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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > アメリカのベンチャーキャピタルの最新事情(ベンチャー企業/五十嵐 伸吾)

アメリカのベンチャーキャピタルの最新事情(ベンチャー企業/五十嵐 伸吾)

09/08/11

■セコイア・キャピタルからの説教

今日は、シリコンバレーのベンチャーキャピタルの
最新事情についてお話します。
2週間前にアメリカからキャピタリストが来日し、
意見交換をしました。そのことをお話します。
シリコンバレーの状況は非常に悪くなっているようです。
昨年の10月には、一流VCのセコイア・キャピタルのCEOが、
投資先の会社の代表を皆集めて激を飛ばしたとのこと。

起業家に「頑張れ」とエールを送るどころか、悲観的な内容だったようです。
その証拠に、そのときのセコイアのプレゼンテーションの表紙は、
なんと墓石なんですね。良い時代は確かにあった。
しかし、今それは墓場に入っているという痛烈なメッセージなのです。
良い時代は、死んでしまったのだから、
君たち(起業家)、心を一から入れなおしなさい、
今まで経験しことのない未曾有の経済危機が来ているのだから、
今までと全く違うんだと、重ねて強調していたそうです。

★セコイアのプレゼンテーション資料(Slide share)
http://www.slideshare.net/eldon/sequoia-capital-on-startups-and-the-economic-downturn-presentation?type=powerpoint

プレゼンテーションでは、やらなければいけないことは何かを明示しています。
「段階的なコストセーブでは結局倒産してしまう。
あなたが会社に帰って、すぐやらなければいけないことは、
切れるもの全て切りなさい。
事業では、生き残れる可能性の高いものの1つだけに絞りなさい。
そして、とりあえず3~5年、今ある現金で
生き延びられるように急激な改革をやりなさい。
そうでなければ、最終的にはデフレスパイラルに陥り倒産してしまうよ。
だから、会社に帰ってすぐやることは、切れるものは即座に全部切りなさい。
とにかく生存できるだけの最低限のところで生き延びるだけ生き延びろ、
そこから先はわからかいけど、生き延びない限り次はない。」


■直接打撃を受けたのは、VCではなく機関投資家

以前にお話しましたが、ベンチャーキャピタル(VC)は
機関投資家からお金を集めて、それを運用しています。
今回の金融危機ではVCはサブプライムに投資していないので、
直接的な打撃は受けていません。
しかし、ベンチャーファンドの投資家である機関投資家は
軒並み投資をしていました。
だから大きな痛手をこうむり、中には評価額は
半分になったものを多いと聞きます。
機関投資家は、全てをキャッシュで持っているわけではありません。
様々な投資の形態で保有し、必要なときにキャッシュに変えて
他の運用形態に移行させています。
そういった投資がどんどん目減りするのと並行して
手持ちの流動性(キャッシュ)がなくなっていってしまったのです。
VC自体は、それほど困ってはいませんが、
機関投資家の方は困窮してしまったので
約束の資金をVCに出せなくなってしまいました。

ベンチャーファンドの仕組みでは、
100億ドルのファンドを組成するにしても、
一度に100億ドル出資するのではなく、100億ドルの出す
という約束(コミットメント)を結ぶのが通常です。
例えば今年は10億ドル、来年また10億ドルという風に
段階的に投資金額を積み上げる方式が一般的です。
ところが、コミットメントを結び3、4回に分割して
機関投資家が出資する手はずだったのですが
機関投資家側の資金ショートで後の方の回は
出せなくなるという状況で出てきています。

契約上は、出せなければ100億の内20億を出してきたとして、
次の20億が出せなければ、今まで出した分の分配までも
自分のところに返さなくてもいいということとなっています。

機関投資家としては非常に避けたい状況です。
そこで、VCに対して「悪いけど、コールするな(お金出せと言うな)。
コールされると、約束違反になるが、しなければ違反にはならないだろう。
どこのキャピタルも困っているんだ。
すべての機関投資家が同じような状況で、
キャピタルもどこも似たような状況だろう。だから、我慢してくれ。」
という機関投資家からの圧力があって、
VCは渋々そのような状況を受け入れざるを得ないのだそうです。


■不況の時に行うべきこと

つぎに話題を転じて、
世界同時危機以降、アメリカでの起業動向が
どうなっているかについてお話します。
すでにお話したように、VCは一応ファンドで持っていますが、
この先新しいファンドを組成できるか、分からなくなってきました。
既に投資している会社については、段階的に大きくなると考え、
追加投資が必要で、まずその資金を確保しておかなければなりません。
まず、VCがやったことは2つあります。
1つめは、投資先に対して投資を継続する会社と、
継続中止する会社の選別です。
結局、自分のVCが投資しても他のキャピタルが追随しないと、
ベンチャーは、次の段階まで成長できません。
そこで、選別を行い、成長が期待できる会社にのみ
投資する資金を確保することを狙ったのです。
2つめは、お金の出せない時というのは、内容の良いベンチャーが
安い株価で買える絶好の機会でもあります。
こんな時こそ、実は、VCにとっては絶好の機会です。
新規投資の対象先を懸命に探します。
キャピタル間の競争もそれほど激しくないのでその意味でも好機です。


■不況の時ほど、モチベーションが高い起業家

不況の時ほど、実力派のキャピタルが力を発揮するということもあり、
成長性の高いベンチャーにとっても良いVCと付き合う機会が多くなります。
但し、厳しく審査されることと、株価算定が低いということを
前提にする必要はありますが、ベンチャーにとってみれば、
これが一番のチャンスと言えるかも知れません。
このような状況でも、起業家の意欲は衰えていません。

投資企業の選別は厳しくなっていますので、
内容の良いベンチャーでないと
なかなかお金が集められないのは事実でしょう。
反対に、この状況で、VCからの投資は引く出せるのは、
ものすごくいい会社です。シリコンバレーには、
「逆にこういった機会だから、俺ぐらいの奴じゃないと
ベンチャーキャピタルから受けられない。
今が一番チャンスだ。」と言っている起業家もたくさんいました。


■SOX(ソックス)法の影響

日本とアメリカで、ベンチャーが置かれた状況で、
同じという意味では、IPOの件数が減っていることです。
むしろ、去年、一昨年と、アメリカの方が
実はIPOが少なかったのです。
多分数社しか出ていません。
簡単に言うと、日本もアメリカもSOX(ソックス)法がスタートしてから、
株式公開することにより、内部統制のための維持費用が
多額にかかることになるので、最初から、あまりIPOを狙わないように、
戦略を変えてきているからです。
IPOではなく、M&Aを狙うような戦略にかわりつつあります。


■2009年後半の動きについて

ベンチャーキャピタルも、資金効率のいいものに
投資したいと思っています。
長期で持っていかなければならないとか、
多額のお金をかけなければいけないというようなものは、
少し出し辛くなってきているのは事実です。
だから、バイオなどには、ほとんど出していません。
投資効率(Investment Efficiency)がいいものを選ぶとすると、
ITが一番いいのですが、最近アメリカでは、
クラウド コンピューティング(crowd computing)の力で、
めちゃくちゃ企業コストが安くなってきていて、
キャピタルからお金をもらわなくてもいいや、
という風になっているのが、むしろキャピタルの悩みだそうです。

分野: 五十嵐伸吾准教授 |スピーカー:

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