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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 経営リスクマネジメント その4 (経営リスクマネジメント・国際企業分析/中村 裕昭)

経営リスクマネジメント その4 (経営リスクマネジメント・国際企業分析/中村 裕昭)

10/03/17

前回は、リスクを過小評価するケースについて、メーカーによる欠陥品の例を紹介しました。
今回は、まず、リスクの計測を見誤らないために、どのように注意していかなければならないのか、
その留意点についてお話しします。


■リスクの過小評価
リスクを過小評価してしまう失敗というのは多く見られますが、その理由はまちまちです。

過小評価してしまう理由がどのようなものかによって、留意点も異なりますが、
代表的な例の一つに「過去の成功体験」があります。

過去にずっと成功を収めて来た為、「我が社は、大丈夫」という自信過剰に陥っている場合です。
このケースでは、社風そのものが自信過剰になっている可能性があるため、
社員全員が、過小評価を全く疑わないという状況に陥っている可能性があります。
この状況を、心理学では「集団思考(Group Think)」という言い方をします。
こうした状況に陥らないようにするためには、
「利害関係のない第三者による経営の点検」などが必要になります。

具体的に経営をチェックしていく方法はいくつかあります。
一つは、「外部取締役」などによる経営の監視です。
但し、限られた数の外部取締役がどこまで社風を含めた問題点に気付き、
それを指摘できるかというと、難しい点もありますので、外部取締役だけに頼るわけには行きません。

そのため、企業が自信過剰にならないようにするためには、いろいろな工夫をする必要があります。
例えば、「顧客の声を真摯に聞く」とか「社会からの要請を真剣に受け止める」
という仕組みを作るという方法があります。

お客様相談室などの設置や、
それらの声が外部取締役や監査役などに届く工夫をすることなども必要です。

しかし、こうした取組を行うには、
会社がその気にならないとそうした装置自体が有名無実化する可能性もあります。


■リスクの過大評価
今の例は「リスクの過小評価」の例でしたが、
もちろんリスクを過大評価してしまう場合も結構あります。
リスクを過小評価するよりも過大評価する方が「安全」なのではないか、
と考える方もおられるかも知れません。

しかし、過大評価も様々な問題を引き起こします。
例えば、海外に事業進出して生産拠点を作るというリスクを過大評価して、
海外進出を行わなかったために、それが原因でコスト競争力に勝てずに衰退した企業もあります。
また、単一の事業分野だけではリスクが大き過ぎるとして急激に多角化を行い、
コントロールが効かなくなって破綻した企業もあります。
他に、事業の拡大はリスクを伴うので「慎重に」と考えて、手持ち資金をたんまり貯め込んで、
使わなかったために買収の標的にされてしまったという企業もあります。

リスクには敏感に反応しなければなりませんが、あまりにも過敏に反応してしまってもいけません。
リスクの過大評価は、一見「リスクに敏感である」というように見えますが、
結局は「リスクを知らない」ということにつながっているのではないかと私は思っています。

更に重要なことに「一つのリスクを過大評価したが、
別のリスクを過小評価した」という姿も同様に見て取れます。
先ほどの海外進出をしなかった企業の例では、海外進出のリスクを大きいものと考えた一方、
海外進出した競争相手との競争リスクを過小評価したということになります。

本当は、進出先国の制度や市場を調査し、
必要に応じてリスクが大きければ現地の有力企業と合弁事業とするなどの選択もあったはずです。
多角化で失敗した企業の場合は、多角化のリスクを理解してなかったということになります。
経済情勢が変化すると一つの事業だけでは不安定だというリスク感覚は良いのですが、
多角化企業を経営するということがどんなに大変なことなのか理解しないままに、
多角化を進めてしまったということです。

また、お金を溜め込んでそれを有効活用せず、成長が鈍化して、
株価が低迷しているような会社は直ぐに買収の標的になります。
資金を持っているのであれば、それを事業に投資して、
資金コストよりも高いリターンを得るのが会社の役目です。
例で取り上げた、企業買収の標的になった企業のように、
事業投資はリスクが高いなどといっていると、「買収されるリスク」がそれ以上に高くなります。
但し、この場合、株主にとっては「資金を有効活用できない現経営者」よりも、
資金を有効活用してくれる「買収者」の方がよいという考え方もあるかもしれません。

特に最近では日本でも、そのように考える株主も大分多くなっていると言われています。


■リスクマネジメントの「バランス感覚」
これらの事例からも、リスクマネジメントをしっかり行うには、過大評価にも、
過小評価にも陥らずに、正確にリスクを把握する「バランス感覚」の重要性が伝わってきます。
このバランス感覚を磨く方法には、リスクマネジメントを正しく行うことです。
リスクマネジメントを正しく行うためには、最初に申し上げたとおり、
主要なリスク要因をもれなくしっかりと抽出できて、
次にリスクの正しい計測ができるということが必要です。

そのためには、まずは従業員が業務について、
十分な知識と洞察力を持っているということが大切だと思います。
そして非常に大きなリスクもたくさんあるため、
経営者がリスクマネジメントをよく勉強して理解しているということが肝要だと思います。
リスクマネジメント専門の部署、それから会社全体を見ている経営者、
そして従業員にまでリスクマネジメントの知識が行き渡っていないと、
リスクマネジメントを正しく行うことは出来ません。

まさに、リスクマネジメントは「全員野球」ということになります。

次回は、「様々なリスクの対応方法」と「リスクマネジメントの勉強方法」を中心に、
お話したいと思います。

分野: 中村裕昭教授 |スピーカー:

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