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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 逆境下の電機業界と東芝の3つのイノベーション(国際企業戦略論/永池克明)

逆境下の電機業界と東芝の3つのイノベーション(国際企業戦略論/永池克明)

09/05/04

米国発金融危機と本格的経済不況突入の中、
我が国の輸出型製造業、すなわち自動車産業、
電機産業、機械産業といった業界の有力メーカーの
トップ交代の発表が相次いでいます。
また、多くの企業が今回の深刻な景気後退に対応し、
拡大基調から急速な縮小路線
(シュリンク・トゥ・グロウ(Shrink to Grow))に転じています。
つまり、一旦、身を縮めて、将来の成長に備えよう、
という動きを打ち出しています。
具体的にはリストラや事業の選択と集中による
事業戦略の見直しを始めています。
今日はこうした短期的施策とともに、
中長期的な視点に立った経営風土改革を進める
東芝の現状について述べてみたいと思います。


■我が国電機メーカーの現状

①相次ぐ経営トップの交代

今年に入ってから、電機メーカーの
トップの交代が相次いでいます。
2月末にソニーのハワード・ストリンガー氏が、
会長兼CEOに就任し、大幅なリストラ策を発表しました。
3月中旬には日立製作所と東芝が
相次ぎ社長交代を決めました。
またこの三社以外にも日本IBM、
OKIのトップも交代しました。
 
それぞれの会社で社長交代の背景は
異なります。
ソニー、日立の場合は業績の悪化に対処し、
トップ交代によって人心を一新し、
企業のリストラを今度こそ徹底する
との決意の表れです。
東芝の場合は、2期4年という
同社の社長交代の慣例を西田社長が
当初の予定通り貫徹したということです。
したがって、6月以降、就任予定の
佐々木新社長の経営も西田路線を踏襲しつつ、
コスト削減策や事業の集中と選択を
継続することが予想されます。

②各社の対応策

有力電機メーカーの不況対策は、
国内外での人件費削減を中心とする
総コスト削減策、設備投資の抑制、
事業の思い切った選択と集中が大きな柱です。
各社ともに自社の中核事業以外の事業の外への
切り出しと本業への資源集中を進めています。
この結果、今後、業界全体の大きな再編が
一層進むことは確実です。
その過程で、企業間の淘汰、集中が進むと思います。

その中で、不況対策と並行して中長期的視点を
忘れず地道に全社で、ユニークな意識改革を
進めている東芝の現状を紹介します。
東芝では、西田 厚聰氏が2005年に
社長に就任して以来、原子力発電大手の
米国ウエスティンハウスを買収したり、
半導体で大型投資を決めたり、
あるいは次世代DVDからの撤退等々、
矢継ぎ早の事業の集中と選択を行ってきました。
今回はエネルギー分野とエレクトロニクス分野を、
両輪として、これから成長しようという矢先の
不況の到来でした。
こうした中、防戦一方の短期的施策に加えて、
一方で、東芝は、同時並行的に
面白い対応策をしています。
この不況下で、3つのイノベーションを
同時並行的に行っているのです。


■東芝の3つのイノベーション戦略

①東芝の戦略

東芝は、西田氏が社長に就任後
「3つのイノベーションの乗数効果」
ということを実践しています。
それは今回の不況対策と並行して終始一貫して、
地道に実行されています。
西田氏は、「事業経営は状況の関数であり、
状況変化を見極めながらすばやく対応する
必要性がある」、と説いてきました。
そして「そのためには、迅速に対応するだけでなく、
自分も変わっていかなければならない。
経営のプロセスは判断、決断、そして実行である。
そのためには従業員個々人による
イノベーションが必要である。」
と西田氏は話しています。

その言葉の通り、西田社長は
イノベーションを次々と起こしていく
リーダーの育成やグローバルに
事業を展開できる社員教育のため、
10億円を投じています。
入社5年、10年目、15年目、20年目の社員を対象に、
新しい知識だけでなくリベラル・アーツ(教養分野)を
中心に視野を広げて深く物事を考える力を養うことを
ねらいとして実行しています。
今すぐに効果が出るというわけではないですが、
じわじわと効いてくることを期待しているそうです。

②3つのイノベーション

西田氏の言う「3つのイノベーション」について
説明したいと思います。
世の中では、技術を中心とした革新を
イノベーションと呼ぶことが多いです。
東芝では、市場に新しい価値を
提供するようなイノベーションを
「バリュー・イノベーション(価値イノベーション)」
と定義しています。
一般的に企業では、「バリュー・イノベーション」に
基づくような画期的な製品や事業は
売上高全体の10%程度で、残り90%は
現行事業の延長線上にある製品・事業です。
東芝では、社員一人一人が興せるような
身近なイノベーションから「バリュー・イノベーション」に
限りなく近いイノベーションまでを
「プロセス・イノベーション」と位置付けています。
開発、製造、販売、それぞれの分野で、
同時並行でイノベーションを起こすことで、
その乗数効果の発揮を目指しています。
すでに400ページにも達する
イノベーション事例集を作り、教材として使っています。
このような教材を、今年9月までに
3冊用意するそうです。

③ワークスタイル・イノベーション

3つ目の関数は、
「ワークスタイル・イノベーション」です。
「バリュー・イノベーション」は最も革新的なもので、
「プロセス・イノベーション」は身近なものを
日々、重ねていくようなイノベーションです。
では、なぜここで「ワークスタイル・イノベーション」が
必要かということをお話したいと思います。
仕事を進めていくと、シェアか利益か、
コストか品質かなど二律背反する問題に
ぶつかることが多いです。
かつては、二者択一でやっていればよい時代も
ありましたが、今のようなスピードが必要な時代には
二律背反をいかにバランスよく同時に克服するかが
求められています。
この二律背反をいかに克服するかが
イノベーションの大きなポイントで、
これには今までの発想にとらわれない考え方が必要です。
ひらめきを養うには、普段から探究心や
好奇心を持って幅広い視野が必要です。
東芝で、社員300人以上にアンケートを取ったところ、
会社で閃いたと答えた人は27%しかいませんでした。
あとは、電車の中、風呂場、寝る前に閃き、
閃いたものをノートに書き留めて、
それがヒントになり、イノベーションが興った
という答えが、多かったそうです。
つまり、ひらめき、インスピレーションは
働きすぎの頭からは生まれないことがわかりました。
そこで、社員に、仕事の後はリフレッシュして、
翌日や翌週からのイノベーションの創出に
努めるようにさせたそうです。
東芝では、これを
「ワークスタイル・イノベーション」と呼んでいます。
社員全体が、日々新たにイノベーションを
起こしていこうというイノベーション・カルチャーを
作っていこうというのが西田氏の考え方です。


■広い視野を持つ

現在のような大変な危機の中で
こうした策が即効性を持つかどうかは別として、
こういう時こそ緊急策とは別に広い視野に立った
持続的・中長期的な取り組みをする余裕を持つことも、
企業にも個人にも必要ではないでしょうか。
それが近い将来世界に通用する事業を育て
企業の推進力になっていくのだと思います。
私たちも専門分野のみではなく、
いろいろな分野の本を読んだり、
非日常的な経験をしたりするよう心掛けたいものです。
また、会社の出入りの者と離れて、
ビジネススクールで勉強することも、
大きなイノベーション、発想の転換になり、
サムシング・ニュー(something new)が
生まれるのではないかと思います。

分野: 永池克明教授 |スピーカー:

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