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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 航空業界のビジネス環境 1(国際経営・国際ロジスティクス/星野裕志)

航空業界のビジネス環境 1(国際経営・国際ロジスティクス/星野裕志)

10/01/19

■一見、不思議に見える航空業界

オープンスカイに基づく日米間の航空協定の締結、
関西圏や首都圏の空港のあり方やハブ空港の問題、
航空会社のアライアンス間の綱引き、日本航空の再建問題など、
ニュースで航空業界が頻繁に取り上げられています。
このように断片断片で報道されているのを聞くと、
航空業界はとても不思議なビジネス環境であり
競争環境であると思われませんか。
例えば、日本航空の救済に、デルタ航空やアメリカン航空といった
ライバルが手を差し伸べようとしていることを見ていると、
国際競争があるような・ないようなという点です。

もう少し具体的にお話しすると、アメリカの航空会社は、
日本航空と太平洋線で競合するライバルであり、
今後新しいオープンスカイの方針の下で
ますます競争が激化する可能性があります。
一方で、再建に協力するという救済策を提案しているわけであり、
競合と協調関係が同時に見られるわけです。
これを製造業などの企業に置き換えるとその違いは
わかりやすいかと思いますが、ある国の有力企業の経営が
不振になれば、外国企業がM&Aで買収するとか、
少なくもその市場に参入を図るということになります。
航空業界には、そのような動きがないのはなぜなのか、
航空業界のビジネス環境についてお話をしたいと思います。
先に結論を申し上げると「二国間協定」と
「5つの自由」という枠組みがキーワードになります。


■ナショナル・フラッグ・キャリア

航空会社の経営は、元来他の産業にはない様々な規制を受けています。
まず民間航空業界自体が第一次世界大戦後に発足し、
日本航空をはじめその多くが第二次世界大戦に設立された
1世紀の歴史もない比較的未成熟な産業であったということがあります。
またそのころに誕生した航空会社は、航空先進国のアメリカや
いくつかの例外を除いて、ヨーロッパやアジアなどの
ほとんどの航空会社は国営であり、一国を代表する翼として
ナショナル・フラッグ・キャリアとして位置づけられていたことがあります。

なぜナショナル・フラッグ・キャリアが設立されたのかについては、
従来の船に代わって人や郵便や貨物の輸送手段を
確保する必要があったこともそうですし、
外貨獲得の手段にも活用されたわけです。
大変な装置産業である航空会社の育成に当たっては、
国が積極的に関与する必要があったということもあり、
国策と密接に関わってくるということもあります。
例えば、航空会社が航空機を運航する路線の開設は、
常に自国と相手国の二国間の航空協定により決められます。
また相互にどの企業が指定航空会社として参入させるのか、
また自国から相手国の乗り入れ地点の空港や
使用する機材や輸送量といったことも、航空協定で
認められなくては事業ができないことになります。
つまり、ビジネスは全てこの2国間の政府の協定に
従わざるを得ないということが、まず大きな問題なのです。


■買収にさらされない理由

当初国営企業として設立されたナショナル・フラッグ・キャリアの多くは、
その後公営化されたり、完全な民営化を図るなど
様々な経営形態がとられていますが、今でも多くの国では
航空会社に対する外国企業の出資比率の上限が定められています。
その理由は、航空協定でも説明したとおり、国益に関わることや、
航空業自体がその国のナショナル・セキュリティに
深く関わっていることもあります。
例えば有事の際の自国民の保護や軍事物資の輸送などを考えると、
政府がコントロールできる企業が必要であることにもなります。

日本では、航空法で外国人が代表を務める法人、
外国人が役員の3分の1以上を占める法人、
外国人が議決権の3分の1以上を占める法人の
日本の航空会社への出資の規制が3分の1未満に規制されています。
同様に、アメリカでは外国企業が米航空会社の議決権株式を
25%以上保有することや、間接的に経営権を握ることを禁止しています。
それが、冒頭でお話したとおりアメリカの航空会社が、
日本航空の再建をサポートするという提案はあっても、
海外からの買収にさらされない理由です。


■「5つの自由」

次に、海外の航空会社がなぜ日本の市場に
参入してこないのかと言う点についてお話します。
航空会社のビジネスは1944年の11月から12月にかけて、
アメリカのシカゴで開催された「シカゴ会議」で
基本的な枠組みが作られました。
第二次世界大戦中であり、後の戦勝国それもアメリカの意向で、
民間航空のビジネス・ドメインが決定されたと言うことになります。

その基本的な枠組みとは、「5つの自由」と呼ばれるもので、
航空会社が航空機を運航できる範囲を示したものです。
第一番目が、他国の領空を通過する自由。
例えば、日本からヨーロッパにシベリア上空を
通過する権利と言うことになります。
第二番目が、技術着陸の自由。
最近は航空機の航続距離が伸びてあまりありませんが、
以前であれば日本とヨーロッパの間の運航で、途中にアンカレジで
燃料を補給する目的で着陸していましたがそれに該当します。
第三番目が、自国で積み込んだ旅客や貨物を相手国でおろす自由
アウトバウンドで輸送することになります。
第四番目が、相手国で積み込んだ旅客や貨物を自国でおろす自由
インバウンドで輸送する権利になります。第三の自由の反対です。
第五番目が、以遠権と呼ばれるもので、自国と相手国を経由して
第三国との間で、貨物や旅客を輸送する権利です。
ビヨンドライト(beyond right)と言われています。
例えば、成田からニューヨークを経由してブラジルの
リオデジャネイロへ、またその逆の輸送になります。

航空会社に許されている5つの自由を考えると、
たとえ競争力のある企業であっても、他国の国内間輸送は、
カボタージュ=内国間輸送の禁止で認められていませんし、
自国を経由しない三国間に路線を開設することはできないことになります。
これが、外国の航空会社が、日本の国内線に
参入できない理由ですし、ビジネスの範囲は
極めて限られていることになります。

分野: 星野裕志教授 |スピーカー:

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