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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > オバマのリーダーシップとAIG問題(経営学/久原 正治)

オバマのリーダーシップとAIG問題(経営学/久原 正治)

09/04/08

■オバマ政権の躓き

オバマ政権がスタートして2ヶ月経ちましたが、
その運営は思うように進んでおらず、
問題は2つあると思っています。
1つは、自分のメンバーで、上級官僚ポストを
全部、埋めることができなかったことです。
つまり、今回官僚を選ぶのに、
議会のチェックが入り過ぎて、辞退した人もいて、
まだ、主要ポストの全員を選びきれていません。
そして、そのようなところに、金融再生案が、
必ずしもはっきりしたものでなかったという2つ目の問題点で、
オバマ政権は躓いてしまったように思います。
いずれも議会が、何とかここでオバマの足を
引っ張ることで、共和党中心に、一般大衆の
支持を得ようという動きが出てきています。

共和党は、大統領選で敗れたマケイン氏を中心に、
強い口調で、オバマ氏らを攻めている場面も見られます。
本来、この金融危機は、共和党、ブッシュ大統領が
引き起こした問題でもあるのですが、
その問題を全部、オバマとガイトナー財務長官に、
あるいは、バーナンキFRB議長(以前から継続)に任せており、
ガイトナーは、かなり攻められて、
夜も眠れない位になってしまっているようです。

3月24日に、オバマは、記者会見を行いました。
彼が大統領選挙で、国民と対話をしてきた原点に返って、
じっくり国民に話し聞かせるというリーダーシップを発揮し、
特に、不良債権の処理案を、ブレがないように
実行していくことが、今、非常に大切です。


■AIGへの公的支援

AIGは保険会社で、銀行でもないのに、
なぜ、不良債権処理、金融再生の足を
引っ張ったかといいますと、
クレジット・デフォルト・スワップ (Credit default swap)の問題です。
様々な企業や政府機関の信用を、
保険でかけていたからです。
つまり、銀行や金融機関が、色々なところに
融資をしたら、それに保険をかけていたのです。

このクレジット・デフォルト・スワップは、
実質的に保険でしたが、
マーケットでは、トレードすればリスクが管理でき、
それで非常に儲かるとして、保険というよりは、
一種のデリバティブとして取り引きされていました。
ところが、一挙にマーケットが崩壊して、
実際に信用リスクが表面化してしまった後で、
蓋を開けてみると、このクレジット・デフォルト・スワップの
買い手の最大の会社がAIGだったのです。

例えば、シティバンク、バンク・オブ・アメリカ、
ゴールドマン・サックスも、皆、自分のところの
信用リスクを、AIGに保険をかけてもらっていました。
AIGの幹部は、そんなことは知らずに、
トレードで行っているので、うまくいくだろうと思って、
蓋を開けたら、全部、自分にリスクが来ていて、
それに見合う資本が無いという状態でした。
従って、AIGが崩壊してしまうと、他の金融機関が、
皆、保険がなくなり、今の不良債権問題が
更にひどくなるので、金融システムの崩壊を防ぐために、
アメリカはAIGの公的支援を行わざるを得なくなりました。
AIGが1兆7千億円の公的資金をうけている中で、
3月13日に、AIGの幹部のボーナスが、
約160億円も払われていたことが分かり、
共和党の議員たちは、ここぞとばかりに、
オバマとガイトナーを責め始めました。


■AIGのボーナス問題

アメリカのニュースを見ていて、
面白いことだと思ったのですが、
このボーナスは、AIGに損をかけた人達にボーナスを
払っているわけではなく、AIGを再建しようという人達に
払われているボーナスなのです。
AIGを再建しようとして、
例えば、売却できる部門は売却しようとしています。
その部門の責任者は、自分の部門が売れたら、
自分の職がなくなるわけですので、
その分をボーナスでも、もらわないと、
しっかり売ることはできません。
そのような人たちと契約してたいたことは、
非常に大事な事でした。
ところが、世の中、政治というのはおそろしいもので、
そのような背景は見ずに、
あたかもAIGという膨大な損失を受けた中で、
欲張りな人が、そこでボーナスを持って逃げた
という話を作ってしまったがために、
話がややこしくなってしまいました。

