QT PRO モーニングビジネススクール

QT PRO
モーニングビジネススクールWeb版

FM FUKUOKAで放送中「QT PRO モーニングビジネススクール」オンエア内容をWeb版でご覧いただけます。
ポッドキャスティングやブログで毎日のオンエア内容をチェック!

PODCASTING RSSで登録 PODCASTING iTunesで登録 電子書籍で記事を読もう! EPUB

過去の記事詳細

QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 上海広電集団の破産(中国経済と産業/国吉 澄夫)

上海広電集団の破産(中国経済と産業/国吉 澄夫)

09/05/20

■上海の大手企業・上海広電集団

最近テレビニュースを見ていますと、
国際金融危機の世界的な広がりにもかかわらず、
中国では、景気刺激策によって各地での
インフラ工事が相次ぎ、いち早く不況から脱却か、
といった映像が流れています。
しかし、そうした半面で、
中国の老舗電気メーカーが破産というニュースも
伝わっており、明暗を分けているように思えます。

実は、4月に「上海広電集団」という
大手エレクトロニクス企業集団が破産しました。
1990年代半ばに上海のテレビ工場、オーディオ工場、
電子通信関係工場などが企業統合して出来た会社で、
上海市では宝山製鉄、上海汽車についで
3番目に大きい企業集団といわれてきました。
1980年代には、前身の上海テレビ一廠は
「金星」ブランドのカラーテレビを生産販売し、
「中国電子トップ100」の1位だったこともあります。
また、直近では2008年の売上高ランキングで、
250億元(日本円3500億円)で中国電子企業の
12位に位置し、「SVA」というブランド名は
上海では知らない人はいないほどでした。
従業員2万5千人で、傘下120社で集団を構成し、
日本企業とも多くの合弁会社を手掛けている企業
として有名でした。

例えば、ソニーとカラーTV/AV機器、
パナソニックとプラズマパネル、
NECとTFT液晶パネル、
シャープと冷蔵庫・洗濯機、
また、変わったところでは、
日本生命と生命保険合弁会社、
といった風に、多くの合弁を手掛け、
日本企業にも大変ファミリアー(familiar)な企業でした。
私自身も2~3回訪問したことがありますが、
立派な工場建屋と優れた技術陣を擁した
優良会社と思えました。


■NECとの液晶合弁の不調が直接の原因

今回倒産の直接的なきっかけになったのは、
2003年NECとの間に設立された
合弁の液晶パネル生産会社
「上海広電NEC液晶顕示器有限公司」
(総投資額1500億円、上海広電75%、NEC25%)
の経営不振と言われています。
この会社は第5世代と呼ばれるテレビ用の
大型TFT液晶パネル生産販売会社なのですが、
以前からの急激な液晶パネルの価格ダウンに、
この間の国際金融危機による不況の波を受けて
経営が急速に悪化、加えて、上海広電本体の、
この数年の経営悪化で負債総額1500億円規模まで膨らみ、
4月に中国破産法の適用を受けたというのが
これまでのいきさつです。
今後は、同じ上海市政府傘下の企業集団
「上海儀電集団」の管理下に置かれて、
破綻処理が行われるとのことです。


■過当競争、拡大路線の果てに

今の世界同時不況の下では、
何が起こっても不思議ないのですが、
一体、これだけの大企業が
どうして破綻してしまったのか、
原因を考えて見たいと思います。

一つは、中国のデジタル家電全体を覆う、
過当競争と価格破壊の波です。
中国国内市場では、中国企業、海外ブランド
入り混じっての激しい価格競争が
1996年以来10年以上続いており、
液晶テレビにおいてもしかりでした。
各地域にエレクトロニクスの会社が
たくさん乱立しており、その中で競争になります。
また、薄型テレビの過剰ともいえる価格競争には
日本企業にとってもこの数年大変頭の痛い問題でした。

二番目に輸出依存体質です。
売上に対する、輸出比率が圧倒的に高く(50%超)、
逆に国内市場が弱く、つまり、農村に家電を売っていく、
家電下郷という動きの恩恵には浴しておらず、
今回の国際金融危機ではもろに影響を受けたと思われます。

三番目に、最近の中国電子企業に特徴的な、
事業拡大路線、多角化、総合家電化の流れで、
これにより経営範囲が拡大しすぎると
コントロールが効かなくなり、赤字事業の切り離し
という「集中と選択」が出来なくなりがちです。
上海広電もご多聞にもれず、テレビ、オーディオ、
プラズマパネル、液晶パネル、洗濯機・冷蔵庫、
生命保険と戦線が拡大していました。
加えて、直前まで、第6世代の液晶パネルの
生産ライン拡張計画もあったようです。
(現在、保険の方は、合弁解消の方向に動いているようです。)
日本のエレクトロニクスメーカーは、
分野を絞る方向にありますが、
中国では、流れが違う方向に向かっているのが、
最近の動向です。

四番目に、この上海広電の経営トップの
ほとんどが上海市政府からの天下りで、
国有企業の古い体質から
脱却できていなかったかと思われます。
「行企分離」という言葉は、
中国で古くから企業改革の過程で語られてきました。
企業と行政が近すぎ、行政による企業活動への
不必要な介入という問題はこれまでも
地方の国有企業でしばしば発生した課題でした。
推測ですが、今回このような問題も
あったのではないかと思われます。

企業の栄枯盛衰はいつの時代にも在ることで、
今日の優良企業が明日の破綻企業になることは、
変化の激しい中国産業界では珍しくありません。
特に、上海広電の場合、2006年から
経常利益が赤字を計上し続けていました。
しかし、今回は世界的な不況の中での破産であり、
こうした流れが、これまでの過当競争で体力を
すり減らした同業中国地場デジタル家電メーカーへ
波及するのではと懸念されます。
今、中国の景気刺激策はうまくいっているように見えますが、
何事にも、裏と表、日が当たるところと影がありますので、
今後もよく見ていくことが必要だろうと思います。

分野: 国吉澄夫教授 |スピーカー:

トップページに戻る

  • RADIKO.JP
  • ビビックスマホ