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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > MITレポート (その3)((産学連携マネジメント/高田 仁)

MITレポート (その3)((産学連携マネジメント/高田 仁)

09/12/28

■Deshpande Center
今回は、MITの研究成果の商業化を後押しする、
Deshpande Center(デシュパンデ・センター)について紹介したいと思います。

このセンターは、ITベンチャーを設立し成功に導いた
Desh Deshpande氏の20Mドルの寄附を元に、
2002年にSchool of Engineeringを中心に設立されました。
(詳細情報; http://web.mit.edu/deshpandecenter/ を参照)
センターの主な活動は研究助成グラントの提供で、
「アイデア→発明」の段階を支援するIgnition Grants(上限50Kドル)と、
「発明→マーケット」の段階を支援するInnovation Grants(上限250Kドル)
の2種類があります。


■センターの活動
センターの活動コンセプトは、ズバリ“Select, Direct, & Connect”です。
つまり、社会普及が見込めそうな学内の技術シーズを選別し(=Select)、
上記のグラントに加えて
『カタリスト』と呼ばれる学外専門家の支援を提供することで適切なマーケットを見極め(=Direct)、
そこに製品やサービスを投入できるよう
外部のVCコミュニティと関係構築する(=Connect)、
というものです。

ここで重要なのは、センターは自らビジネス・プランの作成や
投資まで行うわけではない、という点です。
あくまでも技術の市場性を見極めて、
ビジネスを興したい起業家や投資家と結びつけるまでを支援する、
という明確な線引きがなされています。
この線引きは、大学の役割として理解しやすく、
同じ大学人としても共感が持てます。

センターは、以前もこのレポートで紹介した
I-Team(Innovation Team)という講義を
Sloan/Entrepreneurship Centerと共同提供していますが、
I-Teamで学生が行うのは、あくまでもMarket Strategyの立案、
つまり技術の潜在的可能性を分析し、
様々な市場での用途探索の中から最初にエントリーすべき最有望市場を特定し、
当該市場に対してどのように訴求すべきか、という推奨案を作成するもので、
その中には詳細な製造や販売、
あるいはファイナンスの計画までは含まれないことから、
ビジネス・プランの一歩手前までのものといえます。
つまり、I-Teamの演習で支援対象技術のMarket Strategyを描くことで、
その後の事業化や投資を促進する、というネライなのです。

また、グラント助成やI-Teamでの演習プロセスの全体を通じて、
学外専門家である『カタリスト』が様々な局面で協力しています。
ちなみに、これら『カタリスト』の多くはMITの卒業生でもあり、
協力を呼びかけることが、逆に、
卒業生ネットワークを維持発展させることにも一役買っています。

2002年のセンター設立以来、
学内の200名以上の研究者から延べ450以上の提案がなされ、
そこで80のプロジェクトに総額9Mドルのグラントが提供され、
そこから20社のベンチャーが生まれたそうで、
それらベンチャーが調達した資金総額は150Mドル、
雇用創出は200人以上に達するとのことだそうです。

ヒアリングを行ったProf. Cooneyによると、
「大学のアーリーな技術を対象としているので、
失敗に対して寛容であるべきで、むしろ失敗から学ぶことが重要である」
という考えで支援活動を行っており、
80のプロジェクトから20社が創出されているという確率は
「悪くない数字だ」という自己評価がされています。

この数字は高すぎても低すぎても意味がありません。
もし高すぎれば、センターが支援対象とした技術の多くが、
既にマーケットが認めるほど完成度が高いということを意味するので、
大学がわざわざグラントを提供する意味はないのです。
一方、成功確率が低すぎると、
それは「水や肥料をまいても一向に芽が出ない」ことを意味し、

もっと別なところに商業化のボトルネックがあることを意味します。
以前調査したフランス政府の中小ベンチャー向け支援ファンドも
同じような方針を有していましたが、
この種のアーリー・ステージのグラントは“ほどほど”の成功率が肝要で、
そこに公的性質の資金を投入する意義があるわけです。

ちなみに、研究者からのプロポーザルの評価は2段階で行われます。
まず、全3ページの簡易レポートが研究者から提出され、
それを約25名のパネル(大学の研究者や学外のビジネスマンなどから構成)
が数時間かけて議論し、より詳細に検討すべき案件を選別します。
この第1段階の評価は、年に2回ほど行われています。
その後、研究者が全10〜15ページのフル・レポートを作成・提出し、
それに対して専門家が少人数集められ、
研究者のプレゼンテーションを含めて突っ込んだ議論が行われ、
グラント提供の可否が判断されるそうです。

設立後7年を経過したDeshpande Centerですが、
Prof. Cooneyによると、今後の最大の課題は「活動の継続」、
つまり資金の継続と協力者(カタリスト)の継続だと言われています。
Deshpande氏からの寄附20Mを原資にスタートしたのですが、
継続のためには独自の資金集めが必要で、
MITの周辺コミュニティを始めとしてセンターの活動に理解を示す
個人や団体から資金が得られるかどうかが、
次のステージへの移行の試金石となっています。
同時に、無償の協力者であるカタリストが継続して
前向きに関わり続けてくれるかも活動の継続可否に大きく影響しそうです。


■科学技術費と大学の資金
日本の大学は『事業仕分け』問題で大騒ぎとなっていますが、
こちら(米国)の大学を見るにつけ、
社会の公器である大学の活動原資が“税金”という
特殊なフィルターを通った国家予算の配分に
大きく依存しすぎる日本の構造はどうも不健全なように思えてきます。
もっと、地域コミュニティや広く社会全体(個人/団体を問わず)がその意義を認め、
“国家予算の配分”という特殊なフィルターのみならず、
もっと直接的に大学の運営に参画する仕組み
(資金提供のみならず、様々な活動への手弁当での協力も含めて)
が、なぜ日本の場合は成り立ちにくくなってしまったのだろうかと思います。

Deshpande Centerの次のステージへの移行も、
そういった意味でも要注目です。

分野: 高田仁准教授 |スピーカー:

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