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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 経営リスクマネジメント その3 (経営リスクマネジメント・国際企業分析/中村 裕昭)

経営リスクマネジメント その3 (経営リスクマネジメント・国際企業分析/中村 裕昭)

10/03/16

随分ご無沙汰してしまいましたが、
前回の放送(2009年9月28日/29日放送分)では、
経営リスクの定義や経営リスク管理の仕方、
それからリスクマネジメントの組織ということについてお話をしました。
まずは復習も兼ねて、前回のまとめをお話しします。


■前回の復習
前回の放送で申し上げたのは、「経営リスク」とは、
企業業績に影響を与える不確実性という概念であり、
単に「危険である」ということや「損をすること」ではないということでした。

例えば、「研究開発」は不確実性の源泉です。
「研究開発が成功すれば新製品が開発できるが、
成功しなければお金ばかりかかり何も生まれない」ということになります。
そのため、アップもあればダウンもあるということになります。

また「新製品が開発できてもマーケティングが下手だと、
せっかくの製品が売れない」ということになります。
従って、マーケティングも不確実性の源泉ということになります。

だからといって、企業は研究開発やマーケティングをやらないというわけにはいきません。
リスクをとって初めてリターンを得られるということになります。
そこに「経営リスクマネジメント」というリスクに対処するための、
経営手法が必要ということになるわけです。


■リスク要因の特定
ネガティブにもポジティブにもなりうる不確実性に対応することをリスクマネジメントと呼びます。
そして、不確実性発生の原因となる事柄を「リスク要因」と呼びますが、
これはありとあらゆるものが考えられます。

この「リスク要因」には、人材のリスク、財務のリスク、技術のリスクなどがありますが
、リスクマネジメントでは、会社の中にあるこれらのリスク要因を見つけ出して、
大きなリスクは、特に念入りに処理する必要があります。

リスクマネジメントのプロセスでは、まずこの「リスク要因」を特定することが第一歩となります。
会社ではそのリスクを誰が特定するのかということが重要になってきますが、
この特定はその分野のプロが行います。会社には色々な職場がありますが、
例えば工場の組み立てラインでのリスクは、そのラインのプロしかわかりません。
また、販売の現場のリスクというのは販売のプロが分かっているはずです。
更に、経理を担当している人たちは、その道のプロであれば、
経理業務におけるリスク要因を把握できるはずです。

会社の全てのリスクは、ほとんどの職場を通じておさえられるはずですが、
個々の職場に属さない会社全体のリスク、例えば「社風に関するリスク」
「内部統制のリスク」「企業買収リスク」「戦略リスク」などについては、
経営者自らがリスク要因を検討する必要があります。


■重要なリスク要因の判断
そうして特定された沢山の「リスク要因」には小さいものもあれば、
大きいものもあるので管理には注意を要します。

現在多くの会社で行われているのが「全社的統合リスク管理」という管理方法です。
会社の各部署において把握された大小の「リスク要因」を本部が把握し、
その中から、「会社への影響が大きいリスク」を取り出します。

「会社への影響が大きいリスク」の抽出方法には色々ありますが、
一般的にはリスク要因について「経営への影響度」と
「リスクの発生の可能性」という2つのマトリクスで数値化して計ります。

それぞれの「経営への影響度」と「発生可能性」を10段階評価で表わすとか、
影響度を金額で、発生可能性を年間の回数で表わすなどの方法が一般的です。
製造業を例にとりますと、「欠陥品」が発生する可能性は低くても、
もし、欠陥品が発生すると製品の回収等を行う必要が出てくる可能性があります。

そうすると、「製品回収に伴う資金負担」に加えて「ブランド価値の低下」など、
経営への影響度は極めて大きいというケースがあります。
この場合、例えば10段階評価にすると、「リスク要因の発生可能性」は低いので3点、
「会社の経営への影響度」は大きいので8点、というような判断をします。
すると、このケースでは、欠陥品リスクは、3×8=24点の大きさのリスクということになります。


■経営判断としてのリスク要因の判断
リスク要因の判断は非常に高度な経営判断です。
もし、現場や経営者が「自社の製品を過信」している場合や、
「高をくくっている」場合は、「リスク要因の発生可能性」を大変低く見積もり、
そのうえ「会社の経営への影響度」もそれほど大きくないと見るかもしれません。

極端な例を示せば、発生可能性を1点、経営への影響度を4点と見れば、
合計4点の大きさのリスクとなり、先ほどの24点の大きさのリスクの6分の1になってしまいます。
リスク要因の判断によってこれだけの差が生じてしまうことになります。

そのため、この判断を間違えている会社には色々な問題が起きてくる可能性があります。
例えば「リスク全体を実際よりも低く見積もってしまった会社」は、
それ相応のリスク対応しか行わないということになります。
製品の点検に充分な経営資源を投入していないとか、
欠陥品発生のための積立金を十分に積んでいないとか、
あるいは問題が発生しても重要性の認識が薄いために対処が遅れる、などの症状が出てきます。
こういうことになると、製品のユーザーや株主も困ったことになってしまいます。

「リスク要因の大きさの判断を間違わないために、
会社はどの様な点に注意すればよいのか」という疑問も当然生じてきます。
重要な点は幾つかありますが、この点については、次回に詳しく述べる事にしたいと思います。

分野: 中村裕昭教授 |スピーカー:

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