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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > GMの生き残りに向けた戦い(財務戦略/村藤 功)

GMの生き残りに向けた戦い(財務戦略/村藤 功)

09/04/24

■GMの再建
以前アメリカの自動車業界の状況をお話させていただきました。
その後GMが破産法に向けて前向きに考えているという報道もあります。
その現状を今回お話させていただきます。

2月の半ば頃に、GMが再建計画を提出するという、
政府に言われた期限が来たので仕方なく提出したのですが、
その時点では労働組合や、債権者の合意が得られていないと状況でした。
その時に、3月末まで何とかしなさいということになっていましたが、
結局、その3月末までに何とかなりませんでした。
ではどうするのかということで、政府も困っています。
民主党は何とか助けたいと考えていますが、共和党は、
再建にいくらお金かかるか分からないのだからから、
チャプターイレブン(Chapter 11 連邦破産法11条)を、
適用しようという話をしています。

苦肉の策として、オバマ大統領は、3月30日にGMに対して、
60日間の運転資金を提供し、60日の猶予期間中に、
債権者や労働組合が合意した、新たな再建計画の策定を求めました。
クライスラーは、30日の猶予を与えられました。
クライスラーの場合は、30日といっても、自社だけでは、
事業継続が難しいということで、イタリアのフィアットと一緒に、
提携契約を結ぶことを条件としました。
それを30日以内にやりなさいという話です。


■労使交渉
フォードは、UAWというアメリカの自動車労働組合との協議で、
従業員の給料を日本並みに下げること、あるいは、
医療保険に対する拠出金の半分を株で行うということを合意しました。
ところが、その時の条件の一つとして、監査法人が、
事業継続能力への疑義を示さないことが盛り込まれています。
事業継続というのは、ゴーイング・コンサーン(going concern)といいます。
この事業の継続、ゴーイング・コンサーンが確保できれば、
医療保険の拠出金が株であっても大丈夫だと、
自動車組合はフォードに対して回答しました。
しかしGMの監査法人は、GMがゴーイング・コンサーンでいられるか自体が、
危ないと3月時点で、言ってしまっています。
ですから、同じような労使交渉がGMにできるかどうかは、分かりません。


■再建計画と債務の株式化
再建計画はアメリカ政府に言わせれば、少し甘いわけです。
自動車販売台数の見込み自体が、厳しくなってきていますので、
再建計画の予定がそのままで推移するかどうかは分かりません。
それから労働組合と債権者が、そもそも合意していないではないか、
と指摘しています。
GMは、約620億ドルの負債のうち無担保債務275億ドルの3分の2の、
180億ドルを自己資本に転換するように社債保有者との交渉を進めてきました。
しかし債権者側は、3月末までに株に転換することを合意してくれませんでした。
ですから猶予期間の60日以内に、何とかしてもらわないと、
チャプターイレブンの適用となってしまいます。

結局、チャプターイレブンの手続きに入ってしまうと、
債権者の債権放棄や債務の株式化、それから、
労働組合の合意ということが、割と簡単にできてしまうのです。
労働組合や債権者としても、ここで合意しなかったら、
結局、法的手続きの中で、無理矢理合意させられることになります。
どのみちそうなってしまうのなら、もう合意しようという話もあるわけです。

現実的には破産法を適用した方がいいという考え方もあると思います。
実際に、大手航空会社は、労働組合が全く合意してくれなかったために、
チャプターイレブンを適用しました。
しかしその時に、客が飛行機に乗らなくなったかというと、
そんなことは全くありませんでした。航空会社のカウンターに押しかけて、
お金を払い戻せ、といったことには全くならなかったのです。
ですから、今回、チャプターイレブンを申請・適用しても、
GMが自動車を作らなくなることはないでしょう。
GMを破綻させるのかというと、恐らくそういうことではなくて、
再建手続きを早くするということなので、それも一つ選択肢ではあると思います。

実際、この3月末にワゴナー会長がクビになり、
代わりにヘンダーソン氏が会長になりました。
ヘンダーソン会長は、チャプターイレブンの可能性もあると言っています。
このように適用の可能性が、かなり出てきたような印象も受けます。


■世界の自動車業界
アメリカでの新車販売台数は、これまでずっとナンバーワンでした。
しかしこの1月に、遂に中国がアメリカを追い抜きました。
そして今年1月から3月まで、ずっと中国が世界のトップを維持している、
という状況になっています。
3月の中国の新車販売台数は、約111万台でした。
アメリカが86万台位なので、一月に25万台ほど、
中国がアメリカを上回っている状況です。
中国がアメリカを抜いて、その差はどんどん拡大しつつあります。

日本では、4月から、環境対応車に対して補助が出る制度が始まりました。
しかし全体の販売環境が悪い中で、効果のほどは分かりません。
環境対応車を有するトヨタ、ホンダに対して、三菱自動車や日産は結構、
苦しい状況だと思います。


■GMとクライスラーの状況
GMの2008年、昨年度の決算が、308億ドルの赤字となりました。
この内3兆円ほどは、営業上の赤字でした。
そして債務超過が、861億ドル、8~9兆円ほど負債が、
資産を上回っているという状況です。
今年の2月に去年に比べると、自動車販売が5割ほども減少したようなので、
何とかしないとかなり厳しいという状況です。

クライスラーも、かなり苦しい状況です。
GMとクライスラーは、政府の支援を受けています。
クライスラーは昨年から受けている支援では足りなくて、
もっと資金をお願いしますと言っていました。
そこに助けに現れたのがイタリアのフィアットです。
しかしフィアットが本当に大丈夫なのかというのは、また別問題です。
フィアットのS&P長期格付けは、BB+(ダブルビープラス)です。
実はこれ、ジャンク債扱いです。
ですからフィアットを信じていいのか、というのがそもそも問題です。
フィアットの今年の売上は、ヨーロッパで2割ほど販売が減っている、
という状況です。
フィアットに任せるのはいいのですが、フィアットは、
タダ同然でクライスラーの株を貰おうという話をしたりして、
余裕があるわけではありません。
ですから任せたフィアットは大丈夫なのかは怪しいところがあります。


■アメリカ政府の今後の動き
基本的に、クライスラーはともかく、GMは何としてでも助けたい、
というのが民主党の思いです。
しかし、共和党や国民がそれを許すかということが問題です。
GMや自動車業界にどんどんお金をつぎ込んで、全然、再生しない、
ということになれば、一体誰のお金を使って再建しようとしているのだ、
と怒られてしまいます。
そして、もう60日の期限を切ったわけです。
60日の期限以内に何とかできないのなら、最悪はチャプターイレブンを、
適用するということです。
政府内でも、チャプターイレブンを適用すると、どうなるのか、
ということを真剣に検討し始めたという状況です。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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