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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > MITレポート (その6)(産学連携/高田仁)

MITレポート (その6)(産学連携/高田仁)

10/02/01

Sloanはちょうど学期の狭間で、キャンパス内も比較的静かです。
先週のシリコンバレー・ツアーの後に、サンディエゴに行き、
UCサンディエゴ校(UCSD)のRady School of Managementを訪問し、
同スクールの競争力や特徴点などについて調査を行ったので
その内容について報告したいと思います。
Radyを訪問したいと考えた理由ですが、
(1)新設である(2004年開校)、
(2)規模が小さい(1学年60名、フルタイム教員21名)、
(3)パートタイム・プログラムからスタートした、
(4)理系が強い総合大学のビジネス・スクールである、
(5)周辺地域が産業クラスター(ITやバイオ)の形成に熱心で
そこで活躍できる人材の輩出に力を入れている、
(6)西海岸で巨大都市(LA)から離れており
自然に囲まれた中規模都市に立地している、
といった理由で、九大/QBSの置かれた状況に類似しているためです。

ディーンのSullivan教授にいろいろと話をうかがったのですが、
冒頭私からの「Radyの特徴は何か?」という問いに対して、
「イノベーション創出がRadyのアイデンティティです。
UCSDは技術系(IT)やメディカル領域で
卓越した教育・研究実績を持っています。
また、周辺にはスクリプス研究所やソーク研究所など
著名な研究機関が多く立地しており、
それらの研究機関と連携してイノベーションを加速するために
Radyは重要な役割を果たしています。」と、
極めてフォーカスがはっきりした答えを返されました。
話を聞きながら、小さなベンチャー企業がターゲット市場や顧客を
クリアにフォーカスさせてスタートアップし、
段階的に成長しようとする姿が思い浮かびました。
サンディエゴ地域は、クアルコムをはじめとする情報通信と、
バイオメディカルの2大産業の集積が著しいのです。
また、地域を挙げて起業家輩出に熱心であり、
そのような新産業創出の担い手に対してビジネス教育を提供しているのです。
Sullivan教授が強調していたのは、
「ハイテク・ビジネスを成功させるには、
科学技術の言語を理解できる素地が必要だ」という点です。
従って、技術系人材にビジネス・マネジメント教育を施すことで、
ハイテク・ビジネスを担う“バイリンガル”の能力を
形成することを重視している。」という点です。

ちなみに、このSullivan教授は、直近では
ノースカロライナ州立大学ビジネス・スクール(Kenan-Flagler)のディーンをつとめ、
同スクールのランク・アップに大きく貢献した人物です。
ノースカロライナ州は大企業の研究所の集積で知られる
リサーチ・トライアングル・パークを要していますが、
同パークは、90年代に入って域外からの研究機関の誘致が
限界を見せ始めたため、より内発的な産業創出への転換を指向し、
起業家育成やベンチャー支援のプログラムを充実させる方向に舵を切ったのですが、
その中で、Sullivan教授が陣頭指揮をとったKenan-Flaglerは
大きな役割を果たしたのではないかと推察されます
(これについては、Kenan-Flaglerを訪問し確認してみる予定です)。
もともとSullivan教授は、90年代中盤までテキサス大学オースチン校に在籍し、
著名なテクノロジー&ビジネス・インキュベーター;IC2の創設に参画し、
オースチンの産業クラスター形成において中心的役割を果たした人物です。
サンディエゴ地域は、起業家育成とベンチャー創出による
内発的な産業活性化と産業クラスターの形成が求められており、
新設のRadyのディーンとしてSullivan教授を招聘した、という背景があります。

現在、Radyは地域イノベーションを加速するために、
少しづつ活動領域を広げようとしています。
例えば、周辺のバイオメディカル系の研究機関と連携して、
5,000sqfのインキュベーション施設を今年の9月に
オープンさせる計画を有しています。
この施設に入居する5〜10社(その母数は数百〜1千社)の
ベンチャー企業のビジネスプラン評価やそのブラッシュアップにおいて、
Radyの学生がビジネス・スクールの演習の一環として関わり、
大きな役割を果たすことが期待されています。
また、2Mドルのベンチャー・ファンドを創設したところであり
(http://theradyschool.ucsd.edu/invest/venture/)、
有望なプロジェクト/技術に対して1件あたり
75K〜150Kドルのシード・マネーを提供し、
商業化を後押しする活動を行います。
シード・マネーの提供は、既存のエンジェルやVCとシンジゲートを組んで行われ、
ファンド運営はRadyの学生を中心に行われることになっているので、
これもまた学生に生きた教育の場を提供するというスタイルです。
ポートフォリオ管理やデュー・デリジェンス等で
Radyの学生が大きな役割を果たすことが期待されています。

ところで、日本のビジネス・スクールにおける言語(英語)問題について
話題が及んだのですが、この点に関するSullivan教授の持論は極めてクリアでした。
それは、「ビジネス教育の言語は英語を中心とすべきです。
日本の企業も海外でビジネス展開する比率が高まっており、
基礎的なビジネス能力もさることながら、
十分な英語対応能力を有しているか否かが
人事上の大きな評価対象項目となります。
既に中国や韓国の主要大学のビジネス・スクールも
英語中心のカリキュラムを有し、グローバルに活躍できる人材を輩出しています。
自分が日本企業のCEOと会っても、
グローバルに活躍できる人材への高い需要を口にします。
日本企業が世界でリーダーシップを発揮するためには、
日本のビジネス・スクールにおける教育は今や英語を基本とすべきです。
この点は、決して妥協すべきではない。」ということでした。
Sullivan教授は日本企業の上層部ともしばしば意見交換を行っているようで、
そこで出される日本企業の上層部の要望を代弁しているという印象を受けました。

オースチンやリサーチ・トライアングルという地域は、
くしくも私が15年前に約2ヶ月に渡って全米を転々としながら
ハイテク産業集積の調査を行った地域です。
当時の様子を懐かしく思い出しながら、
シリコンバレー流の地域ダイナミズムの形成を目指して
発展を続けている地域の影にはSullivan教授のようなリーダーが
大きな役割を果たしているのだということを深く印象づけられました。

分野: 高田仁准教授 |スピーカー:

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