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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 組織の基礎概念~管理限界と組織の階層性(ベンチャー企業/五十嵐 伸吾)

組織の基礎概念~管理限界と組織の階層性(ベンチャー企業/五十嵐 伸吾)

09/05/18

■組織の作り方が重要

ベンチャー企業が成長するにつれて、
「組織」で問題を抱えるケースがあります。
以前にお話しましたが、ベンチャー企業には
「研究開発リスク」、「市場リスク」、
「マネジメントリスク」の3つが存在します。
設立当初は、製品開発が成功するか否か(研究開発リスク)や
完成して市場に投入しても、その製品が売れるかどうか
(市場リスク)の方が重大な問題です。
しかし、優れた製品が完成することができ、
それを市場に投入したとしても、
組織の作り方を失敗したばかりに、
瓦解してしまうことがよくあります。
組織が大きくなると同時に、
マネジメントのやり方も変えなければならない。
これに気付かないまま終焉を迎えることが一番の問題なのでしょう。


■組織の基礎概念

組織の基礎概念は、3つあります。
1つ目は、「スパン・オブ・コントロール(Span of control)」、
日本語に置き換えると「管理の幅」や「管理限界」となりますか。
要は一人で何人まで(部下を)見られるかということです。
2つ目は、1つ目と密接に関連しますが「組織の階層制」。
階層と言えば、よく官僚組織の例に惹かれることで
みなさんご承知だと思いますが、係長がいて、
部長がいて、事業本部長がいて、という組織の
垂直方向の権限移譲の話が2つ目です。
3つ目は、人事部やマーケティング部など、
組織の機能分化特に水平分化についての話です。
この3つが、組織の基礎でありますが、
今回は前の2つスパン・オブ・コントロールと
組織の階層制についてお話します。


■スパン・オブ・コントロール(管理の幅)

経営学の成り立ちは「戦略」という言葉が出てくるように、
近しいものは、戦時の軍隊の運用が
出発点の一つとなっています。
例えば、30人の兵士の軍隊と、
3,000人の兵士の軍隊の戦争では、
武器等条件が同じだとすると
明らかに3,000人の軍隊が優勢でしょう。
組織が大きい方が大きな戦力を運用でき
数の論理が働き強みを発揮できるからです。
一方では、組織が3,000人まで大きくなると
指揮系統の問題が顕在化するはずです。
いかに数を集めても、全軍の意思が
統一されていなければ単なる寄せ集めです。
最近の映画では三国志に題材をとる「レッド・クリフ」が典型例ですね。
そのように指揮系統を確立しながら大きな組織を有効に作るか、
また、その組織をどうやれば効果的に管理できるかどうかが大切です。
そこから、組織の最適な大きさは?
何人だったら効率的に動かせるのか?
組織の大きさ、サイズを考えることが、
管理の幅、スパン オブ コントロールという考え方です。


■管理職の必要性

何人かの起業家(創業経営者)にお聞したところ、
例えば、社長1人で思考をめぐらして、
従業員の能力や家族構成などを、
1から100まですべて掌握できるのは、
30人から40人位かな?とおっしゃっていました。
(御参考までに、不思議なのですが、
この位の数字を答える方が結構多いのです)。
ここから、一人で全体を見られる人数が30人であるならば、
30人を越えて60人になると、一人で全員を見ることが
できなくなるという問題が生まれてきます。
このような時にどうするかと言いますと、
管理職を作るなどして、自分の管理能力を
補完する役職を作らなければなりません。
しかし、何人位を見られるのか?という実際の構成員の
数の決め方(スパン・オブ・コントロール)ですが、
一様に決められものではありません。
どのような組織かによって、
効率的に動かせる人数も変わってきます。
上下の力関係でも左右されます。
また、軍隊みたいに規律・指揮系統が徹底されている組織では
300人位でも大丈夫かも知れません。
また大学博士課程など高度で複雑な教育を施すときには
10人でも難しいかも知れません。
組織が目指す目的や力関係、規律、制度などにより、
適正サイズが決まってくることを覚えておいて下さい。


