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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 失敗の分類 (社会心理学・組織心理学/藤村まこと)

失敗の分類 (社会心理学・組織心理学/藤村まこと)

09/11/25

心理学、特に認知心理学等の領域の中で、
失敗の研究というものが進められています。
身近なところでは交通事故、
もっと規模の大きいところでは医療や航空、
鉄道や原子力等の事故に関わりますので、
大きな損害をもたらす事故を防止するためにも
失敗の研究が進められています。

■失敗の2つの分類
まず、私たちが日常的にやってしまううっかりミス。
例えば、友達が待ち合わせに遅れてきたり、
自分が忘れ物をしてしまったりすることがありますね。
この失敗(エラー)を2つに大きく分類すると、
1つは「スリップ」と呼ばれています。
時間に間に合わせるつもりだったけれど
途中で寄り道して間に合わなくなったというように、
目標設定は間違っていないのですが、
やり損ねてしまったというように、行動上での失敗です。
もう1つは「ミステイク」と呼ばれるものですが、
そもそも待ち合わせ時間を間違って記憶していたとか、
持っていくべきものを間違っていたなど、
目的設定を間違ってしまったために生じる失敗です。
この場合、行動の失敗ではなく、またわざとでもありません。
わざと(故意)ではないけど生じてしまった失敗です。

しかし、失敗の中にはわざとやってしまう
違反というものも実は含まれてきます。
遅れていいと思ってしまうと、それはルール違反です。
意図的な失敗は、他の失敗とは異なるものとして分析がなされます。

■医療におけるヒューマンエラー
エラーも友達関係で生じるのであればまだよいのですが、
組織の中で、治療で提供すべき治療法や薬剤を、
うっかり間違ってしまった場合は
大変困ったことになります。

実際の医療事故も小さな失敗から生じていることがあります。
有名なところで、サクシゾンという抗炎症剤を投与すべきときに、
サクシンという本当は使ってはいけない筋弛緩剤を
投与してしまったというエラーがあります。
実はそういううっかりミスが原因として関与しています。
その背景をもとに、医師や看護師などの
ヒューマンエラーをどう扱うべきか、
医療裁判で医師や看護師の失敗を裁くことができるのだろうか、
ということが話題になっています。

10月に出版された翻訳本に
「ヒューマンエラーは裁けるか」という本があります。
この本では、例えば医療であれば医療を行う専門職と
被害を受ける患者さんたちの間に、
ディスコミュニケーションがあるので、
関係を見直すべきであるというメッセージが含まれています。
そして、ヒューマンエラーが事故に関連するといって
それを犯罪として扱うことは果たして良いのだろうかという
疑問を投げかけています。

事故の当事者を刑事罰に問うという医療事故の犯罪化は、
被害者にはわかりやすいのですが、
それでは、医療を提供する専門職側は防御的になってしまいます。
例えば、リスクの高い産婦人科あるいは小児科で、
医療不足が起きてしまっているのも、
裁判とか訴訟問題に対する医療者側の構えが影響していると私は考えます。

この本では、犯罪化あるいは司法へあまりにも傾倒するのは、
医療を受ける私たちにもあまり利益をもたらさないのではないか
ということが、医療だけでなく、航空、警察、
それにソーシャルワーカーの事例も挙げて述べてあるので、
是非関心のある方には見ていただきたいと思います。

シドニー デッカー(芳賀繁監訳)
ヒューマンエラーは裁けるか―安全で公正な文化を築くには
 東京大学出版会
 http://www.utp.or.jp/bd/978-4-13-053017-0.html

■事故調査委員会
最近、その問題を受けて国内でも、
厚生労働省も医療事故が起きたらすぐに警察に引き渡すのではなく、
第三者機関の事故調査機関を作り、
再発を防ぐために原因を調べるということを検討しています。
事故調査の原因追究のプロセスは
司法の責任追及とは異なるプロセスなので、
事故調査委員会を設立すべきという動きが数年前からあります。

病院内の調査機関で検討するという案、
あるいは第三者機関を外部に設置するという案が出ていますが、
まだ固まっていません。
私も現在情報を集めてみようとしているところですが、
国あるいは病院から独立した機関として
外部に調査委員会を設置した方が良いと思っています。

参考文献
■シドニー デッカー(芳賀繁 監訳) 2009 
ヒューマンエラーは裁けるか―安全で公正な文化を築くには
東京大学出版会
■芳賀繁 2009 絵でみる 失敗のしくみ 
日本能率協会マネジメントセンター
■ジェームズ リーズン(塩見・佐相・高野 監訳) 1999 
組織事故―起こるべくして起こる事故からの脱出 
日科技連出版社

分野: 藤村まこと講師 |スピーカー:

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