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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > レバレッジについて(ファイナンシャルマネジメント/平松拓)

レバレッジについて(ファイナンシャルマネジメント/平松拓)

10/01/04

今日は、今回の金融危機の関連でも問題となった、
レバレッジということについてお話したいと思います。

レバレッジという言葉は、もともとテコを意味する言葉で、
小さな力で大きなものを動かすという意味合いがあります。
最近、若い人向けのビジネス書などにもよく用いられています。
その場合多くは、限られた時間を2倍、3倍に有効活用する、
あるいは人の力を巧みに活用して大きな効果を上げるなど
積極的な意味合いで用いられていることが多いようです。

財務の世界では、レバレッジというのは、
資産と株主資本(或いは自己資本)との比率のことです。
資本金や留保利益などからなる株主資本に加えて、
負債すなわち社債の発行とか銀行からの借り入れなどによって
株主資本の何倍かの資産に投資している状態をいいます。
例えば、レバレッジが2倍といったら、
株主資本の金額の2倍の資産を維持している状態です。
つまり株主資本とほぼ同額の負債を抱えて
資産に投資している状態のことです。
従って、3倍であれば負債金額が株主資本の倍ということになります。

それでは、財務で言うレバレッジは高い方がいいのか
それとも低い方がいいのでしょうか。

普通の営利企業の場合、第一の目的は利益を確保することですが、
株主資本で賄える資産で十分な利益が上げられるならば
借り入れをしてまで資産を拡大する必要はないかもしれません。
でも、そのようなケースはむしろ稀で、
目的とする金額の利益を上げるためには、
相応の規模の工場の設備や在庫、
あるいは売掛金などが必要で、
これらの資産をまかなうためには
株主資本だけでは足りないのが普通です。
その場合、企業は社債発行や銀行借り入れを行います。
つまり、レバレッジを高めて利益増を狙うわけです。
もちろん、債務を増やせば社債の利払いや
借入金の利息の形でコストも増えます。
しかしそれが利益に与えるマイナスの影響よりも
より大きな資産で収入を増やすことによる
プラスの影響が勝れば、全体の利益は増加します。
そのため企業は、マイナスよりもプラスの影響が
大きいと判断できる時には債務を増やして、
即ちレバレッジを高めて利益を増やそうとするわけです。
株主の立場から見ても、株式の数が変わらずに
利益額が増えることになれば、1株当たりの利益が増える
という点では好ましいことになります。

ではレバレッジは高い程良いかというと、
そういうわけにはいきません。
投資にはリスクが付き物ですが、
リスクの割に大きなリターンが期待できる
優良な投資案件には限りがあります。
また、レバレッジが高くなると、
投資によって期待通りのリターンが
得られなかった場合に生じる損失の金額も大きくなり、
それだけ倒産に至る確率、可能性も高まります。

企業に倒産されると、貸したお金も返ってこなくなるわけで、
貸し手はレバレッジの高い企業に対しては
金利を引き上げるのが普通です。
これは企業にとってコストの増加を意味し、
利益の減少、そして損失を出すリスクの増加につながります。
またその損失のリスクが高まればその企業の株式も売られ、
株主の期待も裏切ることになります。
従ってレバレッジを上げて利益増を狙うには、
おのずと限界があるわけです。

それでは、どの程度のレバレッジが企業にとっては適当なのでしょうか?
経済の構造や証券市場の発展度合い、
歴史的な経緯などもあって一概には言えません。
また、業種によっても大きな違いがあります。

従来日本ではレバレッジは上場会社の平均で見ると
欧米諸国の企業よりも高い水準にありましたが、
バブル崩壊以降急速に低下し、今では大きな差はなくなっています。

業種別でいうと、電力会社など収入の予測が比較的可能な業種では
レバレッジが高めでも相対的にリスクが少ないことがあります。
また銀行はレバレッジが非常に高いのが普通です。
これは、事業の性格からして預金という形で
債務を取り入れるということがありますし、
資産側では広く分散投資して流動性が
高い形になっているので、レバレッジが高くても
キャッシュフローが安定していることがあります。
但し、一旦危機の噂が流れたりすると、
銀行の場合負債の主体が短期の預金なので
一気に資金不足に陥る可能性もあります。
いわゆる、取り付け騒ぎと言われる状態です。
そのため、中央銀行による最後の貸し手機能といった
制度的な安全装置も用意されています。

今回の危機の関連では、欧米の投資銀行や銀行などの
金融機関が、その本体、或いはその子会社を使うなどして
サブプライムローンなどのハイリスクの貸付けや
そこから発生した証券化商品などに、
レバレッジを高めつつ多額の投資を行っていました。
そのことが事態を金融危機と言われるまでに
深刻化させる結果となりました。

分野: 平松拓教授 |スピーカー:

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