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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > ビジネス構想力とグリーン成長:天津エコシティ(イノベーションマネジメント/朱穎)

ビジネス構想力とグリーン成長:天津エコシティ(イノベーションマネジメント/朱穎)

09/12/16


■天津エコシティと日本企業の新興国参入
今回は中国を含めた新興国に、
これから成長を求めて進出していくには、
何が鍵になるかというお話しをさせて頂きます。
昨年のリーマンショック以来、
アメリカ経済が大打撃を受けまして、
おそらく元の国力を取り戻すことは、
そう簡単ではないという見方が強くなっています。
そこで次世代成長の原動力として、
エマージング・マーケットとしての新興国と、
更にそれに伴うグリーン成長が注目されています。
今回はまず、天津エコシティを、
例としてご紹介したいと思います。

この天津エコシティとは、2007年の4月に、
中国政府とシンガポール政府から、
共同建設が提案されスタートしたプロジェクトです。
中国発の政府主導型環境都市計画で、
シンガポール資本も入っています。
この天津エコシティは、投資規模が、
大変巨大なものとなっておりまして、
その総額が2,500億元もあります。
これは日本円に換算しますと、
約3兆5千億円にまで上りまして、
2020年までに35万人が天津に、
移住する計画となっております。

マンションとオフィスビルは全て、
省エネ対応しておりまして、
交通の面においても電気自動車の導入率は、
90%以上を目指しているという話を聞いております。
更に電力の20%は太陽光、風力、
自然エネルギーで対応する予定となっています。
こうした大規模な投資が見込まれているプロジェクトは、
省エネ技術で世界の最先端を走っている日本にとって、
大変なビジネスチャンスになるのですが、
日本企業は出遅れています。

特に急成長が進んでいる新興国においては、
これまでの海外戦略とは違う対応が求められます。
要するに投資のタイミングと事業集約、
そして市場開拓のスピードが重要になってきます。
この天津エコシティは、中国政府にとって、
テストの一つなのです。
中国各地において、このような計画が、
これから進んでいくようです。
その数は20から30まで達する、
という見込みもあります。
これからこうしたプロジェクトに、
いかに参入していくのかが、先進国にとって、
最も重要になります。
この一番大きなプロジェクトに参入できた企業は、
そこで学んだ経験を生かして、
今後様々なプロジェクトに転用できるので、
ここには先行者優位があることになります。

このケースで、考えなければならないのは、
日本企業は、大変な技術力があるのですが、
海外に進出する際に難しい状況に、
なっているということです。
単に技術力だけではやはり物足りないのです。
そのため重要なことはビジネス構想力なのだと考えられます。


■日本企業が海外進出に遅れる理由
日本企業が欧米企業と比べて、
海外進出に遅れてしまうという理由が、
3つあるのではないかと思います。
まず、欧米勢は、官民一体のプロジェクトとして、
新興国に先行者優位を構築する企業行動をとっています。
対して日本は民間企業の自主性に任せて、
進出していくという事例が多いように感じます。
その背後には政府のバックアップが欧米に比べ、
少ないことがあります。
例えば、80年代の上海のフォルクスワーゲンが、
初進出した際、当時の西ドイツ政府から、
強力なバックアップを受けて、
中国自動車産業の合弁第一号となった経緯があります。

最近では、フランスのサルコジ大統領が、
ブラジルを訪問した時に、フランスの技術を、
一生懸命アピールしました。
このような、官民一体のプロジェクトとして、
新興国に進出する方法は、日本とは異なります。
そのため欧米企業は政府の支援を通じて、
進出しているように思います。

次に規格問題が重要になります。
環境技術はまだ標準化が進んでおらず、
地域と国によって規格がそれぞれ異なります。
そのため、いち早く標準化をとった企業は、
市場優位を維持できるということなのです。
欧米企業、特にヨーロッパの企業は、
早くから規格化の作業を進めています。
これは標準化の優位性があることが、
その理由の一つではないかと思います。

そして3つ目の問題は日本企業の、
高い技術をいかに新しい分野、
新しい市場へと展開していくのか、
というビジネス構想力が問われる時代に、
なってきているというものです。
大きなプロジェクトを運営していくには、
通常のプロジェクトチームの運営とは、
異なる能力を求められます。
しかしこれは経験から学ぶしかありません。
つまり経験の数を増やしていくしかない、
Learning by Doingの世界なのです。
これは学習効果によって良い循環を目指すものです。
まずプロジェクトに関わり、そこから学んで、
ビジネス構想力とビジネスの展開の方法を、
蓄積します。
その後で更にその蓄積を使って、
大きなプロジェクトに関わっていく、
というサイクルが望ましいのです。


■合成の優美
結局現状の問題は、プロジェクトに関わってないために、
このようなビジネス構想力と、
プロジェクトマネジメント能力が、
なかなか蓄積できない可能性があることです。
例えば経済学の世界では、「合成の誤謬」、
という論理があります。
これに対して、芸術の世界では「合成の優美」、
というものがあります。
すなわち、有名な画家が描いた絵を見ると、
個別のタッチを見ると必ずしも、
そう美しいとは思いませんが、大きな構図の中、
全体で見ると、とても美しいことがわかります。
このように芸術家には洞察力、構想力と、
更に調和性がとても大事になってくるということです。
これはビジネスの世界でも全く同じではないかと思います。
個別のタッチをいかにきれいに描くのか、
という作業が必要なのは言うまでもありません。
しかし大きなビジネスの構想力と提案力、
更にそれに伴う「合成の優美」をいかに作っていくのか、
これがまさに21世紀の最大の課題となる、
グリーン成長をいかに成し遂げていくのかに、
関わっているのではなかと思います。
単純にグリーン成長というだけではなく、
やはり物事を対極的・多面的に見ることが重要だと思います。

分野: 朱穎准教授 |スピーカー:

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