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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > アメリカ報告2・企業は変わるのか(経営学/久原 正治)

アメリカ報告2・企業は変わるのか(経営学/久原 正治)

09/09/22

■企業は変わったか

アメリカの人々の生活はあの不況でも、あまり変わっていませんでしたが、
では、企業はどうかということについてお話したいと思います。
経済危機が生じたことで、企業は従来の非常に短期の株主利益中心
という考え方を変えていっているのか、それともあまり変わっていないのか、
このことに非常に興味があり、今回はその辺を見てきました。


■ジャック・ウェルチの改心?

例えば、面白いことのひとつは、
ジャック・ウェルチの言動が大きく変わったことです。
彼は、GEのCEOを長い間つとめ、株主価値を高めていった功績で、
アメリカの経営者の代表と言われている人です。
彼は、今はもうGEは辞めていますが、
その彼が「株主価値なんていうのはもう馬鹿げたことだ」と言い始めました。

それまでの彼の考えと真逆に聞こえますが、
彼の論理によれば真逆ではないそうです。
「株主価値は、結果として会社が株主価値を増やすのがいいんだ
と言ってきただけで、それを目的とすべきであるとは全然言っていない。
目的はあくまでも企業の長期的な価値で、それは顧客の価値とか
あるいは従業員の価値が創造されるということが重要で、
その結果として株主価値が上がっていく。と以前から言っていた。」
と彼は言っていました。

しかし、彼の話は、経済界の人々が納得するような話ではありません。
ジャック・ウェルチは、まさに株主価値が大事だということをずっと言ってきた人で、
その考えが変わるということは、例えば、近代経済学を信じていた人が、
突然マルクスを信奉するよう変わったような話で、
皆びっくりしているという感じでした。
ジャック・ウェルチ本人は、全然変わっていないと言っていますが、
彼自身もちょっと今のままではまずかった、と考えたのではないかと思います。


■GEの新しい人材育成

シカゴ滞在時に、アメリカの大きな経営学会が開かれて、
そこには各企業の人材養成、研修の責任者が来ていたのですが、
先程のジャック・ウェルチがいたGEの研修責任者が
、面白いことを言っていました。
どういう面白いことを言ったかと言いますと、
「業績を上げるだけのような人材は要らない。GEが必要とするのは
業績プラス企業の文化や価値など、長期的な目的をちゃんと理解した人で、
その両方ができる人をGEでは評価して給料を上げて昇進させる。
逆に、業績だけ高い人は、これからGEではクビにする。」と言っていました。

これは大きな変化で、聞いていて非常に面白かったので、
発表が終わった後、個人的に彼に質問に行って色々聞いてみたところ、
彼が言うには、ジャック・ウェルチから
現在のイメルト(Jeffrey R. Immelt)というCEOに変わり、
GEは非常に長期的な価値を大事にするようになったそうです。
つまり会社自体が変わったそうです。
ジャック・ウェルチの時は、GEキャピタルという金融業が利益の中心でしたが、
こういう危機が起きたので本業に返って、従業員を大事にして、
お客さんを大事にすることから企業の長期的な価値が生まれてくる
という考えを明確に出すようになりました。
だから、今のGEでは、多少業績が低い人でも研修して、
その人の業績が高くなるようにしているそうです。
業績が低くても企業の価値とか文化を理解する人を入れて研修していく
という話は、何かかつての日本企業の話を聞いているような気分になりました。


■業績と価値追求のバランス

変わらないのは、例えば、金融分野などが、
懲りずに利益を短期的に追及しているところです。
なぜ、まだ短期的な利益を追えるかと言いますと、
今回の不況で、投資銀行などは半分位が潰れてしまい、
残ったところは競争相手が少なくなったことで、
利益がたくさん上がるようになりました。
そのような結果、一部の投資銀行は不況になる前よりも
利益が上がるようになったところもあるようです。
短期的な利益が得られた結果、以前のように、従
業員に高い報酬を払っていますし、色々規制ができて、
従業員の報酬を規制しようと言っていますが、いくらでも抜け道があるようです。
レストラン、金融機関など色々なところで競争が減ったために、
利益がもっと上がるようになり、それで利益追求をもっとしよう
という感じが明らかに見えているところもあります。
このように、変わったところもあれば、
変わってないところもあるという感じがします。

今後、政府は、規制の抜け穴を利用して、
お客さんを犠牲にして利益を上げるような非常に不当な金融機関を、
規制で抑えるようにはなります。
しかし、先ほど言いましたように、規制が強くなっても、
競争相手が減れば利益がもっと出るようになるから、
普通にしていても利益が出るのです。
そうすると、相変わらず利益第一という感じは抜けません。
ただ、規制が厳しくなると、消費者が騙されることは少なくなっていくし、
色々な情報がこれまで以上に公開されるようになっていくだろうと思います。
そこがアメリカの面白いところで、色々な危機が生じる度に
色んなことが変わっていきますが、そこでうまく変わって
世の中が良くなる方向と従来と変わらずもっと利益追求をする方向と、
必ず両方が出てくるようになっています。


■持続する組織の設計

今回の危機は、会社、大きな組織が経営を分権化して
色々な人に任せたきりで、周りで起こっている変化の全体を
しっかり見ていなかったことが問題でした。
例えば、天気予報を見て、その周囲のデータをとって調べて
これで大丈夫だと思っていたら、突然全然予測しなかったものに
ぶつかって沈んでしまったというような状態なので、官僚主義的に、
専門の人に任せて企業を運営するだけでは危ないということです。
今後、より長期的な変化の見通しができるような優れた経営者が、
何か危機的な状況が起きたら、柔軟に組織を変えていくように、
アメリカは変わっていくようです。
そうなると、いわゆる大企業は分解されて、
もう少し小さな企業がたくさんできるのではないかと思います。
つまり、身動きがしやすいような柔軟な企業になっていくと考えられます。
また、そういう柔軟な企業同士がどうやって協業連携するのか、
その時に、企業間の信頼関係などをうまく作っていくような方向が
出てくるのではないかと思います。
そうすると、全体として、単に個別企業の短期の業績より、
企業間の信頼や長期的な価値がより重視されていくようになります。
その結果、従来の規模だけ大きな大企業は駄目になっていくのではないかと思います。

分野: 久原正治教授 |スピーカー:

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