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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 経済活動を支える海上輸送②(国際ロジスティックス・国際経営/星野 裕志)

経済活動を支える海上輸送②(国際ロジスティックス・国際経営/星野 裕志)

10/02/24

■ばら積み船について

昨日は、経済活動を支えるばら積み船についてご紹介し、
その運賃は船舶と貨物の需要と供給の関係で、
大きく変動することを説明しました。
経済新聞などでは、当たり前の用語として「ばら積み船」
という単語が使われていますが、あまりなじみのない言葉ですので、
ばら積み船について説明します。

ばら積み貨物船、英語ではバルカー(bulker)、
バルク・キャリア(bulk carrier)と呼ばれるこの種類の貨物船は、
梱包されていないばら積み貨物を船の倉庫である
船倉に収めて輸送することを目的としています。
梱包されていないというのは、コンテナに収められていない
ということです。例えば、鉄鉱石や穀物が船の中の倉庫に、
ざっと流し込まれたまま輸送されることをイメージしてください。
前回お話ししたように、世界の貨物船の内の
約3分の1がばら積み船だと言われています


■輸送貨物の内訳

輸送する貨物ですが、2007年の時点で世界の
海上貨物の荷動き量は、全体で74億トンでした。
そのうち約3分の1の23億トンが、
原油および石油製品といった液体貨物です。
残りの51億トンがドライバルクといわれる乾燥した貨物ですが、
その中で鉄鉱石、石炭、穀物をその輸送量の大きさから、
三大貨物と呼ばれています。
鉄鉱石や原料炭とも言われる石炭は製鉄業に不可欠であり、
一般炭とも原料炭ともいわれる石炭は火力発電に使われます。
また穀物とは、小麦、とうもろこし、大麦や大豆など、
食用あるいは飼料として国際間を輸送されます。

日本は今までずっと、世界最大の荷主国と言われてきました。
世界三大バルクカーゴの鉄鉱石、石炭、穀物の輸送について、
日本関連のシェアは、それぞれ16.6パーセント、23パーセント、
8.1パーセントであり、全体では世界の12.5パーセントを占めています。
日本のエネルギーの96パーセントが海外からの輸入であることや、
約4割といわれる食料自給率の低さを考えると、日本の産業も
生活も完全に海上輸送に依存していることになります。
海上輸送は、日本にとって非常に重要で、これが切られたら大変なことになる
という、ナショナル・セキュリティ(国家危機管理)の問題にもなりえます。


■中国の大量の海外輸送が与える影響

昨日は、輸送量と輸送距離を掛け合わせたトンマイル
という指標が使われることを説明しましたが、
日本が長く世界最大の荷主国といわれてきたのは、
経済活動を支えるべく、世界中から大量の貨物を輸入してきたからです。
それが、最近の中国の海外からの資源の大量輸送が、
船舶の需給関係に大きな影響を与えています。

今まで、日本の動きが運賃に大きく影響していましたが、
最近では、中国が海外から資源を大量輸送していて、
これが船舶の需給関係に大きく影響を与えています。
例えば、先程、鉄鉱石や石炭は鉄を作るのに必要だ
という話をしましたが、中国は今や世界最大の製鉄の生産国であり、
第2位は日本ですが、日本の生産量の7倍を中国が生産しています。
当然それだけの原料が必要になってきているわけです。
面白いことに、中国は、従来世界最大の石炭の生産国で、
自ら輸出をしていましたが、それが昨年大きく変わりました。

経済活動が活発になり、国内で使う分が足りないから
という理由が1つあって、もう1つの理由は世界の不況で、
むしろ海外で石炭を購入した方が中で、
国内で開発するよりも割安であるからというものです。
こういう背景があって、中国は、石炭において、今までの最大の
輸出国から最大の輸入国になってしまったわけです。
そこで、先程からお話をしている「ばら積み船」が
大量に必要になってきているのです。
つまり、これから中国が持続的に成長していけば、
ますます船舶が必要になってくるということです。

特に、中国と日本がかなりの量の鉄鉱石を必要としている
ということになると、鉄鉱石は、ブラジルやオーストラリアで多く産出され、
また、ヨーロッパや南アフリカでも産出しますが、場所が非常に遠いのです。
つまり、遠くて大量のものを運ぶ必要があるので、
余計に船舶の需要が出てくるのです。


■海運は市況産業

世界の貨物の輸送需要が拡大し、船舶の供給が
追いつかないと運賃が高騰することになりますし、
海運企業はさらなるビジネス・チャンスの拡大を目指して、
新しく船舶を建造することになります。
例えば、中国の鉄鋼の需要の話をしましたが、
2008年の中国の需要は、鉄の内需は4億4千トンといわれています。
それが、今年2010年には、5億5千トン、
わずか2年間で25%増加するといわれています。
まさに右肩上がりの急成長ですから、
船はどんどん必要になってくるということになります。
新造船が就航するころにさらに世界の経済成長が
持続している場合には、船舶の供給量の増加分は
旺盛な需要で吸収できることになります。

一方で、このような海運企業の投資行動はどこも同様ですから、
多くの場合には、船舶の供給量が実際に輸送に
必要な貨物の量を上回ることで需給バランスが逆転して、
運賃が大幅に下落することになります。
つまり、船舶を発注してから実際就航するまでには、
1年や1年半の時差が存在し、船会社はどこも同じように
ビジネス・チャンスと考えて、同じような投資行動をしてくるのですが、
発注した船舶が就航する頃には、実はそれほど経済状況は良くない
ということになると、運賃が大幅に下落するのです。
また、倒産する企業も出てきたりします。

リーマンショック以降の不景気の中でも、新興国を中心に
経済が上向いてきて、そこにビジネス・チャンスを見出している
船会社や鉄鋼関連は伸びています。
先進国は伸びてないけれども、BRICsを始め新興国が伸びている現状を
どう読んで、ビジネス・チャンスにいかすかが必要なのです。
海運はよく市況産業といわれますが、まさにマーケットとともに
動いている産業ではないかと思います。

分野: 星野裕志教授 |スピーカー:

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