を拡大するためには設備の拡張が必要でしょうし、
生産や販売の増加のために在庫が増えてきます。

それから、売上増に応じて掛け売りも増えるために売掛金が増加するのも普通です。
このような形で、資産と売上げの間に成立している一定の比率を資産の回転率と呼んでいます。
資産全体では総資産回転率です。即ち保有している資産が、
一年間で何回転分の売上げにつながっているか、という考え方ですが、
企業が業務の効率化などを行わない場合は一定比率にとどまる、
即ち、売上増に応じて総資産も膨らむことになります。

さらに、総資産を増やすためには、その為の資金の調達が必要です。
これは負債、または自己資本で賄われる必要がありますが、
銀行借入れなどの負債だけでまかなおうとすると、
総資産に対する自己資本の比率、つまりレバレッジが上昇してしまいます。

レバレッジが高まると倒産のリスクが高まるということについては、
2010年1月4日放送分で説明しましたが、それを避けつつ資金を調達するためには、
負債の増加に応じてレバレッジが上昇しないように自己資本も増える必要があります。

やや話を単純化しましたが、利益や売上げと自己資本との関には、
売上高利益率、総資産回転率、レバレッジという3つの比率を通じて、
ある程度一定の関係が成立しているといえます。
つまり、利益や売上げを増やすためには、これらの3つの比率のどれかを変化させるか、
自己資本を同じ比率だけ増やすか、どちらかが必要だということです。


■ROE
やや横道にそれますが、一定の自己資本を用いて達成される当期純利益の比率、
これはROE(Return on Equity:自己資本利益率)と呼ばれていますが、
企業の業績を測る指標として、広く用いられているものです。

ROEは今述べたようにレバレッジによっても変化しますが、それを除けば、
ROEを改善させるためには業務効率の改善などによって、
売上高利益率或いは総資産回転率などを向上させてやる必要があるため、
評価の尺度として用いられるわけです。


■自己資本の増加率に基づく成長率
そのROEの改善なしに自己資本を増やすためには、まず増資が考えられます。
しかし、増資となるとなかなか簡単ではありません。
市場の環境もありますし、それから株主の了解も必要です。

増資以外で自己資本を増やす手段となると、後は利益の留保ということになります。
税引き後の利益から配当や役員賞与の支払いをした残りは、内部留保として自己資本に留まります。
つまり増資がなければ自己資本の増加は留保利益増加分だけということになります。

それでは、留保利益による自己資本の成長率はどれだけかというと、
利益の中から、どれだけ内部留保に留まるかという、
内部留保比率をROEに乗じた比率だけの成長ということになります。
レバレッジを変化させない場合、翌期に向けて、
この企業は借入れを自己資本成長率分だけ増加させることができ、
その結果総資産も同じ比率の増加が可能となります。

そうすると、業務効率の改善などを考えなければ、
この企業の翌期の売上げと利益の増加も同じだけの比率ということになります。

つまり、売上高利益率、総資産回転率、レバレッジ、この3つの比率が変わらないままであれば、
売上げや利益の成長、増加も先ほどのROEに内部留保比率を乗じた比率ということになります。
かつては、日本企業はROEの目標を10%としていましたが、最近は上昇傾向にあります。
しかし、今のような経済状況ですと、黒字企業であってもROEは1桁台です。


■成長の限界を越えて
やや話を単純化している面はありますが、この比率を上回って成長しようとするならば、
企業は業務効率性の改善を達成するか、レバレッジを高めて負債による調達を行うか、
増資を行うことが必要になります。

業務効率の改善や増資が可能であれば良いのですが、そんなに簡単な話でもありません。
かといって、レバレッジを高めれば金融機関などから倒産リスクが高いと見なされることになります。
ネット通販のアマゾンなど、例外的にこうした制約をはるかに上回る成長率を遂げる会社もありますが、
一般的には過大な成長を目指した場合には、一時的な売上不振などがあった場合に対する、
抵抗力を失うことになって、倒産のリスクが高まることになります。

それを避けようとすると、この自己資本の増加率程度の成長率で、
我慢しなければならないということになります。

業務面では黒字を計上できる潜在性のある会社でありながら、
一時的な資金繰りの行き詰まりによる倒産を避けるためには、
前回お話ししたような自社のキャッシュフローの管理を行うとともに、
こうした成長の限界についても意識しておくことが重要ですが、
より積極的に考えるならば、成長の限界を引き上げるよう、
業務効率改善などにチャレンジすることが重要とも言えます。

分野: 平松拓教授 |スピーカー:

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