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JAL再建 (財務戦略/村藤 功)

10/01/22

この放送を収録している1月15日時点では、まだJALは会社更正法適用を申請していません。
しかし、つい先日の1月8日にJALについてお話した時とは随分と事情が変わっています。
今回は、そのJAL再建について改めてお話いたします。


■会社更生法適用申請
JALは1月19日に更正法適用の申請を予定しています。
つい最近までは、JALの債務超過額は2、3000億円位だと言われていました。
しかし、企業再生支援機構は、実質債務超過額は9000億円に上ると計算しています。

また、株価も1年前には200円、1ヶ月前には100円だったものが、
見る見るうちに下落し、1週間前には80円だった株式はとうとう10円を切ってしまいました。
JALが更正法で減資してしまえば、株式は紙くずになってしまいます。
「そんな株式は保有していられない」ということで、株主が投げ売りしているという状況です。
とはいうものの、JALの株式を5円で買って8円で売れば儲かることは確かです。
そのため、大損している一般株主もいる一方で「大儲けしてやろう」という人たちによる、
マネーゲームの影響もあり、1日の売買高はかなりの出来高になっています。


■株主・利用者への影響
日航には38万人の株主がいるといわれています。

これらの株主のほとんどは個人株主ですが、日航株を保有している企業も少なくありません。
JALと取引関係にある企業、みずほ銀行や政策投資銀行、
飛行機をリースしている三井物産や三菱商事、双日が、
それぞれ100億から200億円の日航株を持っています。

株主は年に2回、株主優待券をもらえます。
この株主優待券を使うと航空券が半額で購入できるため、皆が株式を買っていました。
今回の流れで、株主は大きく損失を被りましたが、株主優待券は当面は使えることになるようです。

また、利用者からの苦情が相次いだことや全日空との競争もあり、マイレージはすべて保護されます。
とりあえず、飛行機を飛ばしてこれから何とかしようというところですから、
「マイレージは守っておかなければまずい」ということなのでしょう。


■新経営陣の顔ぶれ
この放送の時点では、JALは会社更正法の適用申請を行っている可能性が高いですが、
経営陣はどのように変わっていくのでしょうか。
西松社長は随分前から、適当なところで責任をとって辞任すると言っています。

後任として、行政刷新会議の議員だった京セラの会長の稲盛さんが会長(CEO)を引き受けました。
とりあえず稲盛さんの下で、日航グループの中からCOOを出すという方針です。
稲盛さんも航空業界とは別の業界の人ですから、
この業界のことを分かっている人をCOOとして選ぶということでしょうか。

稲盛さんも77歳と高齢ですが強烈な個性の持ち主です。
どれだけ稲盛さんが立て直せるか、非常に楽しみです。


■JALの財務状況
では、JALの財務の現状について、改めて確認しておきましょう。
冒頭で、JALの債務超過は9000億円に上ると説明しましたが、
2010年3月期には営業赤字が約2000億円に達するのではないかとみられています。

また、2010年3月期には1兆円1300億円の特別損失を計上し、
最終損失は1兆2300億円に膨らむ予定です。

この特別損失の額が非常に大きいため、お金を調達する必要が出てきています。
そこで誰がJALにお金を出すのかということが問題になります。
更正法適用前の2009年の11月にも、JALはつなぎ融資を受けています。

この時には、政策投資銀行が1000億円の融資契約(CL: コミットメントライン)を締結しました。
このCLに対しては、政府が事後的に保証する予定だといわれていました。
しかし、菅国家戦略担当大臣の反対で、
保証は第2次補正にも2010年度予算にも入れられませんでした。
そのため、保証を期待してお金を出した政策投資銀行は、
はしごを外された形になっています。

それが今年の1月になって1000億円では足りなくなり、
政策投資銀行のCLは2000億円に拡大されました。

この2000億円のCLは更生法適用後すぐに、
DIP(Debtor in possession)ファイナンスとしての2000億円の特別融資に切り替えられ、
共益債権として担保債権に優先して弁済を受けられることになります。

そして、これには再生機構から5割程度の保証が付けられるようです。
その他に企業再生支援機構からの出資が3000億円、融資が4000億円と、
合計7000億円のお金がつぎ込まれることになっています。
これはすべて国民の税金ですから、大変なことです。


■JAL再建案
企業再生支援機構としても税金を使うわけですから、しっかりとした再建案が必要になってきます。
この1月15日の時点で出ている再建案は当初の案と比べると、内容として厳しくなっています。

去年の9月頃に出された案は、人員削減も3年で7000人位の規模でした。
これがどんどんと増えてきて、3年で1万5000人削減(3人に1人)まで積み増しされました。

路線についても、国内外でこれまでは45から50路線を削減する予定としていましたが、
新たに26路線が追加され、合計して約80の路線が削減されることになりました。

これらに加えて、燃料コストの高い大型機を半減させて、
コストの安い中小機の導入を加速しようとしています。

これらの再建計画を、JALは民間銀行からお金を借りて着手しようとしています。
しかし、今回、民間銀行は、3500億円もの債権を放棄させられています。
もともと、民間銀行は法的整理による巨額の債権、
優先株等での損失を恐れ、私的整理を希望していました。

結果として、無理矢理に政府が更正法の申請に持って行ったということで、
民間銀行はお金の貸出について「3年は様子を見ます」と言っており消極的になっています。

民間銀行の協力無しでは、大型機からよりコストの安い中小機への移行はスムーズにいきません。
その辺が1つ心配なところです。


■OB年金問題
また、OBの問題もあります。
OBの年金削減問題で、現役職員の3分の2は同意しました。

当初は、OBがなかなか年金の削減に同意してくれないということで話題になりました。
しかし、更生手続きに入ると、年金債権が優先的な債権ではなく一般的な債権として扱われ、
年金が減額される可能性が出てきます。
また、年金基金を解散しても、OBの受取額は6割減額されてしまいます。
このあたりの事情が明らかになってきたため、結果的にOBの3分の2から合意を得ることができました。
OBとしても数字を比較すると、今回は同意せざるをえなかったということでしょうか。

再生機構というよりは、タスクフォースによる規定路線であった年金債務の圧縮ですが、
とにかくこれで積み立て不足3300億円を1000億円に減らすことができました。

この積み立て不足1000億円は5年かけて全額償却する予定です。
1000億円を5で割るわけですから、毎年200億円ずつを5年間経費として計上しなければなりません。
3年以内に黒字化をしていくというような話もありますが、
本当に黒字化を出来るかどうかはやってみなければ分かりません。

とにかく我々としては、注視するしかないといったところでしょうか。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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