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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 再生可能エネルギーとスマートグリッド(イノベーションマネジメント/朱頴)

再生可能エネルギーとスマートグリッド(イノベーションマネジメント/朱頴)

10/02/02

■再生可能エネルギーの導入

世界は今、電力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーを
大規模に導入する話題で盛り上がっている。
米国は2025年までに、全電力供給量の1/4を再生可能エネルギーに
切り替えとの目標を挙げており、欧州も2020年までに、
すべての電力消費量のうちの1/5を再生可能エネルギーで賄う計画である。
とくに、カリフォルニア州知事のアルノードシュワルツネッガー氏が
「あと10年で、再生可能エネルギーの導入量を
現在の2・5倍まで引き上げる」と宣言した。

温室効果ガス排出量の削減に向けて、世界各国で
再生可能エネルギーの導入計画が活発化している。
電力変動が大きい電力発電や太陽光発電の電力量が増えると、
電力系統の安定性が大きな課題となる。
例えば、風力や地熱でエネルギーをまかなうと、気候にもよって
安定的に供給できるかどうかという1つの技術的な問題もあると同時に、
インフラを整備しないといけないという問題も存在する状況だ。


■スマートグリッドとは

そこで注目されているのが、スマートグリッドである。
スマートグリッドというのは、発電所から送電網、変電網、
そして個別の需要側として、例えば、企業、工場、一般家庭にいたるまで、
通信IT技術を積極的に活用し、電力供給におけるエネルギー効率の
最適化を図ると同時に各種課題の解決を目指す電力網のことである。

そもそもこのスマートグリッドは出発点として、ブッシュ政権時代に成立した、
「エネルギー独自開発・確保法案」に由来する。
それにさらに肉付けをしたのが、オバマ政権になって
2009年に成立した「米国回復・再投資法案」である。
1つの目玉政策として、グリーンニューディールの一貫として、
アメリカはスマートグリッドを国家プロジェクトとして推し進めている。
78兆7000億円の予算のうち、
6兆1300億円がエネルギー分野に割り当てられた。
このうちの4500億円がスマートグリッドのための予算である。
こうした膨大な予算を背景に、市場規模予測も過熱化を増している。
米国の調査会社SBIは、米国スマートグリッドの市場規模を
2009年は6000億円程度、2014年までは
毎年1兆7000億円規模になると予測している。
全世界では、現在の7兆円から2014年までに
17兆1000億円になると予測。
シスコは2009年5月にスマートグリッド市場への参入を発表したが、
その際に今後5年間の市場規模を、通信の部分だけで
毎年2兆円、5年で10兆円と試算している。


■スマートグリッドの背景

電力市場の自由化を背景に、米国内の主要電力企業は
80社ほどあり、個々の売上規模は少ない、
激しい競争の下、米国の電力企業は投資体力が弱っている。
送配電設備が老朽化し、停電や無駄な発電が多発している。
電力需要が高まっているにもかかわらず、送電網の容量が不十分。
自然エネルギーによる発電量増加にも対応できない。
こうした中、電力利用者は自分の電気代や電力消費量が
わからないことが発生する。
わからないから、電力を過剰に消費し、送電網をさらに圧迫する。
こうした中、スマートグリッドはこれらの一気に解決する施策として期待されている。


■スマートメーター

導入にむけて、現在進んでいるのは、
コストが安くて住みやすい「スマートメーター」である。
すなわち、住宅にある電気やガスのメーターの情報を
ネットワーク経由で自動的に読み取る技術である。
各家庭での電力消費情報や時間によって変わる電気料金の情報を、
ネット経由で提供する電力会社も登場している。
スマートメーターによって、住宅と電力会社が直接つながるようになれば、
顧客に消費電力を明示することは電気利用抑制につながるだけではなく、
停電が起きた場合、その影響範囲を把握することも容易になる。

米国電力網の変革がスマートメーターの導入から始める理由は、
同手法が比較的低コストでしかも短期間に実現できるからであるが、
さらに、もう一つの導入の理由は、自動車の電動化の影響である。
米国政府は、プラグインハイブリッド車を2015年までに
100万台普及させる計画を打ち出している。
電動車両が大量に普及し、家庭などの電力網から
充電するようになった場合でも、電力網の安定化を図る必要がある。
この際に、充電の開始時刻などを需要側の負荷を制御する仕組みとして、
発電側でも消費側でもリアルタイムに電力を監視する
通信ネットワークの構築が必要とされる。
その役割の一部を、スマートメーターに担わせようとしている。


■日本におけるスマートグリッド

スマートメーターの導入が進められている米国に対して、
日本では蓄電池をまず導入する動きが出ている。
日本では米国とは違い、非常に安定した電力供給を
ずっと維持していて、電力を監視するセンサー網や
通信ネットワークを発電所から各配電まで、すでに整備済みである。
このため、電力事業者が、一般家庭などの上流にまで
立ち入って負荷を制御する取り組みは活発ではない。
電力会社単位の大掛かりな負荷制御ではなく、
電力事業者と異なる企業が、住宅やビル、工場、店舗など
建物単位でエネルギーの最適化を図る動きがでている。
電力会社でなくても、事業運営できるので、
住宅メーカーや建設会社、電機メーカーなどが市場参入を狙っている。


■新規参入の可能性

再生可能エネルギーを大量導入するために構築される次世代電力網。
その誕生は、エネルギー利用効率の最適化という以外にも、
新規参入のビジネスチャンスを創出してくれる可能性に期待できる。

たとえば、次世代電力網の到来によって、
家庭内の情報ネットワークが新に構築されることになる。
これまではパソコンや携帯電話などのデジタル家電機器が
中心の情報ネットワークだったが、スマートグリッドが
現実のものとなれば、電力の情報をやり取りするために、
電力を利用するすべての機器が情報ネットワークにつながることになる。
洗濯機や冷蔵庫といった白物家電も、例外ではない。
一般住宅の家電機器をはじめ、電力消費状況を
リアルタイムで把握し、ユーザーに利用状況を提示するなど、
従来の電力システムの延長線上の技術や製品だけではなく、
これまでない発想のシステムまで投入される可能性がある。
世界中のエレクトロニクス関連メーカーが
スマートグリッド市場に参入するのもこのビジネスシステムに
おける発想力の転換による結果ではないかと。
参入を表明するメーカーの分野は多岐にわたる。
米GEといった電力分野の大手メーカーに加え、
Googleなどインターネットの企業や、IBMなど
サーバーやシステム構築関連の企業も活発な動きをみせている。

分野: 朱穎准教授 |スピーカー:

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