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QT PROモーニングビジネススクール > 過去の記事一覧 > 継続する金融危機(財務戦略/村藤 功)

継続する金融危機(財務戦略/村藤 功)

09/03/27

■世界の金融市場
今回は、継続する金融危機というテーマでお話させていただきます。
まずは、改めて世界の市場がどれほど下がっているかということです。
世界には様々な市場がありますが、株式市場ということになると、
2007年の秋がピークで6千兆円ほどだったものが、
去年の年末までに3千兆円ほどに下がり、
それからまたさらに4~5百兆円減少したという状況です。
これが金融だけならまだしも、製造業という実業に、
影響が及んで困ったことになっています。
皆さんは世界の自動車工場は稼働率という意味で、
どれくらい稼動していればいいと思いますか。
通常ですと、8~9割は稼動して欲しいという想定で、
工場を作るのです。
ところが、新興国、BRICsの需要が増すと予想して、
工場を沢山作ったところ、世界同時不況が突然起こってしまいました。
ですから、稼働率が通常の8~9割から、6~7割ほどに、
下落してしまいました。
このままでは工場を閉めないと、立ち行かなくなってしまうかもしれません。
回復までには2~3年かかるだろう、ということが見えてきた状況ですね。

これらの危機は株式市場だけのもではありません。
まず、皆が慌てて売ったために株が下落し、
それから金融機関の健全性を誰も信用しなくなってしまったので、
金融市場にお金がなくなってしまいました。
そこで金融市場にお金を投入し始めたのですが、
対応空しく、影響が実業にまできているというわけです。


■世界各国の対策
実は世界全体で見ると、金融機関全体に対して、
既に100兆円ほどの自己資本を注入しました。
しかし、みずほ証券の推計によれば、100兆円では足りず、
最終的には200兆円ほど自己資本を注入する必要があるとされています。
日本ではバブル崩壊の時に、10年位かけて、
100兆円ほど不良債権を処理した過去があります。
世界全体でその程度の額の自己資本を注入したわけですが、
それでも全然足りないというわけです。

イギリスでは、保証制度という面白い仕組みを作りました。
経営が危ない金融機関の不良資産から発生する損失が、
250億ポンド(約3兆円)を越えたら、損失の9割は、
政府が負担するという制度です。
最初に最も大きいロイヤルバンク オブ スコットランド
(The Royal Bank of Scotland)という銀行に適用して、
さらに政府が優先株を買ってあげました。
また、保証制度を適用して少し助けてあげたということで、
購入した優先株を普通株に転換しました。
この結果、ロイヤルバンク オブ スコットランドという、
最大手の銀行の支配権が国に移行し、
国有化されることになりました。
そして、三番手のロイズ銀行というものがありますが、
これも政府の保証制度を適用して、優先株を普通株に転換して、
国有化してしまいました。
イギリスの金融機関の一番手と三番手を国有化したので、
残っている二番手の香港上海銀行とバークレイズが、
この先どうなるのだろうという状況です。

日本がバブル崩壊後に大変な状況になり、
回復に時間がかかったことを見習って、
もっと早く対応しなければならない、と各国は一生懸命対策を行っています。
アメリカが最初にそう言っていたのですが、イギリスもドイツもフランスも、
あわてて自己資本に2~3兆円注入するということを、
主要金融機関に行っています。


■アメリカの損失
ダウ平均は2007年のピークの頃に1万4千ドルを超えていました。
このころ株価総額は、20兆ドル、2千兆円ほどあったわけですが、
これが現在半分ほどになってしまい、
11兆ドル程度になってしまっています。
11兆ドルというと、大体日本のGDPの2年分です。
これが一気に吹き飛んでしまったという感じです。
日本ではバブルが崩壊した時に、土地バブルの崩壊と、
株バブルの崩壊の二つがありました。
日本の場合1990年と、92年の2回に渡って株式バブルが崩壊して、
株価総額が9百兆円から3百兆円に下落し、
6百兆円ほどが吹き飛びました。
今回はアメリカのニューヨークだけで、1千兆円ほど、
吹き飛んでいますので、日本のバブル崩壊を上回る規模です。


■アメリカの金融機関再建
リーマンブラザーズが潰れるほどの危機なので、
どこが潰れてもおかしくないということで、金融機関が、
他の金融機関にお金を出さなくなってしまいました。
これは困るということで、FRBが一生懸命、お金を注入して、
金利もどんどん下げて、日本と変わらないような、
ゼロ金利になってしまっています。

