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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 組織の基礎概念~組織の生存と多様性・効率(ベンチャー企業/五十嵐 伸吾)

組織の基礎概念~組織の生存と多様性・効率(ベンチャー企業/五十嵐 伸吾)

09/05/19

■環境の変化に対応する力

今日、目まぐるしく私たちを取り巻く状況は変化しています。
このような時に、よく話題になるのが、
組織が激しい(経済)環境変化に
対応できるかどうかということです。
そして、変化に対応できれば、会社は生き残り
成長機会を得られるという話に繋がります。
そこから考えられることは、組織は環境と
どのように適合していくかということです。
このお話は皆さんすでに別の分野で
知っていらっしゃると思います。
そうです、ダーウィンの進化論ですね。
有名なガラパゴス諸島のゾウガメやイグアナなどの研究です。
あれらの動物は、同じ種であるにもかかわらず、
環境の違いによって、獲得する形質が異なります。
つまり、生物はその環境に適応して進化を続けている
というのがダーウィンの進化論の考え方ですね。


■コンティンジェンシー理論

このダーウィンの進化論を
ローレンス(Lawrence)とローシュ(Lorsch)が、
1967年に経営学の分野(を組織論)に持ち込みました。
これが、コンティンジェンシー理論(contingency theory)です。
つまり、組織の最適な形というものは存在せず、
環境の変化に組織が適応していくことにより、組織は成長できる。
外部環境によって適切な組織の形態も異なる。
単純に考えれば、人間が作った組織も
一つの有機体と考え、これに進化論を適用したのが
コンティンジェンシー理論と言えるかもしれません。


■組織エコロジー理論

しかし、異論を唱えた経営学者もおります。
個体で環境に応じて柔軟に変化できても、
種(群れ)として考えるとどうなるのか?
なぜ一つの個体が種に全体化するのか?
種あるいは群れを基礎として環境適合を考えたのです。
ハナン(Hannan)、キャロル(Carroll)、フリーマン(Freeman)らは、
1992年に、コンティンジェンシー理論の対極として、
組織エコロジー理論を提案しました。
組織エコロジー論は、組織が環境変化に適合して
生き残れるかどうかではなく、次の時代に生き残れたのは
結果論に過ぎないという考え方です。
つまり、生き残るかどうかは自然が決める。
次世代に繋がる者は淘汰によって選別される。
つまり残るべきものが残るのだという考え方ですね。
つまり、個体としての進化より、
淘汰による選別を中心に理論を打ち立てたのです。


■新しさの不利益

どのようなに「淘汰による選別」を考えれば良いのでしょうか?
その説明の1つが「新しさの不利益」という考え方です。
「新しさの不利益」について簡単に触れたいと思います。
以前お話しましたが、ベンチャー会社は、
3年で30%位潰れ、5年後で、また30%位潰れます。
このことから、会社は、若ければ若いほど、
潰れてしまうということが示唆されます。
それでは、組織はなぜ新しければ新しいほど、
若ければ若いほど消滅してしまうのでしょうか?


■新しさの不利益が発生する理由

新しさの不利益が発生する理由の1つに、
組織慣性が働くことが指摘されています。
つまり、組織が一度出来上がってしまうと、
それを維持しようする力がうまく働くということです。
それが働くからこそ、時間が経てば経つほど、
会社が生存する確率が高くなるのだという考え方です。
組織を取り巻く環境は、組織の慣性力が
高い組織を、選別しているのです。
組織の慣性力は、組織の年齢が高まると同時に高まり、
一方、若い組織ほど、死亡率が高くなります。

それでは何故、古い組織よりも新しい組織の方が
失敗する割合が高いかですが、いくつかの理由が挙げられています。
1つ目は、新しい組織は、今までなかったような
類型の組織を作るからです。
誰も試したことのない組織では従業員が
どのような仕事をすればいいのかが全く分からない。
試行錯誤して、その経験、過程で学習をして
効率的な組織の動かし方を習得する。
よって、習得するまでに時間が必要だという説明です。
2つ目は、組織の中の役割は、
例えば、部長や課長という役割が決まると、明確になるのですが、
役割を決める相互関係は容易に決められるわけではなく、
様々な互いの葛藤を通して、だんだん安定してくるものです。
その葛藤がおさまるまでにやはり時間がかかるのです。
3つ目は、簡単に言いますと、
新しい会社は「信用」がないからです。
新しい会社が新しい製品を作っても、
顧客や金融機関、仕入先は
その製品は信用できるのか、
どのような人間が会社にいるのか、
つまりどのような会社なのか、全く未知数です。
ですので、信頼あるいは信用を外部から
獲得するまでに時間を必要とするのです。


■一番初めに始めるメリット

私が銀行員として働いていた時分の頃、
「出来たばかりの会社に(危険なので)金を貸すな。」
と言う話はよく上司から指導を受けました。
その後、3年、5年と存続した後、
「あぁ、この会社、こういう会社で、
大きな会社にものが売れているから大丈夫だ。」
ということが実績を通じて理解が進み、
徐々に信頼が確立していくのです。
つまり、実績、経験が武器となるのです。

これまで述べたことは、一見すると、
起業家にとってはマイナスで、
お金を融資しない金融機関に
エールを送ってしまうことになりかねません。
しかし、これも以前にベンチャー戦略をお話しした際に
ファーストムーバー・アドバンテージ
(First Mover Advantage:先行者利得)について説明致しました。
確かに、新しさの不利益はある一方で、
ファースト・ゲット・オール(First get all)の状況を作りやすいのです。
つまり、一番初めに何も分からない時に始めた会社は、
未知あるいは不確実なものが多くて大変ですが、
市場の成長に乗って企業を成長させることも可能となります。
皆さんご存じの「イノベーションのジレンマ」を
逆手に取ることに似ていますね。

このような例はたくさんあります。
例えば、半導体。
当初、インテルもDRAMを設立していましたが、
途中でMPUに移行しました。
半導体産業の黎明期にインテルは産声を上げ、い
くつかの困難な時期もありますが、半導体
特にMPUの市場の急速な立ち上がりとともに。
今日の巨大なインテルが存在しています。
マイクロソフトも同様ですね。
PCが登場したときには、マイクロソフトは
Basicを売る技術力はあるが小さな会社でした。
しかし、現在は、巨大な帝国を築くに至っています。
確かに、新しい組織は消滅する可能性は高いのですが、
そのリスクを凌駕する大きなチャンスがあるので
企業は成長を遂げることもしっかりと心に留めておく必要があります。

分野: 五十嵐伸吾准教授 |スピーカー:

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