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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 技術の社会構成 (中国ビジネスとイノベーション/朱穎)

技術の社会構成 (中国ビジネスとイノベーション/朱穎)

09/06/03

技術とは何かという問いかけに対しては、
基本的に社会に与える影響、そして社会の中でどのように進化していくのか
ということをより深く考えていくと、
思想的あるいはイデオロギーの論争にもつながりますが、
大雑把にいえば技術決定論、
及び技術は社会的に構成されたものと見る観点があります。
前者は技術を自立的に捉えて、
それが技術に内在する論理に従って発展していく考えですが、
後者はそれに対して技術を生み出す社会的背景に着目し、
技術の持つ社会的次元、政治的含意をえぐり出すことが目的です。 
技術決定論を簡単に説明すると、技術をいわば、立法者と見る見方であり、
技術は絶対的であり社会の中で重要な役割を果たすというものです。
これは技術者にとってとても心地良く、技術は何ものにも拘束されることがなく、
技術に固有の内在する論理に従って進化していくという観点なのです。
これに対して、技術を社会的構成物と考えている見方では、
技術決定論の中ではあたかも立法者であるように考えられた技術ですが、
そもそも立法者というのはどのように定義され社会の中で
選出されていくのかという問題に答えなければなりません。
これが技術の社会構成論が成立するきっかけになりました。

■ 解釈の柔軟性:自転車の技術史
技術社会構成論の中心的概念は、解釈の柔軟性です。
技術に対して、それに関わる人々あるいは社会集団の認識と
経験によって技術が解釈され、その様々な解釈の中で
技術が発展していくという概念です。
興味深い事例として、19世紀のヨーロッパにおける自転車の技術史を紹介しましょう。
同じサイズの車輪2つ、空気タイヤ、ダイヤモンド型フレーム、
ペダルというのが自転車の支配的デザインですが、
これは1880年代から90年代にかけて登場し定着しました。
ところがそれに至るまで様々なタイプの自転車が存在しました。
例えば、1870年代にオーディナリーと呼ばれるタイプがありましたが、
これは前輪が後輪に比べて極端に大きく、直径は40インチもありました。
このタイプの自転車というのは、大変危険な乗り物でしたが1890年代までは、
大変人気を集めました。
当時の上流階級の若い男性にとって、自らの運動神経と勇気を披露し、
女性の目を引くためには最適なデザインだったからです。
一方当時は自転車レースがたいへん盛んになり、
この前輪の大きいということは一回転で進む距離も長いいため、
支配的デザインとして20年ほど存在しました。
しかし、これに対して異なる解釈を持つ女性
あるいは年配の男性などのグループも存在し、
安全性を重視する一方、スピードを競う風潮を嫌っていました。
また当時の女性はスカートで前輪の大きい自転車には乗れませんでした。
その後関連社会集団は、それぞれの解釈に基づき問題解決を行いました。
前輪の大きい自転車を危険と解釈する社会集団は、
安全問題を解決するために、その後いくつかのデザインを考え出しました。
サドルを後ろに移動させたり、補助装置を付け加えたり、
あるいは前輪と後輪の位置を変えたりするなどの改善が実施されました。
それは約20年間の試行錯誤のプロセスを経て、
今日の自転車の原型ともなる「セーフティ」型に収束していきました。
これは技術論的の観点でいう技術固有の内在する論理により
自然に進化したのではなくて、様々な社会集団が存在して、
それぞれ新しいデザインを生み出して進化していったという
プロセスがあったのです。ただし、技術がいいから自然に社会に普及していく、
あるいは絶対スタンダードになるなど考え方もあると思います。

以上のように社会構成がとても大事ですが、
誤解は避けないといけないのは、技術の社会構成論は
素朴な技術決定論を批判的に見ることがきっかけだったのですが、
一方で技術が社会に与える影響あるいはインパクトを
否定するものではないということです。
逆に技術は全て社会的に決定されるとなると
技術者の仕事は何なのかという問題が発生してしまいます。
したがって技術の内的要素として出来るか出来ないかは社会的に決まるものではなく、
大部分は技術内部の事情によってかなり規定されるという観点も大事だと思います。
重要なのは、どのような技術という前提にたって考えないといけないということです。
非常に単純な技術体系であれば
大分部が技術の内的要素によって決定される場合も多いと思います。
しかし、とても複雑な部品が多数あり関わっている社会集団も複数に存在する上に、
技術の不確実性も高いという前提で考えると、
個人の解釈あるいは認識が大きく影響していることを認識しなければ、
技術開発の現場でもうまくいかないのではないかと思います。

分野: 朱穎准教授 |スピーカー:

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