■管理過剰からおこる問題

管理の幅は組織によって違うとお話しましたが、
それが大き過ぎたり小さ過ぎたりすると
組織効率を落とす致命的な問題が発生します。
例えば、適正な組織サイズが30人のところ、
10人しか構成員がいないとすると、
垂直方向に係や課、部が幾重にも作られ階層が深くなります。
そうすると、各管理者は、有り余るほど余力があるので
管理のための管理が増えるといった管理過剰が発生したり、
下位の人たちの自主性が育たないといった問題が発生します。
加えて、同じく30人が適切なスパンと過程して、
例えば、課長が20人、部長が10人しか監督しないことになると、
ついつい下の下まで気にかけてしまい
重畳的な管理という問題が出てきてしまいます。
非常に管理コストばかり大きくなって無駄ですし効率が落ちます。
反対に、適切なスパンの幅を超えて
人員を詰め込んでしまうと、管理が粗大になり
部下が何をしているか、目が行き届かなくなります。
そこでは仕事の効率が低下したり、
適切なタイミングで適切な指示ができずに
組織の箍(タガ)が緩み機動性を失います。
本来は、管理職には会社の将来ヴィジョン策定や
戦略立案を担う役割が期待されているにも関わらず、
直接的な部下の管理に追われて、
十分な機能を果たせないという問題が生じます。


■適切な管理の幅と階層性が必要である。

なぜ、適切なスパン・オブ・コントロールを採用せず、
管理過大や管理過小も問題が発生するのでしょうか?
いくつかの原因を指摘できます。
まず、必要な組織教育・訓練を怠るという例が指摘できます。
このように業務内容の自覚を促すような努力をしていない、
職務規定を明確にしてないあるいは規律が不明確
という場合に問題が起こります。
あるいは、特に日本の場合には、年功序列が
まだ色濃く残っている場合も多いため、昇進圧力が発生し、
受け皿としてのポストを作る必要があるといった事情から
スパン・オブ・コントロールが歪む場合もあります。
ポストのために管理があるのか、管理のために
ポストがあるのか主客逆転が起こってしまうのですね。
最近では、M&A後、急にポスト削減をしてしまい困ってしまう、
リストラ後、上の方と下の方ばかりで中間管理職が
いなくて困るという事態もよく起こっているようです。

視点を変えましょう。

時々「組織が官僚制でうるさい。」という発言を耳にします。
しかし、これまで述べたように管理の幅が必要である限り、
どうしても組織は階層性を持たざるを得ないのです。
階層的に組織が作られることが悪いわけではなく、
適切なスパン・オブ・コントロールが
実現できているか否かが問題なのです。
例えば、獰猛な土佐闘犬では、太い鎖でつなぐ必要がある。
一方、生後間もない子犬では、鎖の太さは太くなくてもよいが、
行動が読めないので短い鎖に繋ぐ必要があります。
一方、牧羊犬を見ると、鎖などしなくても、飼い主の意図を汲み
羊を所定の場所に追い込んでくれます。
つまり、その組織の目的や、目的享受の程度、意欲、
仕事の内容により、どのような管理の幅と階層性を
作っていくかが問題になってくるのです。


■成長の妨げ

最適な組織設計は実際に難しいものです。
特にベンチャーは、3人位の会社から、場合によっては3年で、
300人や400人に急成長する場合もあります。
どうやって、スパン・オブ・コントロールを
コントロールしていくのかが大きな問題です。
一方で、管理能力を持つ人材をどう確保するのか
という問題も一方ではあります。
このような問題が最初に述べた「マネジメント・リスク」の一例です。
これが企業の成長の妨げあるいは制約となります。
ゆっくりと成長するのではあれば時間とともに
対処可能かも知れませんが、急成長ベンチャーでは
死活問題に発展しかねません。

分野: 五十嵐伸吾准教授 |スピーカー:

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