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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 健全化法のその後(財務戦略/村藤 功)

健全化法のその後(財務戦略/村藤 功)

09/05/22


■財政健全化法
今回は、地方の財政を健全化しようというお話です。
2年ほど前に夕張市が財政破綻しました。
そのような都市は夕張市だけでなく、他にもあるのではないか、
という懸念が広がり、大丈夫かどうか見てみよう、ということで、
財政の開示を強化して健全化を促す財政健全化法を導入しました。
これは地方財政再建特別措置法という50年前の古い法律が、
「夕張市問題」に十分に機能しなかったことを踏まえ、
早期健全化措置を新たに義務付けたものです。

財政健全化法は自治体財政の健全性を、4つの指標を作って測り、
少し危ない都市はイエローカード、危険な状態はレッドカードとして、
大丈夫かどうかを見てみようというものです。
まず、2006年度の結果が、2007年12月に発表されました。
2006年度は、2007年の3月までなので、3月から、9ヵ月ほど経った、
12月に総務省が日本中の2006年度の結果を出したのです。
この発表により、夕張市がひどかったのはもちろんですが、
夕張市の他に、北海道の赤平市、長野県の王滝村などが、
危険な財務状況にあることが分かりました。

ところが、2006年度は計算をしただけで、
実際に法律を適用したわけではありませんでした。
新制度の適用は、2008年度からだったのです。
レッドカード、イエローカードが出ると、
実際に法律を適用しなくてはならないのですが、
2006年度は総務省が様子見をしただけでした。
その結果を受けて、財務比率の分母と分子を調整して、
危機的状況にある都市数が増えないようにしようと、
総務省がごまかし作業に入りました。
2007年度も、まだ法律適用時期ではないのですが、
この結果も発表してみました。
すると2007年度も赤平市や王滝村は、
危機的状況にあることがわかりました。
そのため、赤平市と王滝村は夕張市と同じく破綻と言われるのは嫌だ、
ということで、慌てて色々な策を考えました。

赤平市の場合は、北海道知事が画策して金融機関からの短期借入を、
特別に許される特例長期債に借り替えることによって、
流動負債や公営企業の資金不足額を減らし、
病院の赤字を連結実質赤字から外しました。
王滝村も、今まで財政調整基金という基金があったのを取り崩して、
借金を繰り上げ返済しました。
このようにして2008年度の、実際に法律の適用時には、
健全化しているように見えるようにしました。
2008年度に計算する時には、赤平市も王滝村も、
全く問題がないように見えるという不思議なことになっています。
一方で、粉飾が疑われるケースも出てきています。

■自治体の粉飾
特に問題になっているのは、岡山県と北海道が、
出納整理期間を使って行ったものです。
普通の民間企業の場合には、3月末に、
どのような資産や負債を持っているのか、
またこの一年間でどのような売上や費用があったのか計算して、
貸借対照表(バランスシート)や損益計算書を作ります。
ところが、自治体の場合には、4~5月に出納整理期間、
というものがあり、出納を整理します。
これは3月末に、支払わなければならない債務や、
取り立てなければならない債権を3月末に間に合わなくても、
4~5月に処理できれば、4~5月に受け取ったり、払ったりしていても、
あたかも3月末に起こったようにみなす、という制度です。

これは発生主義という、3月末に債権債務が発生していれば、
帳簿に載せるというものではなく、予算主義、現金主義により、
予算どおりの現金の受払が4-5月に起きれば3月末に起きたとみなす、
という公会計に特有の少し変な考え方です。
4~5月に起こったことを3月末に起こったとみなすことができると、
様々ないんちきができます。

まず、夕張市は借金が沢山あるのに、4~5月に返します。
そうすると、3月末の貸借対照表に、借入が記載されなくなります。
ところが、元々お金がないわけですから、返した直後にまた借り、
これを新年度の借り入れとします。
新年度にお金を借りるのですが、次の3月末には、
また出納整理期間に返済するので、また借入がないように見える訳です。
そうすると、本当は存在する借入が、3月末だけ、
あたかも存在しないように見えるということが起こるのです。

こうなると、借入をしても3月末では借入が存在しないように見えるため、
借入れがどんどん膨らんでいきます。
そのため危機を感じた総務省は是正を求めました。
それでも応じない自治体もあったのです。

その中でも北海道と岡山県は、出納整理期間中に借入の返済ではなく、
貸出の回収をごまかしていました。
まず岡山県の場合は、おかやまの森整備公社や岡山県住宅供給公社という、
お金に困っている地元の公社があります。
そのような公社のために750億円ほど貸していました。
それを出納整理期間中に返してもらうわけです。
4~5月の出納整理期間に返してもらえば、3月末にさかのぼって、
返したとみなされます。
要するに、3月末に岡山県は、おかやまの森整備公社や、
住宅供給公社にお金を貸してないことになります。
ところが、その2つの公社はお金が足りないので、
出納整理期間中にお金を返すや否や、また借ります。
しかし出納整理期間のおかげで実在する貸出が、
ないように見せかけることができるのです。

本当は、そのお金が返ってきてないわけですから、岡山県としては、
その分の収入はなく、お金が足りずに赤字なのです。
その赤字を開示すると、早期健全化団体または再生団体として、
健全化や再生を求められかねないので、このような処理をしたのです。
岡山県や北海道の財政は悪い状況にあるのですが、
健全なように見せかけ総務省に抵抗しているようです。


■自治体財政の今後
自治体の粉飾を招く出納整理期間は今後廃止すべきだと思います。
公会計における予算主義、現金主義は民主主義の要請による、
議会の承認の必要によるもので簡単に変更はできませんが、
予算は現金予算でなく、発生主義予算に変更することも可能です。
公会計の予算主義、現金主義と、発生主義や複式簿記という、
両建てで仕訳を書く、通常の民間の会計の方式では、
全く異なったものを使っているために話が大混乱して泥沼化しつつあります。

2008年度から新しい基準の制度適用が始まります。
2008年度は、2009年の3月に終わったので、この結果は、
今年の秋頃に、おそらく発表されるでしょう。
しかしこの4~5月は出納整理期間ですので、
何か行われているかもしれません。
本当は破綻している自治体が大丈夫なように見せかける粉飾が、
多発しなければいいと思います。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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