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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 食品M&Aとキリンサントリー統合 (財務戦略/村藤 功)

食品M&Aとキリンサントリー統合 (財務戦略/村藤 功)

09/08/28

最近話題になったキリンとサントリーの経営統合の動きを中心に、
食品業界のM&Aについて今回はお話しします。


■M&Aの背景
人口が減少し、少子高齢化する日本では食品市場がいずれ縮小し、
売り上げが落ち込むとみられています。
このような状況の中で、
販売先の小売業界はセブン&アイとイオンを中心に再編が進み、
価格決定権はメーカーから小売に移りつつあります。

例えば、2008年秋には原材料の高騰から、
清涼飲料を値上げしようとした企業もありましたが、
景気悪化や小売の反対で断念したということがありました。

こうなってくると、メーカーは売上げが縮小する中で値上げも出来ず、
いくら作っても儲からないということになってしまいます。

「これではやっていけない」ということで、
国内の食品業界ではM&Aを含めて事業を拡大し、
アジアでトップを目指そうという動きがあります。


■キリンとサントリーの海外展開
さて、最近日本で食品最大手のキリンと2位のサントリーが、
経営統合交渉を進めていることが明らかになりました。

キリンとサントリーが統合すれば、国内では、
ビールでシェア37.8%のアサヒビールを抜いて、
シェア49.6%でトップになります。
清涼飲料でも、現在トップの日本コカ・コーラのシェア、
29.4%を抜いてシェア31.4%でトップに立ちます。

また、売上は3兆8200億円になり、
コカ・コーラやビール業界トップのアンホイザー・ブッシュ・インベブを抜いて、
ネスレ、ユニリーバ、ペプシコに次ぐ世界4位に浮上します。

このキリンとサントリー、二社の経営統合は、
アジアで一番を取りに行く姿勢を明確に打ち出したといえます。

これまでにもキリンは、海外で事業展開してきました。
オーストラリアではビール2位のライオンネイサンを子会社化して保有しています。
また、2007年にオーストラリア乳業最大手のナショナルフーズを、
2008年には2位のデイリーファーマーズを買収し、
フィリピンのビール最大手サンミゲールも傘下に納めています。

オーストラリアのコカ・コーラ・アマティルにも、
買収を持ちかけましたが、
アトランタのコカ・コーラ本社の抵抗を受け、
こちらの方は途中で断念しました。

一方のサントリーも、シンガポールに、
セレボス・パシフィックという食品会社を保有していますし、
上海ビール事業では大成功を収めています。


■国内市場に与える影響
キリンとサントリーの統合は競合する飲料メーカーにとっては、
脅威となります。
例えば、アサヒビールです。
アサヒは2008年までビール売上げで、
8年連続首位を守ってきましたが、
統合したキリンとサントリーは売り上げで2.6倍にも上ります。

サッポロとアサヒはもともと戦前の大日本麦酒から分かれて出た兄弟会社ですから、
サッポロと統合して対抗する手があるようにみえます。
確かにサッポロと統合すればビールのシェアはあがりますが、
ビール業界は国内に2割の余剰設備を抱えるといわれています。

むしろ総合食品メーカーへの脱皮に重点を置いて、
M&Aを模索する可能性が高いとも考えられます。


■企業風土の違い
では、二社の社風にはどのような特徴があるのでしょうか。

サントリーは非上場企業です。
そのため、短期的な収益に左右されずに経営を行うことが出来ます。
例えば、上場企業では考えられませんが、
45年間赤字でもビール事業を継続してきました。
このビール事業も、去年位からプレミアムモルツが爆発的に売れ出し、
ようやく黒字に転換しました。

従来、サントリーはビールの販売力が弱いこともあり、
開業資金の補助など取引先には手厚くしてきました。

対するキリンは日本を代表する上場企業ということで、
大会社的な企業文化を持っています。

そのため、キリンと一緒になると、
「キリンみたいに冷たくなってしまうのではないか」という話が一部では出ています。

ただ、今回どちらが経営統合後にリーダーシップを握るのかは、
いま一つ明らかではありません。

キリンは食品最大手ですが、株主は分散しています。
一方、国内食品2位のサントリーは、サントリーホールディングスの株式の89.3%を、
創業ファミリーの資産管理会社である寿不動産が保有しています。

通常、大きい会社とそれより小さい会社が合併すると、
主導権は大きい会社に渡ります。
ですから、キリンが通常であれば主導権を取るという話になりそうですが、
株式の保有比率をみると寿不動産が筆頭株主になる可能性が高いといえます。

また、名称の問題もあります。
両社の抱えるラガーや一番絞り、プレミアムモルツ、オールド、リザーブ、
といったブランド名は変えようがないため、存続すると思われます。
しかし、社名は一つしか決められません。
耳なじみのない名前を突然付けられても困惑してしまいます。


■増加する食品業界のM&A
人口減少・少子高齢化を背景に国内食品市場の縮小傾向が続く中で、
冷凍食品は数少ない成長領域です。

このような中で、JTと日清は2007年11月に、
冷凍食品の加ト吉を共同で買収しようと計画しました。

JTはタバコ事業がこれから縮小するかもしれないということで、
食品事業を第2の柱に育てたいと考えました。
また、日清食品も食品市場が飽和しつつある中で、
加ト吉の冷蔵・冷凍麺技術を取り入れて事業拡大に繋げたいと考えました。

しかし、JTの起こした中国餃子の問題で、この買収計画は白紙撤回されました。

アメリカにもたばこ会社が食品会社を買収した話があります。

有名なタバコブランドのフィリップモリスを擁するアルトリアグループは、
1985年にゼネラルフーズ、1988年にクラフトフーズを買収し、
1995年にこれを統合してアメリカ最大の食品メーカー「クラフトフーズ」を誕生させました。

しかし、ウォルマートを筆頭とする流通大手の値下げ圧力でクラフトは業績が悪化し、
2007年の春にアルトリアからスピン・オフ、
つまり食品事業がタバコ事業から切り離されることになりました。

JTが多角化で食品事業に進出するにしても、
イオンやセブンイレブンといった小売業界から、
大変な価格引き下げ圧力を受けるかもしれません。

その結果として、事業の収益性が保てなくなった時に、
JTが食品事業を手放してしまうのではないか、その点がやや気がかりです。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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