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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > MITレポート (その5)(産学連携/高田仁)

MITレポート (その5)(産学連携/高田仁)

10/01/27

年明けの1月3日(日)から、MIT Sloan E&I
(Entrepreneurship & innovation) トラックの
シリコンバレー・ツアーがスタートしました。
同トラックにエントリーしているSloanの学生が、
4日間に渡って朝から晩まで起業家を訪問し、
あるいはVCのスピーチを聴いて、シリコンバレー流の起業家や
投資家について学ぶというプログラムです。
毎年恒例のプログラムで、昨年の参加者は60名弱だったらしいのですが、
今年は100名近くの参加者がありました。
同行したE-センターのBill Aulet (Managing Director) によると、
SloanでMBA取得後に起業する卒業生のうち
シリコンバレーでの起業率が年々高まっているとのことであり、
直近の調査ではマサチューセッツ州内での起業率と
シリコンバレーでの起業率は共に28%です。
この現状に対してBillは、MITやStanford、UCバークレーの
ビジネス・スクールの学生が200人ほど集まった交流イベントの場で、
「西海岸vs東海岸といった安っぽい対立軸を煽るために
このイベントがあるわけではありません。
MITとStanfordのどちらが優れているかといった競争を
するためにここに来たわけではありません。
世界がまだ見たことがない革新的なイノベーションを起こすために、
君らがお互いに学び合い、協働するためにこの場があるんだ!」と
語りかけていた姿が印象的でした。

以下は、ベンチャー訪問やVCのスピーチの中で、
興味深かったものの紹介です。

■<Doug Leone (Sequoia Capital創設者)>
なぜ人は東海岸ではなくカリフォルニアに集まるのでしょうか?
気候のせいかもしれないし、他の要因もあるでしょう。
例えばシリコンバレーで仕事を得るとき、オファーレター(雇用契約書)は
たった1枚の紙切れで済むことが多いのですが、
東海岸はそうではありません。ここでは目的に対して
手段がシンプルなので、最短でゴールに到達できる可能性が高いのです。
・Sequoiaは、近年インドや中国での投資を重視しています。
理由は単純です。過去5年間に世界中で最も企業価値を
増大させた会社の多くが、インドや中国から出て来ているからです。
ビジネスの成長率が他の地域よりも圧倒的に高いので、
投資先としての魅力があります。
(→日本はこの全く逆です。Sequoiaのみならず、
今回スピーチを聴いたVCのスライドに1ヶ所たりとも
日本の国名が登場しなかったことは、
個人的には“残念”を通り越して“無念”な思いでした。)
若い人材の柔らかいアイデアが重要です。
Facebookのアイデアは30代の人間には思いつきません。
20代だから出来たことです。ここには若い人のアイデアを
おろそかにしない風土があり、これはイノベーションをおこす上でとても重要です。
自分が学んだ頃の80年代のSloanは、単に”Sloan“でした。
戦略やファイナンス、マーケティングなどを教わる中で、
MITコミュニティ全体を意識することが少なかったのです。
しかし今は、Sloan自らが”MIT Sloan”と称するようになりました。
ロゴ・マークもそうなっています。これは、SloanがMITコミュニティの
一員であることのメリット(科学技術とビジネスの融合)を認識し、
それをスクールのブランドとして外部に強く印象づけるようと
していることの現れだと思います。良いことです。
不景気はむしろ起業家を多く生み出します。
不景気は、何かを始めるには良い時です。
通常では得られない優れた人材も雇用しやすいし、
オフィスも安く借りられます。また、起業家にとって
重要な能力の一つに”Survivability”が挙げられますが、
不景気の時にビジネスを始めると、おのずと”Survivability”が強化され、
起業家がたくましくなります。
自分自身、歳を取ってようやくカオスを創出できるようになりました。
若い時の自分は、むしろ”コントロール・フリーク“でした。
でも、新しい価値を生み出そうとすると、いろんなものが混ざり合う場
(カオス)が不可欠です。異なる価値が出会って混ざり合う場を
積極的に形成することはイノベーションにとって極めて重要です。

■<Aaron Levie (Box.net創設者兼CEO)>
Box.netは、ネット上での企業のファイル保管/
交換のためのソフトを開発している会社で、
いわゆる”クラウド“分野に属します。
2004年の会社設立後、現在は従業員が65人にまで成長しました。
元々、USCのビジネス・スクール時代(2004年)に、
クラスメートとの間で頻繁なファイル交換が必要で、
そのための使い勝手の良いソフトの必要性を痛感していたのが
起業を思い立ったきっかけでした。
2005年に会社を設立した直後には10〜20社程度の
顧客企業しか獲得できませんでしたが、
徐々に知名度を上げていきました。
その年にエンジェルから350,000ドルの投資を受け、
それによって南カリフォルニアやノースカロライナに
バラバラにいた創業メンバーがシアトルに集まり、
本格的な会社経営を始めました。
2006年には大手VCのDFJから投資を受け、
製品開発を本格化しました。ただ、2007年は悩みが多かったのです。
どのような製品をどのような顧客に提供するか、
延々と議論を続けて市場調査にも相当な時間を費やしました。
その結果、当初個人や中小企業ユーザーが
100ドル程度しか払わないだろうと想定していましたが、
実は1,000ドル程度の支出が見込めることが判ってきたので、
それに合わせて製品スペックを変更しました。
現在のターゲット顧客は中小企業で、1社あたり
数百万円から数千万円を節約できるメリットを提供しています。
この領域であれば大手ソフトベンダーと競合しません。
ただ、Boxの将来計画としては、数年のうちに
大企業が押さえている市場に入り込んでシェアを
ひっくり返したいと考えています。
(→まさに、『イノベーションのジレンマ』に書かれていることが
この先2〜3年以内に起こるかもしれず、非常に興味深いです。)
起業し会社を成長させる過程で学んだことを整理してみると、
下記のことが挙げられます。
-Your customer will guide you to the promised land.
-Start your company with great people.
-Try and work with great investors who are patient.
-Learn how to focus as soon as possible.
-Execution is everything, ideas aren’t.
-Revenue is KING.
-Don’t waste time on the wrong stuff.
-Never stop being scrappy.
-Make sure to have a little fun along the way.

今回のシリコンバレー・ツアーで私自身が得たことは数多いのですが、
その中で最大の価値は、多くのSloanの学生と知り合いになり、
移動の車中(長い日は計4時間)や3食の食事、
夜のパーティー等で豊富な意見交換をすることが出来たことです。
出身国、性別、バックグラウンド、目標、・・・あらゆるものが
多様な彼らと濃密に接することを通じて、
世界をより俯瞰して見ることができた(ような気がします)。
また、彼らは世界的な経済危機など全くと言って良いほど動じていません。
多くの人が、ビジネス・スクールが提供する最大の価値は
同窓生の人脈だと述べていますが、今回の僅か数日間のツアー参加で、
その一端を身を以て体験し、いくつかの大切な人脈を
得ることが出来たのは得難い収穫でした。

分野: 高田仁准教授 |スピーカー:

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