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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 人民元相場問題(ファイナンシャルマネジメント/平松 拓)

人民元相場問題(ファイナンシャルマネジメント/平松 拓)

09/12/14

今日は人民元の為替相場の問題についてお話します。
為替相場といえば、円対ドルの相場は昔から大きな関心事ですが、
中国経済の拡大がわが国の金融経済危機後の回復に
重要な役割を果たしている今日、
中国の通貨「人民元」の為替相場も日本の企業にとって
重要な関心事であると言えます。

人民元の為替相場問題はひところ落ち着きを見せていましたが、
ここへ来て切り上げ問題が静かに再燃しています。
これを表す象徴的な出来事が、オバマ大統領の訪中時にありました。
オバマ大統領は胡錦濤主席との首脳会談の席上、
人民元相場の切り上げを促す発言をしたにも関わらず、
胡錦濤主席は丁重にそれを無視したと伝えられています。

この問題の背景には、アメリカにとっては
2国間の貿易が大幅な赤字になっている状況であるにも関らず、
中国が2008年7月、それまで3年間の継続的な
人民元の切り上げを止めてしまったことがあります。

中国の為替相場制度は、公式には11の主要取引通貨に対する
バスケット制ということになっています。
これは人民元の相場が中国の主要取引相手国の11通貨の加重平均をベース
として動くように当局がコントロールするというものです。
しかし、人民元相場の実際の動きを見ると、対米ドルの管理フロート制、
つまり基準となっているのは米ドルで、
当局が定めた対米ドルの相場の範囲に納まるよう、
人民元相場の動きを当局がコントロールしているような動き方をしています。

米国にとり対中貿易赤字は、2000年から対日貿易赤字を抜いて
最大となりましたが、割安な人民元の為替相場により
輸出に拍車をかけているというアメリカからの批判に対して
長らく中国が答えてこなかった経緯があります。
2005年になって、対アメリカだけではなく、
対世界で中国の貿易黒字が大幅に拡大したということもあって、
漸くこの年の7月から中国は
クローリング・ペックという形で調整を図り始めました。
クローリング・ペックというのは、
這うように徐々に調整していくという意味で、
2005年の7月からの3年間で対米ドルで約20%の切り上げを行ってきました。

しかし、2008年に入ると世界の金融市場の不安定化や
中国株式市場の大幅な下落があり、リーマンショックに先立つ昨年の7月には、
中国は方針を転換したと見られ、
人民元の相場はそれ以降対米ドル14.6近辺で落ち着き、
切り上げの動きは止まっています。

オバマ大統領の中国での発言はこうした状況を受けたものですが、
発言の背景には、これまでと違って米国の景気回復のための
エンジンとして、国内の消費にあまり期待できないことがあります。
アメリカの家計は当分の間、バブル期の
過剰消費のつけを払わなくてはならないので、
内需にはそれ程期待できないということです。
そのため、外需に少しでも貢献してもらって景気の回復を確かなものにしたい
そういう米国の切実な事情がその発言からうかがわれます。

胡錦濤主席にもオバマ大統領の要請に簡単に応じるわけにはいかない背景があります。
中国は大きな貿易黒字を計上しているとはいっても、
金融危機の影響で世界需要が大きく減退している中、
輸出はやはり大幅に縮小しています。
そうした中、政治的な安定性を維持するためにも、
8%の成長は是が非でも維持するという覚悟で対GDP比で
最大級の財政出動を行って需要喚起策をとっているところで、
外需の減退につながるような為替相場の調整に、
今簡単に応じるわけにはいかないということだと思われます。

為替相場の問題というのは非常に微妙な問題で、
或る通貨の相場水準に注目が集まると、それだけでも
思惑で資金移動が生じるということがあります。
更に、中国にとっては多少の切り上げに応じると
更なる切り上げ期待で投機資金の流入に拍車をかける事態となります。
中国は非常に固い為替管理を引いていますが、
それでも内外の資金の動きというのは
完全にコントロールできるわけではないのです。

そのため、中国としては、現状は米国の要求を聞き流す形で、
あえて憶測を呼ぶような反応を避けた方が得策という
判断になったのではないかと思われます。

今後を占うならば、その世界経済の回復の仕方次第にもよりますが、
中国の経済回復が継続し、また欧米各国の経済の回復によって、
再び貿易収支の不均衡が拡大していく状況であれば、
市場は再び人民元の切り上げ観測を強めるでしょう。
そうすれば米ドルの基軸通貨としての役割に疑問を呈し、
人民元の国際化に向けて為替管理を徐々にながら
緩和しつつある中国としては、
こうした動きを全く無視するわけにはいかないと思われます。
そこで再び中国は人民元相場の継続的な上昇に
踏み切ることになるのではないかと思いますが、
時期はもう少し先にはなるでしょう。

分野: 平松拓教授 |スピーカー:

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