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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 基軸通貨問題 (ファイナンシャルマネジメント/平松 拓)

基軸通貨問題 (ファイナンシャルマネジメント/平松 拓)

09/12/15

昨日に続いて、中国がらみの通貨に関する話ですが、
今日は米ドルの基軸通貨問題についてお話します。

これは、中国の中央銀行である人民銀行の周総裁が、
ロンドンでのG20の首脳会合を前にした今年3月、
論文という形で現在の米ドルを基軸通貨とする
国際通貨体制の改革を訴えたということで
大きな問題として採りあげられたテーマです。

基軸通貨とは、国際的な取引のために用られる通貨、
すなわち国際通貨制度の下で各国の外貨準備や
国際間の貿易取引の決済、あるいは
その為替相場の計算単位などの
中心として用いられる通貨のことですで、
現在は圧倒的に米ドルがこれらの役割を果たしています。

現在の国際通貨制度の基は第二次世界大戦中の
ブレトン・ウッズ会議で決定され、
戦後体制として制度化されました。
当初、その中で基軸通貨と位置付けられた米ドルは、
金との交換が保証されており、
金を裏付けとする安定した価値と
金の量的な制約を克服するという両方の機能が
期待された制度でしたが、矛盾もはらんでいました。
その最たるものが、流動性のジレンマといわれるものです。
つまり国際取引を支える基軸通貨は
世界に潤沢に供給されなければなりませんが、
一方でそのために米国が国際収支の赤字を計上し続け
米ドルが世界に垂れ流されるようになると、
アメリカの金の保有量は限られていることから、
基軸通貨としての米ドルの信任が失われるというものです。

これが実際に1960年代には大きな問題となりました。
そのため基軸通貨を補充する目的で
IMFで国際準備通貨の創設が検討され、
1970年には主要国の通貨のバスケットを価値の基準とする
SDR(特別引出権)などといったものも創設されました。

これはIMF加盟各国に配分され、加盟国は
このSDRと引き換えに必要な通貨を
IMFを通じて借り出せるという制度です。
ところが結局アメリカは1971年に
米ドルと金との交換を停止してしまいました。
この結果、米ドルは金の裏付けがなくなった一方、
逆に赤字を垂れ流しにすることに対する
制約もなくなったわけです。
即ち、米ドルは当初の基軸通貨としての
制度設計からは変質をしたわけですが、
それでも実質的な基軸通貨として
現在まで機能しているのが現状です。

周総裁はその論文の中で、
今回の米国発の金融危機は一国の通貨が
国際基軸通貨として用いられているという
制度の弱点を露呈したものであり、従って、
SDRのような、国際機関の管理による
超国家主権的な国際準備通貨の創設および活用を提起しました。
論文の指摘自身は特に新しいものではありませんが、
世界最大の外貨準備保有国である中国の
中央銀行の総裁が論文の形で表明したこと、
それに米国の一極化に異を唱えるロシアや他の新興国も
同調の動きを見せたということもあって大きな関心を呼びました。

4月のG20では中国などの主張した国際機関、
IMFへの出資シェアの見直しやSDRの利用の促進
という問題は採りあげられましたが、
国際通貨体制のあり方の問題については
本格的な議論には発展せず、
方向性も出ないままに終わっています。
それだけこの問題は厄介な問題で、
本格的に論ずるには時期尚早、
解決は将来の展開に委ねるしかない
というのが現状かと思います。

この問題を考える上ではいくつかポイントがあります。
まず1つは、このまま経済の多極化が進んで
アメリカのスーパー・パワーがこれまでのような形では
維持されないということになっても、引き続き、
米ドルがグローバルな機軸通貨として
機能し続けるというは現実的かどうかというポイントがあります。
一方では多極化した世界で、国際機関による管理や、超国家的な
主観に基づく通貨を作るといっても、
WTOの交渉の停滞に見られるように、
実際そういった合意形成が可能なのか
という問題もあります。

更に、現在では米ドルは金との交換性が
なくなっているわけですから、
基軸通貨としての役割を担う
制度的な裏付けはないことになります。
つまり、制度的には米ドルが使われる
必然的な理由はないわけです。
それでも現実に米ドルが使われているのは、
それが非常に使い勝手が良いから受け入れられているので、
複雑なメカニズムに基づく通貨を作ったとしても
それでどこまで米ドルの代替が可能なのか
というポイントもあります。

こうしたことを考えると、現時点でこの問題に答えを
出すのは簡単でないことが分かるかと思います。

分野: 平松拓教授 |スピーカー:

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