この流れでは、他の金融機関も、
皆、ここで、下手に政府の仕組みに乗り、
後からそこで利益が出ても、全部、給料まで返せ、
と言われてしまいかねません。
例えば、再建中の米国企業では、CEOの報酬も、
1ドルで、CEOをすることが、一般化してしまいます。
1ドルというのは、年収1ドルでCEOをすることですから、
100円でCEOをするということなのです。
このように、大変なことになってきているわけです。


■バナナ・リパブリック

問題を分けて考えなくてはいけません。
確かに強欲な人もいるのですが、
他方で、企業の経営を改善するために、
一生懸命な人にまで、「お前も強欲だ。」と言うことで、
何も出来なくなり、誰もリスクをとらなくなります。
トーマス・フリードマンという、
「ワールド・イズ・フラット(The World is flat.)」という本を
ニューヨークタイムズから出版した、有名なコラムニストが
「アメリカは、今や、バナナ・リパブリックになった。」と言っています。

バナナ・リパブリック(Banana Republic)というのは、
中南米の、仕事もしないで、政争に明け暮れている国のことです。
「アメリカは、議会で、皆、アメリカの将来を
どうするかについては、あまり考えずに、
何とかオバマの支持率を下げて、大衆の支持を得よう
というようなバナナ・リパブリックになってしまった。」
とフリードマンは3月20日のニューヨークタイムズの記事で言っています。

このままでは、先程から言っているように、
まず、誰も政府のために働かなくなる恐れがあります。
それから、銀行が、例え、貸し渋りになっても、
公的な支援をいらないという恐れがあります。
更に、広く見れば、民間部門が、
政府に協力したがらなくなる恐れもあります。
そこで、オバマは、もう一度、自分のリーダーシップを
しっかり足元から見直し、大統領選の原点に帰り、
リーダーシップを発揮する必要があるのではないかと思います。


■投資銀行の問題点

ここで、今回の金融危機の原因になった
投資銀行の問題点をまとめてみましょう。

投資銀行は、資金を調達する人に、
代理人として、アドバイズを行うことが、
本来の業務でしたが、最近では、自ら投資をして
儲けるほうに重点を置きすぎてしまいました。
そのため、過大な借入金を入れてしまい、
バランスシートを膨らましてしまいました。
もう1つの問題点は、株式会社化したことで、
その悪い面が出てしまったことです。
従来、投資銀行は、パートナーシップ制で経営を行い
、リスクをパートナー間でシェアしており、
無茶苦茶なリスクはありませんでした。
しかし、組織的に、規模を大きくするために、
株式会社化したことで、損をしても、株主、
あるいは、資金を貸している銀行が損をすれば良くて、
自分たちは損に責任を取らず、ボーナスだけをもらう
というような、株式会社組織の歪んだ、
形の悪い面が表に出てきてしまいました。
この2つが、投資銀行の問題だったのです。


■アメリカの底力

アメリカは、今まで、常に危機に瀕すると、
大きく変わるという底力がありました。
金融についても、常に、行き過ぎて、
それが戻って、また良くなって、
また行き過ぎてというサイクルが、
日本と比べると、アメリカは、早い国なのです。
従って、ずっとこのままが続くということはなく、
特に、日本が10年も低迷したようなことは、
アメリカではないのではないかと思います。
必ずサイクルが、今度は上向きで、どこかで来る
ということが一般に言われています。

その時期は、誰も分からないわけですが、
1970年代から、私はアメリカと関わっていますが、
常に、どこかで、誰かがリスクをとることで、
わっと出てきて、あっと言う間に景気が良くなる
という経験をアメリカはしています。

果たして、これから、オバマはどのように、
本来のリーダーシップを発揮するのでしょうか。
オバマは、前に申し上げたように、
世界の国のことをよく理解し、異質の人から
非常に受け入れやすい特質を持った、
良い大統領として出てきているので、
それが今後どうなるかというところが気になるところです。

分野: 久原正治教授 |スピーカー:

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