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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 自動車業界の回復 (財務戦略/村藤 功)

自動車業界の回復 (財務戦略/村藤 功)

10/02/19

今日は、アメリカでも好転の兆しが出てきている、自動車業界の回復についてお話しします。


■GMの動向
2009年のアメリカ国内新車販売は前年比21.2%減の1043万台でした。
2007年まで1600万台は安定して売れていたので、わずか2年で、
日本の自動車市場分に相当する5、600万台が消えてしまったことになります。
とはいうものの、アメリカの車市場は2009年の第4四半期から持ち直し始めてきています。
この事業環境の改善をみて、ヨーロッパ市場の足がかりを失うわけにはいかないということで、
GMはオペルの55%をカナダのマグナとロシアのズベルバンクに、
売却する計画を2009年の11月に撤回しました。

景気好転を理由に約束を反故にしたGMに対して、
ドイツ政府やロシア政府、オペルの労働組合は大きく反発しています。
例えばドイツのメルケル首相は怒り心頭ですし、ブリューデレ独経済技術大臣は、
オペルへの15億ユーロのつなぎ融資の返済を求めています。
オペルの労働組合もストライキを起こす予定です。

これからGMが生き残っていくためには、GMにとっての、
ヨーロッパ市場の要であるオペルを失うわけにはいかないということなのでしょう。

GMは30億ユーロ(約4千億)を投じてオペルを再建する予定です。
また、アメリカの自動車メーカーは環境対応車にも力を注いでおり、
技術が向上していることがうかがえます。

ビック3の中で唯一、法的手続きを免れたフォードもヨーロッパから技術を導入し、
小型エンジンにターボチャージを付けて、低燃費かつパワーがあるというような車を製作しています。
かつては、すべて自力で開発すると言っていましたが、
それを翻してまで環境向けの自動車を作っているという状況です。


■日本の自動車市場
また、日本の国内販売に目を向けると、2009年の新車販売台数は、
461万台で非常に厳しい数字だったといえます。
31年ぶりに500万台を割り込み、2008年と比べて9.3%ダウンしています。

1位はトヨタでこれまでと変わっていませんが、
これまで5位だったホンダが2位に躍進し、3位にスズキが入っています。

トヨタは2009年に700万台の自動車を世界で販売していますが、
生産能力は1千万台位あるため、3割方は設備過剰気味だといえます。

トヨタは2009年3月期に戦後初めての赤字に陥りましたが、
2010年3月期も2000億位は連結で赤字が出そうな見通しです。

同社は、金融危機後の販売急減で大型投資案件を凍結していましたが、
アメリカのミシシッピ工場や中国の長春工場の建設を再開するということで、
投資活動を正常化させようというモードに入ってきています。


■スズキとVWの提携
新車販売台数で3位だったスズキは1981年からGMと提携関係にあり、
2000年には20%を出資してもらっていました。
GMが苦境にあっても、GMの保有していたスズキ株を、
後で余裕が出てきたらGMに買い戻して欲しいとお願いしながら、
自社株買いするなどして協力してきました。

ところが、GMの厳しい状況が長く続きそうだという見通しになり、
スズキは2009年12月にGMにこれまでお世話になりましたとご挨拶に行きました。

そして、GMと縁を切ったと思う間もなく、フォルクスワーゲン(VW)との提携を発表しました。
VWにGMから買った自社株19.9%を2200億円の、
第三者割当でそのままVWに引き受けてもらったという形です。

スズキとVWは両社ともに新興国市場に強みがあります。
現在、自動車販売が急成長している国は中国とインドです。
中国ではVWが、インドではスズキがそれぞれシェアナンバー1にあります。
スズキは1980年代からインドに進出しており、
マルチスズキという現地子会社がシェアの約半分を握っています。

中国とインドという一番の成長市場のトップ同士ということで、
この両者が手を組むと実質の世界ナンバー1に躍り出ることになります。
そういう意味では、注目の提携というふうにいえると思います。


■三菱自動車とiMiEV
では、その他の日本のメーカーの動向はどうでしょうか。
三菱自動車は、2000年にダイムラー・クライスラーの傘下に入りましたが、
わずか4年で提携関係をもう解消してしまいました。

三菱自動車はもともと三菱重工の自動車部門です。
三菱グループとしては「三菱」の名前が付いたものを潰すわけにはいかないということで、
これまで三菱グループが総出で三菱自動車を支えてきました。
そして、ようやく2009年12月にフランスのプジョー・シトロエン(PSA)が、
三菱自動車を引き受けることになりました。

フランスにはルノーとPSAの2つの自動車会社がありますが、
一方のルノーは日産を傘下に置いています。

今回、PSAは2、3000億円の第三者割当で三菱自動車の3割から5割を買収する見込みです。
三菱自動車は、増資で得た資金を主たる原資にして、東京三菱UFJや、
三菱グループ12社が保有する約4400億円の優先株を買い戻して消却する予定です。
三菱グループとしては三菱自動車をPSAに引き受けてもらうことで、
長年のトラブルをようやく解消できそうだといえます。

プジョーは三菱自動車の買収でフォードに次ぐ世界の6位に躍り出ます。
上からトヨタ、GM、フォルクスワーゲン、日産ルノー、フォードという順番ですが、
フォルクスワーゲンとスズキを合わせるとトヨタを抜いてしまうため、
上位の順番は提携次第でガラガラと変わってきます。

PSAの自動車販売台数は三菱自動車の約3倍はあるため、
普通ならば三菱自動車を引き受けそうにはありません。
実は、三菱自動車は世界初の量産電気自動車である、iMiEV(アイミーブ)を開発しています。

PSAはiMiEV(アイミーブ)をヨーロッパで販売したいということもあり、
三菱自動車と手を組んだということで、三菱グループにとってはラッキーだったといえます。
その三菱はiMiEV(アイミーブ)の量産体制に入るということで、
これから三菱自動車が生き残っていくには、この強みを生かすしかありません。
強みを生かしてPSAと三菱自動車の両者がご一緒した、ということでしょう。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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