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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > クライスラーの期限とGM(財務戦略/村藤 功)

クライスラーの期限とGM(財務戦略/村藤 功)

09/06/05

■クライスラー破綻
今回は、またアメリカの自動車業界のお話です。
最近は流動的に、様々なことが起こっています。
まず、4月の末にクライスラーが破産法を申請、適用したお話から、
進めていきましょう。
3月末に、クライスラーと、GMをどうするかという話になりました。
この二つの企業に与えられた再建計画の提出までの期限日数は、
少し違います。
クライスラーには30日、GMには60日を与えて、その間に、
考えて下さいということでした。
クライスラーは、一社だけでは再建できそうにないので、
イタリアのフィアットと提携して何とかして下さいと頼みました。
しかし、その期限が4月の終わりに来てしまい、労働組合はともかく、
一部債権者は最後の最後で合意できませんでした。
そのためチャプターイレブンという、連邦破産法11条を、
適用することになりました。
つまり、破綻し、再生手続きに移行したということです。

チャプターイレブンを適用した時には、あらかじめ再建計画の中身は、
大体決めていました。
10年ほど前に、世紀の提携と言われたドイツのダイムラーが、
まず20億ドルほどの債権と19%の株式を放棄することになり、
最も大きな損失を被ってしまいました。
またダイムラーから株式を買っているサーベラスは、
株を買っただけでなくて、お金も融資したりしていました。
そのためサーベラスも20億ドルの債権や出資株式を、
放棄することになってしまい、ダイムラーとサーベラスが、
それぞれ数千億円の損害を出すことになってしまいました。

クライスラーのコントロールに関しては、実はUAW、
アメリカの自動車労働組合が55%の株式を持って行うことになりそうです。
またアメリカの財務省が8%、カナダの政府が2%の株式を保有します。
提携を進めていたフィアットに関してですが、当初アメリカ政府は、
フィアットと合意できなければ、法的手続きを進めると言っていました。
しかし途中で路線を変更して、法的手続きに入ってから、
フィアットと提携しなさい、という話に変更され、フィアットも、
法的手続きの中で合意することにしたということです。


■フィアットの状況と戦略
しかし、フィアットの経営状態が大丈夫かどうかは、
不透明です。
フィアットはスズキに次ぐ、世界のまだ10番目の規模なのです。
フィアットは約200万台しか、車を生産しておらず、生き残りのためには、
600万台ほどの生産能力がどうも必要だと判断しました。
600万台というと、フォルクスワーゲンの生産規模です。
現在のトップはトヨタ、2番手がGM、3番手がフォルクスワーゲンという状況で、
フォルクスワーゲンが約600万台生産しています。
フィアットは今後の理想として、自動車業界のウォルマートになりたい、
といつも言っています。自動車業界で安く沢山売るビジネスを行うのが、
フィアットの夢なのです。
現状の200万台の生産では、それは夢のまた夢です。
そのためクライスラーの買収に乗り出したのです。
さらにクライスラーだけでなく、ドイツでフォルクスワーゲンと、
競争できるような会社であるオペルも買収しようとしています。
フィアットが、クライスラーだけを手に入れると400万台の生産となりますが、
オペルも手に入れると、600万台となり、フォルクスワーゲンに、
かなり近くなります。
そのため是非、オペルを獲得したいと言っています。

この買収には、それなりのリスクがあると思われます。
フィアットは2009年の欧州販売が2割落ち、第一四半期の赤字は、
4億1100万ユーロ(約530億円)ですし、格付けもジャンクボンド、
BB+(プラス)という、買っていいのか心配なランクです。
アメリカとしては、どこかの自動車会社にクライスラーを、
引き受けて欲しいのですが、フィアットで大丈夫なのか、
と疑問も持っています。
しかし、他に引き受ける先がないため仕方ないと考えているようです。


■債権者と労使交渉
現在、クライスラーの借入は、全部で、担保を取られている有担保債権が、
69億ドルあります。
政府としては、まずこれを8割5分削減しようと計画しています。
一方でJPモルガンチェースやシティーなどを中心とする債権団は、
3割5分程度の削減なら了承するとし、再建後の4割程度の株式取得を提案し、
フィアットにも20%の株式取得の対価として小型車技術だけでなく、
資金拠出を求めました。
このように両者には大きな隔たりがあり、当初は合意などあり得ない、
と思われていましたが、4月の28日になって、7割削減で合意した、
というニュースが流れました。
実は、公的資金を注入してもらい、政府に救済してもらった大手金融機関の、
JPモルガンチェースやシティバンクなどの銀行は政府に助けてもらったため、
政府に歯向かうわけにもいかず、とりあえず7割削減で合意したのです。
これにより、法的手続きに入る必要はなくなるのではないか、
と思われたのですが、一部の小口の債権者たちがそれに待ったをかけました。

小口債権者の中に、CDSを持っているものがいたのです。
CDSというのは、クレジット・デフォルト・スワップ (Credit default swap)という、
倒産した時にその保障として、債務を代わりに払ってくれる権利のことです。
しかしクライスラーが破産法を適用しなければ、CDSの「倒産した時」、
という条件が満たされず、保険金は払ってもらえません。
そのため、救済は倒産してから行ってもらえれば、我々の、
クレジット・デフォルト・スワップのお金がもらえるため助かる、と主張して、
どうしても合意しませんでした。
これにはオバマ大統領も大変怒っていました。
結局合意できずに、チャプターイレブンの適用になってしまったということですね。

労使の交渉は、割と何とかなりました。
4月の末に、労働組合の承認を得て、労使協定を改定しました。
チャプターイレブンを適用するのですが、破産法手続きに入っても、
年金や退職者の医療制度はそれなりに維持するという合意をしています。


■日本への影響
クライスラーがもしチャプターイレブンに追い込まれた場合は、
クライスラーに部品を納めている部品メーカーを救済しなければならないため、
3月下旬以降発生した部品メーカーの売掛金をアメリカの政府が保証する、
という制度を3月に作りました。
GMとクライスラーが危なくなってきたという時に、そこに対して、
部品を売っている企業をある程度助けてあげないと、自動車業界は、
怒涛のように潰れていくという状況になったため、
部品メーカーのGMとクライスラーへの売掛金を保証する制度を導入したのです。

この制度はアメリカの企業だけでなく、日本の自動車部品メーカーも、
申請することができるということでした。そのため当初、
デンソー(カーナビ、エアコン)や、ヨロズ(車の足回り)など、
日本の自動車部品大手は、GM向け部品の売掛金保証を、
アメリカ政府に申請しました。
またアイシン精機や三菱電機、不二越などが、クライスラー向け債権の、
保証制度の適用を申請したという状況です。

クライスラーに関しては、ディーラー契約を半分ほど更新しない、
という問題が出ています。
クライスラーもGMも、自分の自動車をディーラー通じて売っているため、
何十%もディーラーを削減する必要があり、切られると死んでしまうディーラーと、
揉めているという状況です。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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