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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 経営戦略とは何か②(経営学/久原 正治)

経営戦略とは何か②(経営学/久原 正治)

09/04/30

■日米の背景の違い

前回、アメリカの企業と日本の企業は、
採る戦略の背景が違うとお話しましたが、
今回、まずは、自動車を例にお話したいと思います。
まず、アメリカの企業の場合は、
あらゆる資源が外部から自由に手に入る
という前提があります。
何かをするとき、
「では、外部から集めてきてやりましょう。」
という戦略を採ります。
これに対して、日本の企業は、何かをする時、
自分が持っている資源を使って行おうとします。
特に、人材はそうです。
自社の中で長年勤めて、高い品質の車を
作ってくれる人達だけで次の製品を作っていく日本と、
何か流行るもの、新しいものが出てきたら、
外から従業員をかき集めて、安い部品を集めてきて、
車を組み立てればいいという発想のアメリカです。
この発想の差が、現在の状況につながっているのです。

アメリカの方法のほうが、
早く新しい動きにのれるという面は
あるのですが、その形で行うと、
色々な部品の間の関係がうまくいかず、
あるいは、下請けと組み立てるところの
関係がうまくいかず、結果として、
製品の質が悪くなることもあります。
このような理由で、
明らかにトヨタの車の方が、
圧倒的にいいということになるのです。


■流動性の差

生産の仕組みを取り巻く、あらゆる環境が、
日本とアメリカでは異なります。
アメリカでは、流動性を前提にしています。
部品が悪ければ、世界中から、
安くてより良いものを探して買えばいい
と考えています。
労働者は出来が悪くなったらクビにして、
別のところから良い人を雇えばいい
と考えています。
また、社長でさえも、駄目であれば、
外からすぐに良い社長を雇ってくればいい
と考えています。
こういう前提として、あらゆるマーケットが
流動的に発達しています。
日本は、外からすぐに人を雇ったり、
クビにしたりということは、
なかなかできない国です。
また、日本は、会社の中で育った人が
社長になる慣例があります。
このように、流動性の差が大きいので、
日米の戦略が全然違ってくるのだと思います。


■変化が早い市場での戦略

面白いと思うのですが、自動車のように、
「ものづくり」では、長い間、皆が中で
資源を蓄えることで良い物が出来ます。
しかし、パソコンなどの製品は、変化が早く、
しかも、部品を集めて組み立てて、
ソフトは、良いものを持ってくれば
良い物が出来るのです。
その市場では、アメリカの方が、
非常にイノベーティブな人がいて、
新しいことがあったら、それをすぐに外から
買ってきて取り入れて製品を作り、
成功を収めています。
ところが、日本は、NECや富士通の中で、
大学を出た人を一生懸命育てていき、
製品を作らせています。
その方法では、皆、同じようなものを作ることは
できますが、「ものづくり」といっても、
パソコンは自動車と違い、いくら内部の人が
丁寧に作り、触り心地がいいと言っても、
競争になりません。


■アップルの戦略

例えば、アップルは、
大量には販売しているわけではないものの、
非常に特徴的で、コアな部分を掴んでいます。
アップルには、2つポイントがあります。
1つは、完全にフォーカス戦略を採っており、
おたくを相手にしようとしているところです。
それから、2つめは、
やはり非常に優秀なリーダーが
引っ張っているというところです。
そのリーダーは、単にビジネスができるだけではなく、
要するに、思想家みたいなもので、
この人に従っていくと、何か新しいものが、
面白いものがある思わせることで、
若くて優秀な人がどんどん集まってきています。
この2つが、アップルが他の会社と違うところです。
東芝や日立に、そのようなリーダーはいませんし、
誰もそこで楽しく仕事ができる
というイメージを持っていません。


■リーダーがいるアメリカ

例えば、マイクロソフトであれば、
ビル・ゲイツが、有名ですが、
日立の社長が誰かは、皆全く知らないのです。
これは、先程の自動車を作る例と全く一緒の戦略で、
あらゆる資源が流動化しているアメリカでは、
イノベーションを早く取り入れ、リーダーが思い切って、
会社を引っ張っていきます。
ところが、日本は、あらゆるマーケットが、
固定していて、非常に長い付き合いのところですので、
動きが早い市場では、アメリカ的な行動が
できにくくなっています。
従って、イノベーションは起きにくいし、
優れたリーダーが出にくいような構造に、
日本はなっています。
ただ、逆に、自動車などの分野は、
日本の方が強いということはあります。


■不況の中、経営戦略を立てる時に、考えるべきこと

第一に、世の中の変化が、
これまでにない速さであることを認識したうえで、
この環境変化をどう読み取るか、というところが大事です。
皆が、読み取ることができるわけではないので、
優れたリーダーが先取りして、新しい戦略を
立てていくことが非常に重要になります。
つまり、日本の企業には、リーダーシップがあり、
しかもグローバルな視野で、環境変化を
見ていくことができる人が求められています。
それから、内部にいる優秀な者を
そこに引き付けていくことも必要です。
内部と外部とを合体させるリーダーが、
日本の企業で一番重要になってきます。


■「ものづくり」だけではいけない

私は、日本は「ものづくり」だけでは、
なかなかやっていけないと思っています。
「ものづくり」だけではなく、
例えば、中国とかベトナムに、製造コストが
安い部分はうまくアウトソースするけれども、
そういうアジアの拠点を全部つなぎ、
全体として、日本の企業の強みを作っていく
方向に持っていけば良いと思います。
つまり、日本の企業が、
アジアの中でのリーダーシップを発揮し、
色々な役割をアジアの中でうまくつなげるような
経営の仕組みができれば、
グローバルに残ることができると思います。
しかし、日本の中で、「ものづくり」だけを
やっているのでは、中国やベトナムのほうが、
ものを作るのは安いですから、生き残れません。
また、イノベーティブなものは、
外から持って来なければならないので、
そこもアジアと結び付けることによって、
アメリカの企業、マイクロソフトやアップルに
勝てるような日本の企業は出てくると思います。
従って、トヨタやホンダのような、
日本の中での「ものづくり」だけではなくて、
アジアで全体を組み合わせるようなリーダーに
なっていく企業が生き残っていくと思います。


■アジアのマーケットを見る

これから成長する市場は、
中国、インドで、そこの消費者が
何を求めているかを考えなければなりません。
それは、日本で従来作ってきたものと、
ひょっとして違うかもしれません。
例えば、日本製の携帯電話が、
なぜアジアで売れないかというと、
色々と機能が付きすぎていて値段が高いからです。
そうではなくて、もっとシンプルなもので、
アジアの人に受けるものを作っていかないといけません。
そして、開発もアジアでやらないと
いけないのだと思います。
日本はもう成長しないので、
東アジア、アジア全体を向いていくというのが、
日本の経営戦略の一つの方法です。
日本のこれまで積み上げたものを、
アジアのマーケットと組み合わせていくことが必要です。
これは、九州の企業にも、強く言えることではないかと思います。

分野: 久原正治教授 |スピーカー:

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