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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > グローバル市場へのアプローチ②(国際経営・国際ロジスティクス/星野 裕志)

グローバル市場へのアプローチ②(国際経営・国際ロジスティクス/星野 裕志)

09/07/30

■マルチ・ドメスティック戦略

多国籍企業がグローバル市場にアプローチする際に、
単純化すると大きく二つの方法があります。
ひとつは、世界を単一の市場ととらえながら、
世界にある共通の要因を重視しつつ
標準化された製品を効率的に供給するグローバル戦略です。
もうひとつは、各国ごとにある異なるニーズや違いを重視しながら、
現地適応をすすめつつ競争優位性の構築を目指す
マルチ・ドメスティックという戦略です。

例えば、自動車メーカーでも、
一時世界戦略車やアジア戦略車と言われる
標準化したモデルを生産し供給する
というグローバル戦略がとられましたが、
今はやはりそれぞれの市場の嗜好やニーズに即した
モデルの供給に転換しています。

車の利用される環境だけを見てみても、
道路の左右のどちら側を運転するのか、
まだまだ未発達の道路の多い開発途上国や
整備された道路やフリー・ウエー主体の先進国の道路なのか、
路面は土、石畳み、アスファルトなどのどのような形状なのか、
気温や天候などの条件も異なります。
また平均的な利用が、何人がどのような用途で
どのくらいの距離と耐用年数を考えるのかによっても、
大きな違いがあるわけで、標準的なモデルが必ずしも
誰にも求められるモデルにはならないのかもしれません。
つまり標準化戦略が、すべての市場に
受け入れられるわけではないという難しさがあります。


■二者択一ではない戦略

ただ一方で、それぞれの国や地域で
適応化に基づくマルチ・ドメスティック戦略が行き過ぎると、
メーカーにとっては特定の市場だけで
利用されるモデルが世界に溢れることになり、
効率性の観点からも経営資源の配分でも、
大きなロスにもつながることになります。

もちろん企業が、
標準化を主体とするグローバル戦略をとるのか、
現地適応度を高めたマルチ・ドメスティック戦略をとるのかは
二者択一ではありませんし、
適切なバランスを見出す必要があるといえます。
それには、企業の持つ強みや弱点などの
競争力によっても違いますし、競合者の動向、
製品の特性、市場の規模などの多くの判断要因があります。


■セミ・グローバリゼーション

経済学者の見解として、昨日ご紹介した
セオドア・レビット(Theodore Levitt)は、
世界標準化の方向に収束していると、80年代に提唱しました。
また、同じようにフリードマンは、世界は丸くなっている、
フラット化しているというな言い方をしています。
それに対して、今年の4月末に文芸春秋から出版された
『コークの味は国ごとに違うべきか』という
面白いタイトルの書籍があります。
書いたのはハーバード・ビジネス・スクールの
パンガジ・ゲマワットという経営学者ですが、
昨日紹介した同じハーバードの先輩である
セオドア・レビットの20数年前の意見を完全に否定しながら、
「セミ・グローバリゼーション」という考え方を提示しています。

この本の中でセミ・グローバリゼーションは、
10分の1グローバリゼーションという言い方がされていますが、
多くの国では、総固定資産に占める海外直接投資は、
1割程度にすぎないという事実から、
世界のビジネスのほとんどの部分はいまだに
国内のドメスティックなビジネスであり、
ボーダーレスの世界、フラット化する世界に
疑問を投げかけています。
また多国籍企業が海外の市場に
アプローチをする際の文化的、制度的、地理的、
経済的な隔たりの大きさを示唆されています。

例えば、この本の中で挙げられている1つの例として、
ウォルマートという世界で最も売上げの大きな巨大小売企業があり、
日本を含め世界の様々な国に進出しますが、
結局利益をあげているのは、カナダ、メキシコ、
英国、プエルトリコの4カ国しかないそうです。
日本のウォルマートは、西友への出資や子会社化と
日本への浸透を試みていますが、
なかなかうまくはいかないようです。
すでに、韓国、インドネシア、ドイツなどの市場から
次々と撤退しています。
成功している4カ国、カナダ、メキシコ、英国、プエルトリコは、
アメリカと同じ英語が通じる国であり、近隣であり、
メキシコは、NAFTA(北米自由貿易協定)に加盟する北米の国であり、
プエルトリコというのはアメリカの準州であることから、
すべて本国と類似性の高い市場といえます。
結局、そういう同質性のところでしか
成功していないことが示しています。

グローバルな規模でのビジネスを志向する企業にとっては、
グローバル戦略かマルチ・ドメスティック戦略の
いずれかの二者択一ではなく、
両者のバランスであることを先ほども説明しましたが、
新規市場の開拓においては
非常に難しい見極めが必要ということになります。

分野: 星野裕志教授 |スピーカー:

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