危機対策の法律もどんどん出てきています。
ブッシュ大統領の頃から様々な対策をしていましたが、
最近オバマ大統領に代わってから、更に新しい法律を、
どんどん成立させています。
そもそも当初、ブッシュ大統領の頃に、7千億ドルかけて、
金融安定化法を作り、アメリカの銀行の自己資本に、
お金をどんどん注入しようとしていました。
その際、7千億ドル、70兆円という膨大なお金が、
本当に必要なのかと言っていたのですが、
最近は全く足りないということになってきて、
金額を2倍程度にしたほうがいいのはという話が出てきました。
そうやって自己資本を注入しても、
不良資産が銀行のバランスシートに残っていると、
いつまでたってもダメなので、官民共同の投資ファンドを設立して、
1兆ドル、100兆円位の不良資産をそこから買おうという話が出ています。
しかし一体、誰が買うのか、そしていくらで買うのかという話で、
揉めてしまっていて、なかなか具体案にならないという状況です。

金融機関の再建の先行きは全く見えていません。
アメリカ経済が大変なことになったので、段々と内向きの、
保護主義になってきています。
例えば、景気対策法案でも、バイアメリカン条項という、
他国の製品ではなく、アメリカの製品を買いなさい、
というような話が出てきています。
これはWTOに反するのでは、と文句が出たのですが、
WTOのルールは何とか守ります、ということを言っています。
段々と何を信じていいのか話がよく分からなくなってきました。

金融機関の再建のために、既に金融安定化法で認められた金額の枠の、
半分ほどを自己資本の注入にあてたのですが、
このまま自己資本にお金をつぎ込み続けると、イギリスのように、
アメリカでも銀行を国有化するのかということが問題になってきています。
アメリカで主要銀行がどんどん国有化されていくようなことが、
起こっていいのかと、騒ぎになっている状況です。


■AIGとシティーの再建
AIGの2008年第4四半期の赤字は、商業用不動産ローンの損失やCDS、
クレジット・デフォルト・スワップ(credit default swap)という、
何が起こっているかよく分からないものをはじめとして、約600億ドルでした。
AIGは既に400億ドルの自己資本注入を含む合計1500億ドルの、
政府支援を得ていますが、アメリカ政府はAIGの要請を得て、
300億ドルの追加支援を行うことになっています。
最近、そのAIGの経営者や、デリバティブのトレーダーに、
大変な額のボーナスを払ったことで、再建のために、
国民の税金を使っているのに、巨額のボーナスを払うのか、
と皆怒っています。
しかし、デリバティブのトレーダーが、皆辞めてしまうと、
何をしたのか分からないままに、巨額の税金をつぎ込み続ける、
ということになるので、それはそれで、また少し困ってしまいます。
ですから、政府がやっているように、売れる資産は売りつつ、
出来るだけ経営を透明にして規模を縮小させていくしかない、
という状況です。
アメリカの政府としても、どうしていいかよく分からないけれども、
仕方がないから資本注入を続けているということです。
しかし、もっといいアイデアがあるのかというと、
簡単には思い付かないですね。

日本もアリコ等でAIGには関わりがあります。
しかし、アリコや香港のAIAという生命保険は、既にAIGではなく、
政府が買い取ってしまいました。
そして政府への保険事業譲渡で、その分、政府からAIGへの融資が、
400億ドル削減されることになりました。
AIGへの貸付けに代えて、アリコやAIAを、
政府が引き取ったという形になってきています。

それから、アメリカの企業では、シティグループの動向も気になります。
シティーはシティコープとシティーホールディングスを分けて、
シティーホールディングスを売却する再建策を発表しましたが、
再建策はあまり市場から評価されていません。
日本に関する話では、日興コーディアルと日興アセットが今後どうなるのか、
というのが一番気になります。
日興コーディアルと日興アセットは売却対象の、
シティーホールディングスに含まれています。
アメリカ政府は、既に買っていたシティーの優先株を普通株に転換し、
シティー株の36%を握ることになりました。
シンガポールのGICや、サウジのアルワリド王子も、
それぞれ10%、8%の株主になります。

継続する金融危機というテーマでお話しましたが、
回復にはまだ2、3年かかりそうです。

分野: 村藤功教授 |スピーカー:

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