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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 医療再生 (財務戦略/村藤 功)

医療再生 (財務戦略/村藤 功)

10/02/26

■診療報酬の改定
2010年度の診療報酬改定が行われ、10年ぶりにプラス改定されました。
薬価は平均して5.75%下がっていますが、医療部分、
つまりお医者さんの技術料部分は1.55%のプラスとなっています。

プラス改定で決着した背景には、不足する病院の勤務医の確保や救急・産科などの、
医療提供体制を強化したいという厚生労働省の思惑があります。

また、病院勤務医に関して、彼らと開業医との収入格差が問題になっています。
長妻厚生労働大臣は、診療報酬の審議を行う中央社会保険医療協議会(中医協)に、
日本医師会(日医)枠が3人分あったものをゼロにして、
病院勤務医代表者を委員に加えることにしました。
これには、開業医優遇とされた従来の政策を病院重視に方針転換する狙いがあります。
今まで軽視されてきた病院勤務医の扱いを、まずは開業医と同様の扱いにするということでしょう。

特に、この診療報酬問題は事業仕分けでも大きく取り扱われていました。
開業医と比べると病院勤務医の負担が大きいということや、
整形外科や眼科は仕事内容の割には診療報酬が多く、
産婦人科や救急は激務であるにもかかわらず診療報酬が低いといった具合です。
この格差は診療報酬を調整することで解決が可能です。
その一方で、中医協からは「余計なこと言うな」という声も出ており、大騒ぎとなっていました。


■医師不足の解消
先ほども触れましたが、今回のプラス改定の背景には医師不足を解消しようという思いがあります。
現在、医学部を卒業した医師には実務研修が義務づけられています。
机上の勉強だけでは内科や外科で必要な技術を身に付けることはできません。
そのため、2004年に新人医師に2年間で内科、外科、小児科、産婦人科、
救急など複数の科を経験することが義務付けられました。
この制度導入前までは、新人医師の7割が大学病院の医局に入っており、
医局が医師の派遣先を決めていました。

ところが、新臨床研修制度の導入後は自分で研修する病院を選択していく医師が増え、
医局に入る新人医師の割合が、5割前後に減ってしまいました。
結果として、大学病院は人手不足に陥り、地方病院に送っていた派遣医師を引き上げてしまいました。
もちろん、魅力的な地方病院には研修医師がやって来ますが、
あまり何もしない病院には誰も研修にやってこないため、医師不足で騒いでいる地方病院もあります。
新人医師を上手に確保している病院は、新人医師が喜んでやって来るような、
魅力的な研修メニューを作成しています。

医師不足への対策としては、新人のお医者さんに、
人気の出るような仕組みを作るというのがまず一つ考えられます。

しかし、医師不足は大学病院の医局だけに原因がある問題ではありません。
もともと病院とは病気を治療するところです。
ところが日本では、高齢者の社会的入院によって、
療養病床が増加するという療養病床問題が発生しています。
このため病院のベッド数が多くなり、ベッド数当たりの医師・看護師の数が少なくなってしまいます。
これを受けて、療養病床を病院からなくして、介護施設を増やすという話も出ています。

また、救急医療の現場で救急患者に対応するお医者さんが、
大変な思いをして仕事をしているということもあります。
最近はテレビでもよく取り上げられていますが、医師の中には朝から晩まで働いて、
夜も救急医療で急患がどんどん運び込まれてくるため睡眠時間を確保できない人もいます。
徹夜明けの翌日も勤務して、夜はまた救急医療ということで、
2、3日連続して寝ずに働き、燃え尽きてしまう場合もあります。

これを「バーンアウト」といいますが、医師が燃え尽き呆然として、
何も考えられない状況になっているにも関わらず、
重症患者が次々に運ばれてくるということで、心配な状況であるといえます。

アメリカには1700人にのぼる夜勤専門医がいます。
夜だけ専門に働くという人がいれば、昼間に働いているお医者さんはゆっくり休めます。
これも医師不足を解消するための一つの方法だといえます。


■健康保険
健康保険も医療と大きく関わってきます。
健康保険はどこも全て赤字の状況ですが大きく言えば3種類に分けることが出来ます。

まず、大企業が運営する健康保険組合、
それから「協会けんぽ」と呼ばれる中小企業が加入している健康保険、
そして自営業者や退職した人が入る国民健康保険です。

もともと、協会けんぽは社会保険庁が運営していた政府管掌保健(政管健保)でした。
社会保険庁は2009年末に廃止されてしまいましたが、年金と健康保険を扱っていました。
健康保険の方は健康保険協会へ運営が移り協会けんぽとなり、
もう一方の年金は年金機構に運営主体が移りました。
先の大企業の健康保険組合は解散すると協会けんぽに移ってくることになります。

国民健康保険は、2007年度は3600億円の赤字でしたが、
2008年度には赤字幅が2400億円に減少しました。
高齢者の加入割合が低い大企業の健康保険組合や中小企業の協会けんぽから、
高齢者の加入割合が多い国民健康保険に支援する仕組みを作ったことが、
赤字幅減少に寄与していますが、このために3つの保険共に赤字という状況になっています。

また、2008年度から導入された後期高齢者医療制度は、
75歳以上を後期高齢者としたことで「75歳以上はいない方がいいのか」、
という高齢者からの反発を受けました。

そのため、厚生労働省は75歳で区切るのをやめて65歳以上をまとめて、
国民健康保険に加入させるというプランを立て、2013年度に新制度を創設しようと考えているようです。
昔は国民健康保険の加入者は自営業者の人たちがほとんどでしたが、
ここのところ景気後退で仕事を辞めた人が増えてきたために、
セーフティネットの役割も果たすようになってきています。

しかし、仕事をしてない人たちや低所得世帯の増加の影響を受けて、
国民健康保険の滞納率もどんどん増えてきています。

ここまで多くの項目を取り上げましたが、医療に関わる問題はまさに山積しているといえます。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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