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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 日本のベンチャーキャピタルの最新事情(ベンチャー企業/五十嵐 伸吾)

日本のベンチャーキャピタルの最新事情(ベンチャー企業/五十嵐 伸吾)

09/08/12

■日本のベンチャーキャピタルの最新事情

日本のベンチャーキャピタル(VC)の最新事情をお話します。
前回はアメリカの最新事情をお話ししましたね。
手元に7月10日の新聞がありますが、
「ベンチャーキャピタル新規公開減で正念場」という記事が載っています。
何年も正念場というのが続いているような印象がありますが、
確かに、日本のキャピタルはしんどいようです。
その原因は以前にお話ししたように、
日本のVCとアメリカのVCとでは、やり方が違うからです。
アメリカのベンチャーキャピタルは、基本的に会社組織というよりは、
協同組合のような、4、5人のキャピタリストが運営しているような形です。
キャピタリストが、ファンドを集めて運用するという形が主です。
ところが、日本の大きなベンチャーキャピタルになると、
JAFCO(ジャフコ)やJAIC(ジャイク;日本アジア投資株式会社)など
何社かは株式公開をしています。
これらの会社は、株式公開をしているので、
資本市場から株式でお金を集めてそれを投資しているのです。
もちろん、今はファンド投資も行っています。

JAFCOは6月の株主総会では
前期の最終損益169億円の赤字に転落しました。
もう1つのJAICは、銀行団から借り入れのデフォルト
という猶予をお願いして再建中ということです。
ウェブで見ると、11箇所あったJAICの拠点を3箇所に集約する
というニュースが掲載されていました。


■日本のVCが株式会社である理由

私はいつも不思議に思うのですが、JAFCOもJAICも株式公開をしています。
しかも新入社員を採用して、自社でキャピタリストとして教育しています。
本当に「普通の会社」として運営されているように見えます。
アメリカではこんなことは絶対にありません。
株式を公開し何千人の社員を抱えていますが、
アメリカでは、このような会社をVCとは呼ばないと思うのです。
アメリカでは、大きめのキャピタルでも社員は数十人規模です。
その中でスタッフを除いたキャピタリストは10~20人位だと思いますよ。

日本の場合は、銀行系、証券会社系、専門会社系など
親会社がベンチャーキャピタルを設立しているケースが多いですね。
もともとの出が大企業ということもあり、
親会社と同じ会社組織にしてしまったようです。
これには、メリットもあるますが、デメリットもあります。

一方で、ずっと法律的にファンドの形式が認められていなかったことも
会社組織にした理由の一端があるかも知れません。
ここ最近ようやく法的にファンド組成が認められて、
ようやくファァンド投資が本格化してきたのが実態です。


■日本のVCの投資の仕方の問題

もう1つ問題がありました。
ベンチャーが起業後、株式公開に至るまでの期間の長さです。
1995年位までは、JASDAQが唯一のベンチャー向けの
証券市場であり、このJASDAQに公開するまでにようした時間は、
会社が設立してから大体15年から20年でした。
これはVCの責任ではありません。
しかし、VCが設立投資を行うと20年は寝かせておく必要が出てきます。
それでは、資金効率や投資効率が悪いですね。
ですので、レイターステージまで待って、
投資を行うというスタンスをとるしかありませんでした。

日本には200社とか300社といわれるだけの
ベンチャーキャピタルが存在しますが、
これまで大半は、投資は1度きりで追加投資はしない、
投資金額も1千万円から3千万円程度の少額です。
アメリカですと、キャピタルによっては一度に
10億円の投資をすることも普通ですが、
日本のベンチャーキャピタルは小口分散の投資で
リスクをヘッジできると信じていました。
それでなおレイターステージで株式公開が見えてきた会社にしか
投資をしてきていませんでしたから、技術を見ることや
経営能力を見ることは後回しになっていたようです。
そのようなこともあり、レイターで株式会社公開する直前に
株を持たせてもらい、1千万~3千万というお金を投資する。
言い換えると、極言ではありますが、ばら撒き式で
宝くじを買うようなやり方をしていたと言えるでしょう。
ですので、日本のベンチャーキャピタルの審査能力は
伸びなかったのだと思います。

1999年から2000年にかけて東証マザーズや
大証ヘラクレスといった新興企業を取り扱う
新しいマーケットが出来ました。
2007年にはJASDAQにも NEO(ネオ)という
マーケットが作られるわけですが、このような状況となって、
ようやく日本のVCもアメリカ的な方法をとることが可能となりました。
創業後4、5年で株式公開するという例も一般化しつつあり、
スタートアップ期からの出資が可能となってきました。
ところが、VCが懸命にスキルを磨いている段階で、
経済がクラッシュしました。
成果が出る前にベンチャールファンドの投資利回りが悪くなってしまいました。
非常に間の悪い時に経済危機が来たなというのが正直な感想です。


■今後の日本におけるVC

アメリカ型の模索したキャピタルは苦しんでいますが、
それ以上に、旧来型の株式公開をしている
キャピタルのダメージは大きいと思います。
ところで、JAFCOやJAICまたは、SMBC、NIFといった
大きなキャピタルからスピンオフをした小さなキャピタルがありますが、
すべてというよりまだら模様ではありますが、
この小さなキャピタルは良いところはものすごく良さそうです。
ですので、大きな会社は、大変革、大リストラが
必要で予断を許しませんが、独立系の小さなキャピタルは
したたかに立ち回っているようです。
むしろ将来的には、こちらが主流になっているのかも知れませんね。

アメリカでも盛んに環境系の投資があるようですが、
日本のベンチャーキャピタルでも環境ビジネスへの投資が
増えてきているようです。
ベンチャーキャピタルがクリーンテック、環境ビジネスに
出したいという理由は2つあります。
1つは、新しい産業が産まれる期待感がまずあります。
もう1つは、国が色々な政策を打ってきてくれているからです。
アメリカでもオバマが、グリーンニューディールとか言っていますし、
日本でも経済産業省が色んな施策を打つようです。
それが実は大きくて、技術はもともと完成していたところに、
国や機関が、支援をするということで、
マーケットが出来上がってくるのです。
マーケットが出来上がるということは企業が成長することですので、
投資のチャンスだと考えられています。
今後のべンチャー企業のねらい目としては、
環境に絡んだところを目指すというのも1つの方法として、あると思います。

分野: 五十嵐伸吾准教授 |スピーカー:

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